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「朋ちゃんが欲しかったら、相続は放棄するんだな」
 その言葉に、竜也はためらわずうなずいた。
「朋さえ返してくれれば、社長の座は放棄する。遺産も、全て持って行くがいい」
「いい返事だ。麗しい愛情だねぇ」
 滑稽に肩をすくめると、勇生は部下に合図をした。
 手錠が外され、朋は竜也の元へと駆け寄った。
「竜也さん!」
 震える朋の体を抱きしめ、竜也は次の一手を考えていた。

 不敵に笑う、勇生。
「どうした? もう、お前たちは用済みだ」
 早く行けよ、と手を振っている。
(何か臭うな)
 竜也の心が、警報を鳴らしている。
 勇生が、このままで済ませるとは思えないのだ。
 緊張の糸を張り詰めたまま、竜也は朋を抱き寄せ、ドアに向かって歩き始めた。

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