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次第に瑞の眠りは深くなり、涼真に預ける体の重みが増してきた。
そんな彼からは、何か独特の良い匂いがする。
コロンなどの人工的な香りではない、ナチュラルな匂いだ。
「いや、これは。匂いじゃないな」
涼真は、考えた。
脳を始め、体の器官に直接働きかけてくるような。
何だか、かっかと熱くなってくるような、そんな気配だ。
(発情抑制剤は、毎日飲んでる、って。白河くんは言ってたけど)
オメガのフェロモンには、充分気を付けているつもりの涼真だ。
しかし瑞には、それをも上回る魅力があった。
「あぁ。俺もアルファじゃなくって、オメガに生まれて来ればよかったのかな」
そうすれば、白河くんと痛みを分かち合える。
悩み相談でも、もっと気の利いたことが言えるだろうに。
瑞の悩みは、その半数以上が、オメガとして不当な扱いを受けた、というものだったのだ。
優秀な瑞は、愚痴るというより報告のような口調で、涼真に相談した。
『明日の会議のレジュメ作成を、オメガだから仕事無くてヒマだろ、って頼まれました』
誰が頼んだ、とは言わない。
ちょっぴり口を尖らせて喋り、そして笑う。
『ちゃんと引き受けて、間に合わせましたよ。偉いでしょ』
かける言葉が、見当たらない。
だから涼真は、そんな瑞の肩を引き寄せ、ぽんぽんと叩いた。
頭に手を置き、くしゃくしゃと髪をなぶった。
そんな彼からは、何か独特の良い匂いがする。
コロンなどの人工的な香りではない、ナチュラルな匂いだ。
「いや、これは。匂いじゃないな」
涼真は、考えた。
脳を始め、体の器官に直接働きかけてくるような。
何だか、かっかと熱くなってくるような、そんな気配だ。
(発情抑制剤は、毎日飲んでる、って。白河くんは言ってたけど)
オメガのフェロモンには、充分気を付けているつもりの涼真だ。
しかし瑞には、それをも上回る魅力があった。
「あぁ。俺もアルファじゃなくって、オメガに生まれて来ればよかったのかな」
そうすれば、白河くんと痛みを分かち合える。
悩み相談でも、もっと気の利いたことが言えるだろうに。
瑞の悩みは、その半数以上が、オメガとして不当な扱いを受けた、というものだったのだ。
優秀な瑞は、愚痴るというより報告のような口調で、涼真に相談した。
『明日の会議のレジュメ作成を、オメガだから仕事無くてヒマだろ、って頼まれました』
誰が頼んだ、とは言わない。
ちょっぴり口を尖らせて喋り、そして笑う。
『ちゃんと引き受けて、間に合わせましたよ。偉いでしょ』
かける言葉が、見当たらない。
だから涼真は、そんな瑞の肩を引き寄せ、ぽんぽんと叩いた。
頭に手を置き、くしゃくしゃと髪をなぶった。
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