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 バスタブの中で、二人はうっとりと時を過ごした。
 互いに、本性を隠さなくても構わない開放感に、浸った。
「そろそろ出ないと。のぼせそうだ」
「じゃあ、100まで数えましょう」
 そんな甘いやり取りも、心地よい。
 健は、久々のぬくもりに照れていた。
 未悠は、初めてのときめきに目覚めていた。
 バスタオルで体を拭く時は、ヒトに戻った二人だ。
 さすがに全身毛に覆われていては、タオルがいくらあっても足りない。
「健さん、背中拭いてあげます」
「ん? ありがとう」
 にこにこと、ご機嫌な未悠だ。
 その胸は、嬉しさに膨らんでいた。
(今日からこうやって、健さんと暮らせるんだ!)
 確かに、別れの来る時を思えば影が落ちる。
 それでも、あまりある希望と期待が、未悠の心に輝きをもたらしていた。

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