異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ

文字の大きさ
31 / 85
第2章  新しい生活

9話

しおりを挟む
「ココロー、おわったよー」

ブラッシングを終えて外へ出ると、ルトとグリが報告にやってきた。

「ありがとう、ふたりとも」

お礼が嬉しいのか、キャッキャと笑いながら他の妖精の中へ交じる。
確認すると、しっかり耕してあり、土もフワフワと柔らかい。これなら芽も出やすいだろう。
草木灰だけでは栄養が足りないかもと追加の肥料も買ってきてあるが、何やらルトが「すごいすごい!」と盛り上がっているので、このままで充分だと判断する。失敗したときはその時だと思うが、あまりそうならないと言う確信がココロにはあった。

じゃあ次はと移動しようとする前に、足を止める。
妖精たちは全員、自分にできる事はないかと待ち構えている状態だ。可愛いのだが…申し訳ないが、この後お願いするとしたらルトを筆頭に、スイとグリ。あとはフウだろうか。
その間待っていてもらうのも申し訳ないので、お使いをお願いする事にした。

「昨日の果実畑に行って、実ってる果物あったら取ってきてもらってもいい?大きいのは無理せず協力してね」
「はーい!」
「わかったー!」
「いってきまーす!」

ココロのお願いを聞いて、意気揚々と飛び去っていく妖精達。
何を言ったわけではないが、この後作業に必要になる妖精達は残っている。

「じゃあ、こっちも始めようか」
「はーい」
「なんでもいってー」

なんとも頼もしい上に可愛らしい返事に小さく笑みを零しながら、妖精達を連れて行く。
グラウンド2つ分の大体真ん中の位置へ立ち、完成風景を思い浮かべる。

ココロが立っている位置から、まだ草地のままの状態の場所へ向かってあぜを作る。四角く囲うように、草地の真横にも同じく。そして中央部分にも境界線を入れるように、けれど両端を少し空けた状態で畦を作った。
土は畦で囲った内側から持ってきたので、周りに比べると少し深くなっている。

「このなかにいれていいの?」
「お願いね。ただ、溢れさせないように、この辺りまで」

スイに、どれぐらい水を入れてほしいのか手で指し示す。
微調整を入れながら丁度いい水位になるのを確認する。

「うん、これぐらいでいいかな。じゃあ、水と土をかき混ぜて」
「「はーい」」

今作っているのは田んぼだ。この広さは畑だけにすると勿体ない。
とは言え、『田んぼ』を作るのは初めてだからこれで合ってるかは分からない。おまけに、田植え時期がもう過ぎていることは昨日の行き帰りで理解していた。
けれど、昨日の果実畑を見るに、この土地の中は気候季節問わずなのが見て取れた。
みどりさんの能力か何かは当然知る由もないが、それが影響しているのは分かる。
稲の苗は買ってきていないが、精米前の、籾つきのお米が売っていたので、それから作ることは可能だった。

「よし、じゃあしばらく掛かりそうだから、グリには畝を作ってもらおうかな」
「わかったー!」

広いのを一人では大変かもしれないと思ったが、グリは疲れを見せずどんどん畝を作っていく。
それを見ながら、マルチシートを引くかどうか考える。念の為買ってきてはいるが、絶対に引かないと駄目というものでもない。
マルチシートでできる事は、妖精達の力を借りれば代用は可能だろう。
今回は様子を見るために使わずに、必要な野菜があれば次回から使うことにする。

「よし!じゃあ久しぶりの種蒔きを…」

何から埋めようかと、タブレットを取り出す。
種や苗が入っている所を表示し、外へ出そうと操作すると、ウインドウが浮かび上がった。

『自動で種の採取、苗作りを行いますか?』
「…うん?」

一体どういう事だろうか。いや、意味は勿論分かる。種が出来たら自動で採取して、次に蒔くときに使える。そして苗から育てる必要がある物はそこから。…うん、一体誰がそれを?
その疑問に加えて既視感。一瞬なんだっけ?と思ったけれど、昨日の馬車の事だとすぐに思い出す。

「あーあれかぁ。詳しい正体の分からない謎のチートっぽいの。そう言えば、昨日もこんなウインドウだったっけ」

それならもう、ね?望んだわけじゃ無いけれど、貰ったものを使わない術は無い。と言う事で、ポチッと『はい』を選択。
さぁ次は何が起こるんだと身構えたら、新しいウインドウに切り替わっただけで拍子抜けした。

「おおぅ、そのパターンは想像出来なかった…えーっと、何々?」
『自動で採取、苗作りをする種を選択してください』
「そしてまさかの選択式って」

もうそこは全部でいいんだけど、と思いつつ、一緒に表示されたリストを確認する。
けれどそこには、昨日買ってきた種や苗以外にも、豊富な野菜が表示されていた。中には聞いたことの無い物もあった。
けれど、選べるのは持っている種だけ。『キャベツ』を選択すれば、キャベツの苗が買った分現れて、土へ植えられていく。

