転職したら小人旅館のスイーツ班!?

ユーリ

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解散、そして決意

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「さてと。これからどうしよっかなー」

そう独りごちるのは、カレン・オーランド。冒険者ギルドの古参メンバーである。
数刻前、組んでいたパーティーが解散となったため、今後の事を考える必要があった。
冒険者ギルドに登録した時に、偶然近くにいたメンバーとの職業相性が良かったためその場で組んだパーティーだったが、それが大当たり。ダンジョン攻略もスムーズだった。
それが数刻前…


「え、解散?」

話し合いがしたいと招集をかけられて、共有スペースに5人全員が集まると、直ぐにその話題になった。
それなのに、誰一人として驚いた様子は無い。
その様子に、解散発言をしたリーダーのエドワード・リベイン(タンク役の騎士)は、カレンを見て少し驚いている。

「驚かないのか?カレン」
「え?だって…」

そう尋ねられ、他のメンバーを見回す。
5人掛けの丸テーブルに、エドワードを中心とすると右にはヒーラーのナギ・ハヤカワ、その隣にはカレン(ちなみにアサシネイト)が、そしてエドワードを左隣にはアーチャーのルル・ウィングルに、その隣にマジシャンのタクミ・タカシマがそれぞれ座っていた。
他の4人を、少し違和感を感じながら眺めてから

「だってそれぞれに結婚するんでしょ?」

そういうと、今度こそ全員が驚いた。というより慌てている
そんなに爆弾発言でもしたのかと、カレンは疑問に思った。

「え、待ってカレンちゃん、気づいてたの?」

少し経って最初に落ち着きを取り戻したナギが尋ねてくる。
気づいてたも何も、一時期その雰囲気しかたてていなかった時があったのだが、当事者達はお構い無しだったようだ。
カレンが父親に聞いた「恋は盲目」とはこう言う事を言うのだろう。

「うん。だって最初から仲良さそうだったしね」

と、本音は隠しつつそう答える。
それからすぐ、先程の違和感が何なのかが分かった

「じゃあさ、この並びはおかしくない?」
「?何かおかしいか?」

カレンの質問にエドワードが聞き返す
他の3人も分かっていないようだ

「最初に私が来てたのに、ナギとタクミ、両隣には来ないでしょ、普通」
「え?」
「え?」

普通隣通しに座るんじゃないかと、おかしな部分を指摘すると、全員が同じタイミングで同じ事を言うので、つい同じ事を返してしまった。
カレンの思考回路は停止…とはならず逆にフル回転し、すぐに結論に辿り着く。そして今度こそ、盛大に驚いた

「え!?組み合わせ逆だったの!?」

カレンはてっきり、エドワードとルル、タクミとナギがそれぞれカップルだと思っていたが、エドワードとナギ、タクミとルルがタクミ正しい組み合わせだったようだ

「どうしてそう言うことになってるんだよ」
「だって…」

タクミの呆れた声に、出会った頃のことを思い出すが、カレンが加入した時には既に4人揃っていて、どんな巡り合わせだったのかはあまり気にする事が無かった。単純に、同じタイミングでギルド登録して意気投合したのだと思っていた
そう言うとさらにタクミは呆れ、尚且つ嫌そうな顔をする

「しかもそれって、コイツとカップルだと思われてたって事だろ?うわ、カンベン…」
「あ、タクミひどい!こっちだって願い下げだよ!」

タクミとナギはどうやら兄弟の様だ。それも双子の。訳あってファミリーネームが違うのが、勘違いの要因だろう。
カレンを挟んで口論を始めた2人から抜け出して、エドワードとルルの元へ行く

「じゃあ、エドとルルは?まさか2人も兄弟とか言わないよね?」
「兄弟ではないわ。私達は幼なじみなの。エドの両親が忙しい人達でね、小さい頃エドは私の家で過ごす事が多かったの」
「そうだったんだ」

フフフと穏やかな笑みを浮かべながらルルがそう説明する
その間に、エドは口論中の2人の仲裁へ向かっていた

「そろそろ止めろ、2人とも!」

まるで猫の喧嘩のようになっていた2人の、言葉通り首根っこをそれぞれに掴んで引き離す。
この中で1番ガタイの良いエドワードからすれば、最年少の2人は猫そのものだ
ちなみに歳は、エドワードが1番上でその下にルル。少し離れてカレンで、タクミとナギになる
2人の喧嘩が止まった所で、話を元に戻すためにそれぞれ座り直した
空気を変えるように、エドワードが姿勢を正す

「結論から言うと、カレンの言う通りだ。俺はナギと、タクミはルルとそれぞれ一緒になる事を決めた。それに、俺達は大方ダンジョンは周り尽くしたから、そろそろ引退も考えていたんだ」

ダンジョン。各国に点在している地下迷宮の事だ。
地下迷宮は入り組んでいて、様々なモンスターが歩き回っている所だ。
そのモンスター達は地上に出てくることは無いが、モンスターもパーティーを組んでおり、1人で入るのは危険なため、パーティーを組んで入る必要がある。
倒すと粒子となって消え、硬貨や珍しい色々なアイテムを落とす。
どんな仕組みになっているのか分からないが、そのダンジョンにいる間は居なくなるのに、入り直すと同じモンスター達が変わらず歩き回っているため、目当てのアイテムが出るまで粘る事も出来る。

