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1章 死神の白魔法
18 当事者 ⑥
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攻撃は至ってシンプルだ。単調というかまあ並の使い手なのだろう。
”砂の戦士”の攻撃を軽々と避ける事は容易だった。しばらくは様子を見る為に攻撃もせず只管に躱わす、それだけだった。暇つぶしにはなる。龍である俺の体は勿論大きいわけだが、地下牢もとい元ダンジョンはそこまで大きく広々としたものではなく正直狭い、がそれでも縦横後ろと躱わす事が出来ている。大袈裟にでは無く、なるべく余計な体力を使わず最小限避ける様に、それ程余裕なのだった。素人とも言わず達人にもあらず。
「他愛も無い、飽きたわ」
大きな尾を軽く回転を入れ横殴りに”砂の戦士”・・・いや、”砂の塊”に叩きつけると呆気なく砂は崩れ落ち、旗はその場でカランと音をたて地面に落ちた。
あまりにもあっけない幕引き、期待していた以上に虚しく残念な気持ちでしか無い。
いっそどこかへ売り飛ばし大金を手にするか、こんなものあった所でなんの役にも立たない。それにしても箱を開け、これが現れた時の魔力は一体なんだったのか・・・。
再び落ちた杖を手に取ろうとすると、今度は先程現れた生意気にも人の形を成した”砂の塊”が同じ様に現れた。三体になって。
「数を束ねた所で俺の相手にならない事は明白だ。役立たずの武器風情が生意気にもこの俺にまだ挑むか?舐められたものだ・・・腹立たしい」
三位一体、正にそんな動きだった。一つが旗を手に取り、二つ三つが俺から見て左右に勢いよく別れ走り出し、真ん中には杖を持った一つ目の”砂の塊”が襲いかかるフリをし二つ目に旗を投げ、右にいた二つ目の”砂の塊”勢いそのままその旗で俺の腹を殴り更に後方へと回り三つ目に旗を渡したのだろう、飛び上がる三つ目は旗を受け取り首を目掛け叩き付けてきた。
「雑魚が!痛くも無いわ!」
一つ目の”砂の塊”を掴もうとしたがそれが失敗だった。勢い良く握り潰し少し動揺した所に二、三発攻撃を受けてしまった。そうだ、相手は砂だ。実体はあって無い様なもの。
握り潰した砂を払い、背の方にいる”砂の塊”に目掛け炎を放つも少し焦げ付く位で、畳み掛けようと二つの”砂の塊”は乱舞の如く互い違いに旗を手に持ち体に竿を叩き付けてくる。
痛みはあまりないが、あまりのしつこさと鬱陶しさに頭に来た。もうこんな道具ごと壊してくれる。
「鬱陶しいわ!!」
魔法を重ね、炎を放つ。ステンドグラスを砕きばら撒いた様に美しく、妖艶な丹碧の炎。
”瑠璃・回禄”、母の得意な魔法だった。
全てを焼き払い、触れた物を切付け焦がす。切り口から瞬く間には激しい炎が襲い焼きつける。
傷口は焼け回復すら許さず、灼熱の炎を浴びれば焼き爛れた場所溶けたガラスの様に固まり、結晶化し脆くなる。
美しく、酷く残酷な技だ。
勿論砂にも有効だった。"砂の塊"達は全身美しい結晶になり砕け散った。
しかしそれでも尚、旗は形を保ち変形すらせずそのまま地面に落ちた。
その事に少し驚きはしたもののどこか少しそんな気はしていた。その底無しの魔力の行方、それはまさにこの旗自身の耐久力にあると考えたからだ。
「まさか、次から次へと現れるのかこれは・・・どうすれば止まるんだこの旗は」
底無しの魔力に砂の兵隊。恐らく死ぬ迄戦い続けなければいけないのか?ふとそんな事すら考えていた。
無闇矢鱈に力を使う方が効率が悪い、一つだけ打開案があるがそれまで避け続けるのも無理がある。
大した攻撃では無いが疲弊し、同じ様な部位を何度もダメージを受ければいつしか大きな痛手となる。
