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「あの石川さん相手に、よくはしゃいでたな」
「だって石川さん、すっごい悪い人なんだもん。びっくりしちゃった」
「じゃあ、彼と寝たら? 俺より、効果あるんじゃないか?」
「それは、ヤだ」
 シャワーでソープの泡を流しながら、七瀬はふるりと震えた。
 湯で濡れた栗色の尾が、縮みあがっている。
「石川さんは、悪い人だけど怖いもん」
「俺は、怖くないのか」
「丈士さんは、悪いけど優しいから」

 ふん、と丈士は鼻を鳴らした。
 悪は悪だ。
 石川さんも俺も、同じ穴のムジナだ。
 それを、怖い優しいで区別するなんて、おかしな話だ。

「俺のどこが優しいんだよ。石川さんのシノギを、手伝ってるんだぜ?」
「僕の奢りを飲んでくれたし、エッチしてくれたし。あと、この家に住まわせてくれてるし」
「俺も、とんだお人好しだったわけだ」
 ざぶりと丈士はバスタブに浸かった。
 すぐに、七瀬も入ってきた。

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