そんなダンジョンをカレン達は殆ど周り尽くしていた。
そもそも、冒険者になる者は、ダンジョンで手に入る特別な製作図レシピを手に入れることを主な目的に掲げている。
製作図には武器や防具のような装備から衣類、アイテム等、色んなジャンルがあり、さらにそのジャンル事にも色んな種類があったり、それに伴うスキルを身に付けたりすることが出来る。
そして目的の物が揃ったら冒険者を引退し、自身の店を持つ者が大半を占めている。冒険者を引退し店を持つことは「転職」と呼ばれている。
店を持ったものは他の冒険者に依頼クエストを出し、必要な素材を集めて作り、販売する。今までは依頼をされ購入する側だったのが、依頼を出し販売する側になる。

カレン達はそれぞれに入手した製作図をそれぞれ提示し、欲しいものがあれば交換、もしくは讓渡をしながら必要な物を揃えていった。
だから誰が何を目指していたのかは聞くまでもなかった。
エドワードによる解散宣言から紆余曲折ありつつ話し合った結果、誰一人として反対することなく、解散する事になった。
時々、カレンをチラチラと伺う視線もあったが…

「じゃあ、ギルドには俺から報告しておく。今まで、ありがとう」

エドワードがそう締めくくり頭を下げると、誰からともなく拍手がおこる

「こちらこそだよ!それにエドにナギ、タクミにルル、婚約おめでとう!」

そうカレンが発すると、拍手は次第に小さくなり、それぞれのパートナーと視線を合わせている
そんな4人を見て、少し羨ましく思うカレンだった…


そしてギルドに報告が入り、パーティーは正式に解散となった。
ギルドの脱退は各自で行わないといけないのだが、カレンはまだ躊躇していた。
4人の手前言えなかったが、カレンはダンジョン攻略自体が好きでやっていた。そのため、何か目的があった訳でもない。手持ちの中には、色んな種類の製作図があるが、正直宝の持ち腐れ状態だった。
だからと言って、他のパーティーに入るかと言う選択肢も無い。
新規のパーティーはレベル差がありすぎるし、中堅パーティーは連携が取れてきて他のメンバーをと言う考えはない。古参のパーティーはレベルは近い所もあるが、解散を視野に入れている所もあるだろう。

「さてと。これからどうしよっかなー」

ギルドを脱退して行った4人を見送った後、併設してるカフェにて、飲み物片手に独りごちる。
遠巻きにカレンを眺めているギルドメンバーが多い事に気づきながらも、話しかけてこないのであれば特に相手にするつもりがない。
飲み物も半分飲み終わった所で、近づいて来る足音に気がついた。
顔を上げると、よく見知った人物がそこにいた

「あ、リルさん」
「どうしたの?悩み事?」

そう言いつつ、向かいの席へ腰を下ろすリルは、現ギルドマスターの娘で、ギルドの受付嬢を務めていた。
カレンがギルドメンバーに登録した時はまだ冒険者をしていたが、今は引退して受付嬢をしながら母親のカフェを手伝っている人だ
当然、脱退を受理したのもリルなので、今回のことも知っている

「はい、これからどうしようかと思って」

そう言って、胸の内を打ち明けた。
同じ元冒険者のリルは真剣に聞いてくれる。最後まで話終えると、1拍置いてから優しく語り始めた。

「それなら、今はまだそのままでいいんじゃないかしら」
「え?」
「ギルドメンバーは、必ずパーティーを組まないと行けないわけじゃないのよ」
「そうなんですか?」

てっきり、ギルドにいる間はパーティーを組んでいないといけないと思っていた。だからこそ悩んでいたのだが、そうではないらしい。

「ええ。パーティーを組むのは、ダンジョンに潜る条件なの。だからメンバーの中には、パーティーは組まずに各国を旅してる人も多いのよ。今のカレンちゃんみたいに、目的がなかった人がほとんどね」
「そうなんですね」

旅をするだけのメンバー…
そう聞いて、カレンは色んな国に行っても、街にはあまり興味を持っていなかった事に気がついた。
買い物とかは他のメンバーに任せっきりで、宿から出るのは、ダンジョンへ行くか帰りの時のみだった。
そこで1つ、興味が湧いたので問いかけてみることにした

「ちなみに、リルさんはどうだったんですか?」
「私はこれよ」

そう言って指し示されたのはカレンの手元。
不思議に思いながら手元を見ると、そこには一対のカップとソーサーがあるだけだ

「これって、これですか?」

カップをソーサーごと軽く持ち上げながら、再度問いかける。
それに対して、リルは大きく頷いた

「そう。カップやソーサーに限らず、食器全般だけどね。ちなみにこのカフェのは全部力作よ」

と、自信たっぷりに話してくれる
このカフェはリルの母親が営んでいて、メニューも豊富だ
それぞれのメニューにあった食器は全て手作りだと言う。
縁には綺麗な模様もあり、一つ一つ違うので、同じものは1つとしてないそうだ

「だからまだ、何も目標がないのなら、色んな国の色んな街を見てくるといいわ。参考にもなるし、もしこれ!って言うのが見つかるかもしれないしね」
「そうですね。そうしてみます」

リル意見に賛成した所で、受付からリルを呼ぶ声が聞こえ、挨拶もそこそこに彼女は席を離れた。
残されたカレンは手元のカップの残りを飲み干すと、旅立ちの準備のためにカフェを後にした
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