転職したら小人旅館のスイーツ班!?

ユーリ

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不思議な人

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「あ、またあの人だ」

カレンが美味しい物巡り…もとい、やりたいこと探しの旅を始めて数週間
最初に向かった国とは、また別の国に来ていた。
全てのカフェを巡りたい所だったが、余りにも時間がかかり過ぎるため、ひとつの街につきせいぜい2、3軒回るだけに留めておいた。街を出る時は、テイクアウト可能なカフェに寄って来るのも忘れずに。
そしていくつかの街を回ったあと、今度は別の国へ来ていた。

あの、最初のカフェですれ違ったローブの人物。
男性か女性か未だに分からないが、その人には何度も遭遇している。
場所は決まってカフェ周辺だ。
最初のように入口の時もあれば、少し離れた位置ですれ違ったり、テイクアウトの出来る店に行くと既にいるか途中で入ってくるか。だいたいそのタイミング。
逆に同時に店内に留まるという事はなく、他の場所で見かけるということも全くないと、些か不思議なぐらいだ

今回もやはりカフェへ向かうと、丁度出てきた所だった

「……」

相手がこちらをどう認識しているのか分からないので、道を譲るために入口手前で立ち止まる。
そのまま通り過ぎていくその後ろ姿をチラリと見る。今日はフードを軽く被っていた

「あれ?」

少しの違和感に、小さくつぶやく。
正面からはまだ見たことないが、頭を含め体格は普通より少し細い印象。身長はエドワードと同じぐらいだろうか、そこそこある。
その1番上。頭部に、ぽっこりと何やら膨らみがある。
さらに言えば、モゾモゾと動いていて…

「あ…」

ハラリとフードがめくれたかと思うと、そこに居た”何か”と目が合う

「!?」

驚いて声を出せずにいるとさらに、その”何か”は、小さく手を振り微笑んだ

「!!?!??!」

咄嗟に手を口に当てて叫び声を押さえ込んだことを褒めてもらいたい。
真っ昼間とはいえ、そこそこに人が行き交う商店街。
大声を出せば単なる営業妨害。とりあえずカフェは諦めて来た道を戻った





「ダメじゃないか、勝手に出たら」
「だって、あの子気になったんだもの」
「あの子?」
「ほら、良くお店で会う子よ」
「??」
「全くこれだから。今度あったら教えてあげるわ。それに、”見えた”みたいだし」
「え!?それを先に言ってよ!」
「もう居ないわよ」

”彼ら”は歩きながら話している。小さな声で。
けれど、すれ違う人の目に映るのは、”彼”だけだった





「な、なんだったの、あれ…」

急ぎ足で宿泊先に戻ると、上がった息を整えながら頭をフル回転させる。
今までに見たことも聞いたことも無い小さな生き物だった
形は人そのもの、だったように思う。顔と手しか見えなかったから他の部分は分からない。
だがサイズが小さい。人の頭にチョコンと乗っていたあれは…

「可愛かった、かも…」

妖精の類では無いはず。彼らは人と共にあることを望まない。必要な時だけ姿を現し、用事が済むとすぐに姿を消す。
モンスター…でも無い。あの可愛さでモンスターなわけが無い。そもそも、あればダンジョンから出て来れない。
では一体、なんだっただろうか

「こ、これを機に話しかけてみようかな」

元々気になっていた人ではあった。
いつもすれ違うばかりで会話するタイミングはまるで無かった。
そう決意したカレンは、もう一度カフェへ行くために宿を後にした


翌日。
昨日とは別のカフェへ向かう。
今日は美味しいもの巡りは二の次。あの不思議な2人(?)連れに声をかけるのが目的だ。
カフェへ向かうのは、彼らがどこにいるか知らなず、唯一の接点がカフェであり、根拠は無いが必ず会えると確信していた。

「いた」

少し離れた所で立ち止まる
その人は、カフェの前にいた。いつもと同じ
けれど、いつもと違う。設置されたベンチに座っていた。
少し俯き気味に、まるで誰かを待っているかのような。
意を決して近づくと、こちらが声をかける前に、ゆっくりと顔を上げる
被っていたフードが外れる。昨日の”何か”も、そこにいた

「……」
「こんにちは!」

その人…正面からみても中性的な顔立ちだが、男性のようだ。
何も言わずにニコリと微笑むだけの彼と対照的に、頭の上の”何か”は元気よく挨拶をしてくれた

「こ、こんにちは…」

戸惑いながらも返事をする。
急な事で戸惑ったが、どうやら向こうもカレンを待っていたと見て間違いないようだった


話をしたいと、共にカフェへ入った。
店員に案内されて席は、他の席と少し離れており、小声で喋れば聞こえない距離だ。
対面式のテーブルにそれぞれ着き、注文を済ませる。そこでふと、小さな疑問が生まれた

(店員さん、気にならなかったのかな?)

