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しおりを挟む「マスター。おかわり」
「相良さん、そろそろおやめになった方が」
丈士は、赤く濁った目をしていた。
心配そうな顔で覗き込むのは、恐ろしい異形の悪魔・マノスではなく、いつもの穏やかなマスターだ。
その正体の尻尾も出さずに、澄ましてバーを続けている。
彼の本性を知りながら、バーへ通い続ける丈士の拠り所はただ一つ。
(ここに来れば、また七瀬に会えるかもしれない)
七瀬に会いたい一心で、丈士は毎日バーへ足を運んでいた。
「相良さん、そんなに七瀬に会いたいですか?」
突然に核心を突いて来たマスターの言葉に、丈士は首を跳ね上げた。
「いるのか? 七瀬が!?」
マスターの見る方へ目を向けると、小柄な少年がうつむき加減に座っていた。
「な、七瀬?」
かすれた声の丈士に、マスターは釘を刺した。
「お忘れなく。七瀬は、もうあなたのことを覚えてはいません」
そうだった。
七瀬を生き返らせる条件が、それだった。
一度下を向きかけた丈士だったが、途中で踏みとどまり、ゆっくりと顔を上げた。
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