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しおりを挟む「よかったら、今夜は泊っていきませんか? 僕、一人暮らしなので気兼ねはいりませんよ」
「いいの?」
それは助かる、と男は乗って来た。
なにせ、服が血だらけなのだ。
このままでは、どこに行っても不審者だ。
未悠は、良かった、と笑顔を返した。
「僕、小咲 未悠といいます」
「私は、名無しの権兵衛」
「え?」
「いや、私の名前なんて、知らないほうがいい」
男は、頭を掻いた。
「きっと君を、危険に巻き込むことになる。トラブルメーカーなんだ、私は」
そんな言葉に怯みもせず、未悠は笑顔だ。
「ご心配なく。かかる火の粉は、自分で払います」
今度は男がぽかんとした後、愉快に笑った。
「いや、失礼。じゃあ、名乗ろうか。私は、城嶋 健(きじま けん)だ」
第二性は、アルファ。
健は、そう付け加えたが、未悠には言われなくても解っていた。
これだけ体格に恵まれた人間は、まずアルファと見て間違いない。
「僕の第二性は、ベータです」
未悠の言葉を、健は信じなかった。
小柄で、華奢で、肌が白い。
髪も瞳も、色素が薄い。
そんなオメガの特性を、健は知っている。
ただそれを取り上げて正すことは、しなかった。
(オメガであることを隠すには、それだけの理由があるんだろう)
そう未悠を思いやり、黙っていた。
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