一つの畝の1/3ほどがキャベツの苗で埋まったかと思うと、残った畝の一部が失くなった。5cm位?そんなに大きくない。
ウインドウに変化が現れる。

『こちらはキャベツ畑になりました。植える野菜を変更する際は…』

少し長かったがいずれ必要な時があるかもしれないと、頭の中で要約しながら読み進める。ふむ、自動栽培を停めても、その時点で栽培途中の野菜は収穫まで待つ必要があるのと、自動栽培停止する時、種を残す選択をしないといけないと言う事ぐらいだろうか、覚えておく必要がありそうなのは。
以後表示しない、のチェックボックス(よく見るヤツ)にチェック入れ、表示を閉じる。

「よし、この調子なら無理なく色々作れそう。チートは望んでないって言葉、取り消そう。これは有り難すぎる」

直接は言えないが、思えば届くかな?地球の女神様か、この世界の意思様(?でいいのか不明だが)に感謝の念を送る。

「じゃあ、買ってきたの全部植えていこう!」
「おー!」

いつの間にか作業を終えていた妖精達(全員)が、掛け声を返してくれた。小さな拳を突き上げて(ココロのマネ)いるのを微笑ましく思いながら、次は何を植えようかとウインドウへ目を落とした。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

最強スライムはぺットであって従魔ではない。ご主人様に仇なす奴は万死に値する。

棚から現ナマ
ファンタジー
スーはペットとして飼われているレベル2のスライムだ。この世界のスライムはレベル2までしか存在しない。それなのにスーは偶然にもワイバーンを食べてレベルアップをしてしまう。スーはこの世界で唯一のレベル2を超えた存在となり、スライムではあり得ない能力を身に付けてしまう。体力や攻撃力は勿論、知能も高くなった。だから自我やプライドも出てきたのだが、自分がペットだということを嫌がるどころか誇りとしている。なんならご主人様LOVEが加速してしまった。そんなスーを飼っているティナは、ひょんなことから王立魔法学園に入学することになってしまう。『違いますっ。私は学園に入学するために来たんじゃありません。下働きとして働くために来たんです!』『はぁ? 俺が従魔だってぇ、馬鹿にするなっ! 俺はご主人様に愛されているペットなんだっ。そこいらの野良と一緒にするんじゃねぇ!』最高レベルのテイマーだと勘違いされてしまうティナと、自分の持てる全ての能力をもって、大好きなご主人様のために頑張る最強スライムスーの物語。他サイトにも投稿しています。

莫大な遺産を相続したら異世界でスローライフを楽しむ

翔千
ファンタジー
小鳥遊 紅音は働く28歳OL 十八歳の時に両親を事故で亡くし、引き取り手がなく天涯孤独に。 高校卒業後就職し、仕事に明け暮れる日々。 そんなある日、1人の弁護士が紅音の元を訪ねて来た。 要件は、紅音の母方の曾祖叔父が亡くなったと言うものだった。 曾祖叔父は若い頃に単身外国で会社を立ち上げ生涯独身を貫いき、血縁者が紅音だけだと知り、曾祖叔父の遺産を一部を紅音に譲ると遺言を遺した。 その額なんと、50億円。 あまりの巨額に驚くがなんとか手続きを終える事が出来たが、巨額な遺産の事を何処からか聞きつけ、金の無心に来る輩が次々に紅音の元を訪れ、疲弊した紅音は、誰も知らない土地で一人暮らしをすると決意。 だが、引っ越しを決めた直後、突然、異世界に召喚されてしまった。 だが、持っていた遺産はそのまま異世界でも使えたので、遺産を使って、スローライフを楽しむことにしました。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

烈火物語

うなぎ太郎
ファンタジー
大陸を支配する超大国、シューネスラント王国。 その権力の下で、諸小国は日々抑圧されていた。 一方、王国に挑み、世界を変えんと立ち上がる新興騎馬民族国家、テラロディア諸部族連邦帝国。 激動の時代、二つの強国がついに、直接刃を交えんとしている。 だが、そんな歴史の渦中で―― 知られざる秘密の恋が、静かに、そして激しく繰り広げられていた。 戦争と恋愛。 一見無関係に思える、二つの壮大なテーマが今、交錯する! 戦いと愛に生きる人々の、熱き想いが燃え上がる、大長編ファンタジー小説! ※小説家になろうでも投稿しております。 https://ncode.syosetu.com/n7353kw/

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。

もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。 異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。 ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。 残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、 同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、 追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、 清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……

処理中です...