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「寝酒を買うのを、忘れたなぁ」
「料理酒なら、ありますけど」
 和食を作る時のために置いてある料理酒を、未悠はキッチンから出してきた。
「すごいな。料理酒まで置いてあるなんて、本格的だ」
「僕、お料理好きなんです」
 アルコール度数が15%ある料理酒だが、残念ながら飲料には向かない。
 それでも今夜は、少しだけ酔いたい健だった。
「こいつをいただくか。いや、待てよ」
 これよりもっと酔える方法を、私は知っている。
「未悠、髪は乾いた?」
「はい、もう少しです」
「先に、寝室に行くから」
 未悠が振り返った時、健の背中は寝室へと向かっていた。
 テーブルの上には、料理酒の瓶が。
「健さん、飲まなかったのかな?」
 髪は生乾きだが、未悠は瓶を片手に彼の後を急いで追った。
「忘れものですよ、はい」
「寝室まで持ってきてくれたのか」
 せっかくだから、一口だけ。
 そう言って、健は酒を口に含んだ。

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