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1話 再生

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 薄明るい照明の下、丈士はオンザロックのウイスキーを飲み干した。
 軽やかなジャズのピアノが流れる中、グラスの中を見つめる。
 考えるのは、このグラスに残った氷を口に含むかどうか、などではない。
 ただ一心に、七瀬のことだった。

 あれから、丈士の身辺は激変した。
 まず、石川が消えた。
 他所へ移った、という意味ではなく、この世からいなくなったのだ。
 スマホに登録していた、彼のアドレス。
 財布に入れておいた、彼の名刺。
 彼から預かっていた、ハーブの種子。
 全て、忽然と無くなってしまった。
 石川の痕跡は、もうどこにもなかった。
(あの人がいなければ、俺がハーブを作ることも無かった。だから、彼は消えたんだ)
 そう、丈士は考えた。

 次に、三嶋。
 彼は今、同じゼミの小森と付き合っている。
 いつから付き合ってるのかと訊けば、2ヶ月前からだ、との答えが返ってきた。
 丈士と三嶋がセフレの関係を持ったのも、ちょうどその頃からだ。
 彼との履歴も、書き換えられている。
(三嶋が俺と付き合っていなければ、七瀬は毒を盛られることも無かった。だから、これでいいんだ)
 そう、丈士は考えた。

 これで、いいんだ。
 だが、心にぽっかり空いた穴は、塞ぎようが無かった。

 
 
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