打開案、それは至って単純でサニアによる箱への封印だ。
恐らく本人は力に気付いていないが箱を元にあった場所に戻れという一喝で元へと戻す事が出来るはず。
この”砂の塊"達からはあまり感じないが、あの旗はとんでもない魔力が未だ有している。
あの得体の知れない力を再び箱に封印するのは悔しいが無理だ。
だが彼女のいる町へと行きこの姿で呼ぶ訳にはいかない。
ただひたすらに彼女がこの場所ダンジョンへと訪れるまで待つしか無い。
しかしそれまで何時間こいつを相手にしなければいけない?途方も無いそんな作業ごめんだ。
再び旗の周りに砂が竜巻の様に集まりだし、"砂の塊"は6体程数を作り出し目の前に現れる事になった。
「いい加減飽きたが相手をするのも懲り懲りだな・・・」
致し方ない、これだけはしたくなかったが余計な体力を使うのも面倒だ。逃げる。
"砂の塊"に背を向け地下牢の出入り口へと走り出す、元より深くまで入っていないので出口はすぐそこにあった。
難無く外へと出ると日は暮れ始め、辺りは薄暗い。絶好のチャンスと言わんばかりに飛び立つと頭上には俺の何倍ものある砂で出来た大きな魚が何匹も空を泳いでいた。
「なんだ次から次へと!!」
襲い掛かる魚達、避けるにしてもあまりの大きさに逃げる間も無く地面に叩き落とされてしまう。
近くの海へと急ぎ飛び立つと頭上にいる砂の魚達は空から俺を目掛け泳いで来る。
あの砂の質量、重さにしたらとんでもない。そんな物遥か自分より頭上にいる高さから勢い良く地面に落とされる物なら、流石の俺でも痛手だ。
長い封印から何年も眠りから起きほんの一ヶ月と少し、まともに体も動かさず全力を出していない万全の状態でもない体ではいつもの
調子は出るはずもなく、思う様にスピードも出なかった。
海の丁度体が入るくらいの深さの所までは飛び急ぐ事は出来た、その時には自分を覆う影は大きくなり上を見上げると数メートル先には大きく口を開けた巨大な砂の魚がもうすぐそばまで来ていた。
「この・・・・!!」
着水し、海へと潜る。まだ浅いが飛行よりも遅くなるがまだ泳いで逃げれる。必死に翼を水かきの様に動かしある程度の距離を稼いだと同時に目に見える限りの深い所まで潜ろうとしていた瞬間。
水中からも響く程の轟音と衝撃、背中には砂の塊が落ちた衝撃が大きく伝わる。
辛うじて逃げた海の中、砂の塊による衝撃は少しだが落ち自身にもろにぶつかることを避けれた。しかしその衝撃たるや深く潜る俺を更に海の底へと叩きつける程、まともに受けた時を考えると少し冷や汗をかく。
次々に落ちる大きな魚を模した砂の塊はしばらくすると止んだ。それを見計らい水面へと上がるともう夜になっていた。
しかし住処にしていた地下牢ダンジョンも今や”砂の戦士”というか出来損ないの砂の塊に占領されている。
またあそこに戻り相手をする気はさらさら無い。
「さあどうしたものか・・・、海で過ごすのも気分は良くないな・・・。体もだいぶ鈍っている事、しばらく空でも飛んで体を慣らすか・・・夜だし高い所を滑空していれば人目にもつかんだろ」
それから俺は暫く海の遥か上へと羽ばたき空から一面砂の世界を眺めていた。何もない、ただただ暇で仕方ないと思っていたがあながちそうでも無かったのだ。
目覚めてからの期間、時折見せていた砂が集まり他の生物や物体に似せ現れていた現象、サニアが何だと言っていたそれがいつもより遠くからでも見られたからだ。大きさや種類、種族関係無く見られるそれは多少の暇つぶしにはなっていた。
しばらくして思い出した体を小さくする魔法を使えると。今更だが体を小さくし更に人目を避ける事が出来る、しかしこの魔法とにかくしんどい上に全体的な能力は下がるのであまりやりたくは無いが文句も言っていられない。
