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しおりを挟む「数か月前に、行方不明になった生徒がいなかった?」
「確か、一年生の男子が」
彼はいじめ被害に遭っており、そのことが原因で失踪した、とされていた。
だがしかし。
「彼は、ある組織に目を付けられてさらわれた。そう、私は見てる」
その子は、見た目が愛らしい少年だったはず。
「多分、もうこの国にはいない。海外のセレブに、ペットとして売られたんだ」
「そんな!」
「彼のようなケースは、稀だよ。多くは、臓器移植の提供者としてさらわれるからね」
「う……」
顔色の悪い未悠に、健は声をかけた。
「育ちのいい子にする話じゃなかったな。ごめん」
「いいえ。あの、僕にもお手伝いできること、ありませんか?」
「何だって」
「そんな悪い人たち、放っておけません。犠牲者をこれ以上出さないためにも」
未悠の正義感は、勇ましい。
しかし、世間知らずすぎる。
「私の仲間になると、真っ先にさらわれて売られるぞ」
いや、最悪殺されるかも。
それを、健は恐れた。
しかし、未悠は引き下がらなかった。
「僕、今のままじゃ、生きながら死んでるみたいなんです。お願いします、仲間にしてください」
仲間、という言葉に、未悠は強く惹かれた。
独りぼっちの僕に、仲間ができる。
それは、何より輝く言葉だった。
「じゃあ……。とりあえず、マンションを貸してくれるかな?」
拠点になる根城が欲しい、と健は未悠に願い出た。
「一緒に、暮らすんですね!?」
「ああ。それでいいかな」
「はい!」
粉雪の降る未悠の心には、健という陽が射し始めた。
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