彼の頭の上の何かには、一切触れてこなかった。
それどころか、見向きもしていなかったように思う

「気になる?」
「え?」

声をかけられて意識をそちらへ向ける。
頭から降りたそれは、チョコチョコと小さな足を動かしてこちらへ向かって来た。
かと思えば、テーブルに乗せていたカレンの手を、手のひらが上に向くように持ち上げようとしているので、それに従う。
するとそれは、チョコンと、カレンの手のひらに乗ってきた

(可愛い…)

思わずその手を顔の近くまで持ってくると、当然がだそれと目線が近づく
それを待っていたのか、ニッコリと笑顔を浮かべて喋り出した

「私はアリス。で、あっちはジョルジュ。私の下僕!」
「し、下僕!?」

思わず大声を上げそうになるが、周りに迷惑になるので慌てて声を落とす。反対の手で口元を抑える。
可愛い顔してすごい事を言う子だ

「アリス」

ひょいと、ジョルジュと紹介された彼が、アリスと名乗る子の首元を掴み連れ戻す

「何を言うんだい。ビックリしているだろう。僕が話すから、アリスは黙ってて」
「はーい…」

つまらなさそうな顔をしてテーブルに降ろされる。
タイミング良く、注文した物が届いた。フワフワに焼かれたパンケーキに、コーヒーが2つ。
店員さんが離れていったのを見計らって、パンケーキをアリスに差し出す。

「ほら、これでも食べておいで」
「わぁーい!」

すぐにパァっと笑顔になる
コロコロ表情が変わるさまは、見ていて飽きない。

「アリスが変なことを言ってしまって済まなかったね。改めて、僕はジョルジュ・チェイカー。で、こっちはアリス」
「あ、カレン・オーランドです」

改めて自己紹介されて、こちらがまだ言っていないことに気づき後に続く

「カレン、ね。…本当に、見えているんだね」
「?」
「アリスの事。普通の人には、見えないから」
「…この子は、何なんですか?」

存外に、普通じゃないと言われているのには気づかない振りをした。カレン自身も、薄々気が付いている。

「アリスは小人族。彼らを見る事ができるのは、ごく一部の人しかいない、らしい」
「らしい?」

なんともハッキリ言い切らない言葉に、小首を傾げる。
夢中になってパンケーキを食べているアリスの、頬に付いたクリームを優しく拭き取りながら、少し困った顔になった。

「アリスの仲間にそう聞いただけだから、ね。僕が最初に出逢ったのもアリスだったけど、最初はビックリしたなぁ」
「所でその…小人族って言うのは?初めて聞きましたけど…」

体の小さい生き物と言えば、妖精がまず頭に浮かんでくる。
彼らの存在は一般的に広まっている。妖精が過去唯一共存を認めた人物(その人は妖精王と呼ばれ、歴史に名を残している)とその子孫が、妖精の土地を守り、その土地にのみ育つ植物を世に出していると聞いたことがある。殆どの人の認識はこれぐらいだろうか。

しかし、小人族とはいままでに聞いたことが無い。カレンの所属しているギルドは大きく、各国に支店を構えている。だから様々な情報が入ってくるのに、だ。

「彼らは妖精達とは真逆の存在だと思って良いと思うよ」
「ま、真逆!?」
「そう。彼らが誕生したのは本当に最近。アリスが一番最初みたいだけど、それでも2年経ってない」
「あー、そう言う事…確かに、妖精族の歴史は長いですからね」
「うん。人が誕生する前から居たとされているからね。一節には、妖精が人を作ったんじゃないかって」
「あ、それ聞いたことあります。って、もしかして!?」
「その通り。小人族はとある人の手によって作られたんだ」

とんでも発言に、タイミング悪く口にしたコーヒーを、思わず吹き出すところだった。
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