こんなにも彼女を待ち遠しく思い、朝が恋しい日はなかっただろう。そしてこれからも無いだろう。
攻撃は至ってシンプルだ。単調というかまあ並の使い手なのだろう。
”砂の戦士”の攻撃を軽々と避ける事は容易だった。しばらくは様子を見る為に攻撃もせず只管に躱わす、それだけだった。暇つぶしにはなる。龍である俺の体は勿論大きいわけだが、地下牢もとい元ダンジョンはそこまで大きく広々としたものではなく正直狭い、がそれでも縦横後ろと躱わす事が出来ている。大袈裟にでは無く、なるべく余計な体力を使わず最小限避ける様に、それ程余裕なのだった。素人とも言わず達人にもあらず。
「他愛も無い、飽きたわ」
大きな尾を軽く回転を入れ横殴りに”砂の戦士”・・・いや、”砂の塊”に叩きつけると呆気なく砂は崩れ落ち、旗はその場でカランと音をたて地面に落ちた。
あまりにもあっけない幕引き、期待していた以上に虚しく残念な気持ちでしか無い。
いっそどこかへ売り飛ばし大金を手にするか、こんなものあった所でなんの役にも立たない。それにしても箱を開け、これが現れた時の魔力は一体なんだったのか・・・。
再び落ちた杖を手に取ろうとすると、今度は先程現れた生意気にも人の形を成した”砂の塊”が同じ様に現れた。三体になって。
「数を束ねた所で俺の相手にならない事は明白だ。役立たずの武器風情が生意気にもこの俺にまだ挑むか?舐められたものだ・・・腹立たしい」
三位一体、正にそんな動きだった。一つが旗を手に取り、二つ三つが俺から見て左右に勢いよく別れ走り出し、真ん中には杖を持った一つ目の”砂の塊”が襲いかかるフリをし二つ目に旗を投げ、右にいた二つ目の”砂の塊”勢いそのままその旗で俺の腹を殴り更に後方へと回り三つ目に旗を渡したのだろう、飛び上がる三つ目は旗を受け取り首を目掛け叩き付けてきた。
「雑魚が!痛くも無いわ!」
一つ目の”砂の塊”を掴もうとしたがそれが失敗だった。勢い良く握り潰し少し動揺した所に二、三発攻撃を受けてしまった。そうだ、相手は砂だ。実体はあって無い様なもの。
握り潰した砂を払い、背の方にいる”砂の塊”に目掛け炎を放つも少し焦げ付く位で、畳み掛けようと二つの”砂の塊”は乱舞の如く互い違いに旗を手に持ち体に竿を叩き付けてくる。
痛みはあまりないが、あまりのしつこさと鬱陶しさに頭に来た。もうこんな道具ごと壊してくれる。
「鬱陶しいわ!!」
魔法を重ね、炎を放つ。ステンドグラスを砕きばら撒いた様に美しく、妖艶な丹碧の炎。
”瑠璃・回禄”、母の得意な魔法だった。
全てを焼き払い、触れた物を切付け焦がす。切り口から瞬く間には激しい炎が襲い焼きつける。
傷口は焼け回復すら許さず、灼熱の炎を浴びれば焼き爛れた場所溶けたガラスの様に固まり、結晶化し脆くなる。
美しく、酷く残酷な技だ。
勿論砂にも有効だった。"砂の塊"達は全身美しい結晶になり砕け散った。
しかしそれでも尚、旗は形を保ち変形すらせずそのまま地面に落ちた。
その事に少し驚きはしたもののどこか少しそんな気はしていた。その底無しの魔力の行方、それはまさにこの旗自身の耐久力にあると考えたからだ。
「まさか、次から次へと現れるのかこれは・・・どうすれば止まるんだこの旗は」
底無しの魔力に砂の兵隊。恐らく死ぬ迄戦い続けなければいけないのか?ふとそんな事すら考えていた。
無闇矢鱈に力を使う方が効率が悪い、一つだけ打開案があるがそれまで避け続けるのも無理がある。
大した攻撃では無いが疲弊し、同じ様な部位を何度もダメージを受ければいつしか大きな痛手となる。
打開案、それは至って単純でサニアによる箱への封印だ。
恐らく本人は力に気付いていないが箱を元にあった場所に戻れという一喝で元へと戻す事が出来るはず。
この”砂の塊"達からはあまり感じないが、あの旗はとんでもない魔力が未だ有している。
あの得体の知れない力を再び箱に封印するのは悔しいが無理だ。
だが彼女のいる町へと行きこの姿で呼ぶ訳にはいかない。
ただひたすらに彼女がこの場所ダンジョンへと訪れるまで待つしか無い。
しかしそれまで何時間こいつを相手にしなければいけない?途方も無いそんな作業ごめんだ。
再び旗の周りに砂が竜巻の様に集まりだし、"砂の塊"は6体程数を作り出し目の前に現れる事になった。
「いい加減飽きたが相手をするのも懲り懲りだな・・・」
致し方ない、これだけはしたくなかったが余計な体力を使うのも面倒だ。逃げる。
"砂の塊"に背を向け地下牢の出入り口へと走り出す、元より深くまで入っていないので出口はすぐそこにあった。
難無く外へと出ると日は暮れ始め、辺りは薄暗い。絶好のチャンスと言わんばかりに飛び立つと頭上には俺の何倍ものある砂で出来た大きな魚が何匹も空を泳いでいた。
「なんだ次から次へと!!」
襲い掛かる魚達、避けるにしてもあまりの大きさに逃げる間も無く地面に叩き落とされてしまう。
近くの海へと急ぎ飛び立つと頭上にいる砂の魚達は空から俺を目掛け泳いで来る。
あの砂の質量、重さにしたらとんでもない。そんな物遥か自分より頭上にいる高さから勢い良く地面に落とされる物なら、流石の俺でも痛手だ。
長い封印から何年も眠りから起きほんの一ヶ月と少し、まともに体も動かさず全力を出していない万全の状態でもない体ではいつもの
調子は出るはずもなく、思う様にスピードも出なかった。
海の丁度体が入るくらいの深さの所までは飛び急ぐ事は出来た、その時には自分を覆う影は大きくなり上を見上げると数メートル先には大きく口を開けた巨大な砂の魚がもうすぐそばまで来ていた。
「この・・・・!!」
着水し、海へと潜る。まだ浅いが飛行よりも遅くなるがまだ泳いで逃げれる。必死に翼を水かきの様に動かしある程度の距離を稼いだと同時に目に見える限りの深い所まで潜ろうとしていた瞬間。
水中からも響く程の轟音と衝撃、背中には砂の塊が落ちた衝撃が大きく伝わる。
辛うじて逃げた海の中、砂の塊による衝撃は少しだが落ち自身にもろにぶつかることを避けれた。しかしその衝撃たるや深く潜る俺を更に海の底へと叩きつける程、まともに受けた時を考えると少し冷や汗をかく。
次々に落ちる大きな魚を模した砂の塊はしばらくすると止んだ。それを見計らい水面へと上がるともう夜になっていた。
しかし住処にしていた地下牢ダンジョンも今や”砂の戦士”というか出来損ないの砂の塊に占領されている。
またあそこに戻り相手をする気はさらさら無い。
「さあどうしたものか・・・、海で過ごすのも気分は良くないな・・・。体もだいぶ鈍っている事、しばらく空でも飛んで体を慣らすか・・・夜だし高い所を滑空していれば人目にもつかんだろ」
それから俺は暫く海の遥か上へと羽ばたき空から一面砂の世界を眺めていた。何もない、ただただ暇で仕方ないと思っていたがあながちそうでも無かったのだ。
目覚めてからの期間、時折見せていた砂が集まり他の生物や物体に似せ現れていた現象、サニアが何だと言っていたそれがいつもより遠くからでも見られたからだ。大きさや種類、種族関係無く見られるそれは多少の暇つぶしにはなっていた。
しばらくして思い出した体を小さくする魔法を使えると。今更だが体を小さくし更に人目を避ける事が出来る、しかしこの魔法とにかくしんどい上に全体的な能力は下がるのであまりやりたくは無いが文句も言っていられない。
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