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1章 死神の白魔法
19 当事者 ⑦
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地平線は明るく日が差した、飛びながら眠る様な器用な事も出来ず結局夜中中只管飛んだり滑空したりし時間を潰していた。なまじ体は全開になった訳でも無くいまだ鈍って感じる。そしてとてつもなく眠い。
空から暫く地上の様子をまじまじと確認しているとサニアらしき人影を見つけたなるべく素早く地上スレスレの所まで降下しオアシスのあった所まで飛んで行く。魔法で体を小さくしているので人目にはつきにくいはずだ。
丁度サニアがオアシスのある所へ差し掛かろうとした所で地上へと降りそのまま歩いて彼女のいる所まで向かう、
遠目から見る彼女の姿を確認した所で声をかけようとしたが、彼女は泣いていた。
「な・・・なんで泣いているんだあいつ?」
初めて見る表情に戸惑っていると彼女は俺の方を見ると涙目を擦りながら、俺を凝視しこっちへと向かってきたのだ。
「リ、リフレシア?」
「サニアどうしたお前?」
涙を拭い目を擦り俺をジロジロと見るサニアにようやく意味が分かった。そう小さくなっていたのだ、それを不思議に思っていたのだろう。
「あ・・・そうか、サニア今はこの姿について説明している場合では無い!今直ぐ地下牢ダンジョンへ向かうぞ!」
「リフレシア・・・リフレシア・・・・」
彼女は何度も俺の名を呼び再び大粒の涙を溢し泣き崩れた。まるで意味が分からなかった、だが俺は今直ぐにでも地下牢ダンジョンに置いてきた旗の封印をして欲しい一心で待っていたその事も、彼女の涙を見て少し落ち着き冷静になれた。とりあえず落ち着かせるか・・・
「どうした?なにがあった?」
「街の人達が大勢亡くなって・・・」
「生き物が死ぬのは当たり前だ。それにお前町の人間と仲も大して無いんだろ?」
「でも・・・私町をいつか良い所に住みやすい場所にするって・・・でも出来なくて・・・」
「相変わらずお人好しだなお前は・・・、大体今お前は金がない以上何も出来ない。というか良くそんな奴らに感情移入出来るな、俺には到底無理そうだよ」
「でもリフレシアも町の人の為に交渉だったり一緒に掘ってくれたりしてたでしょ?」
「それはお前が望んだ事だからだ、別にお前以外がどうなろうと知ったことではない」
「ひどい・・・」
「酷くない」
この優しさがいつかつけ込まれなければ良いが。彼女は徐々に涙を拭落ち着きを戻し始めた所で、俺の置かれている状況を話した。
返事はないながらもしっかりと首は縦に動いており返事は返していた。
「お前には力がある、今は使い方も意味も分からんだろうがとにかくお前にしか出来ないだろう仕事だ。悔しいがおれは元より小賢しい魔法は苦手だ」
「・・・でも私そんなの分かんないよ」
「分からないなら分かるまでやれ、俺が力を貸してやる」
サニアは黙っていた。いつもの元気は無い、気疲れなんだとばかり最初は思っていた。身内でもない人間の心配をしてどこまでも心労するとはと。
「顔色が良くないが地下牢ダンジョンまでついて来れそうか?」
「大丈夫、不安だけどリフレシアが一緒なら」
俺は姿をそのままに彼女の歩く速度に合わせ地下牢ダンジョンへと向かった。いつもより小さくなった分歩くのも随分先が長く感じ疲れるが、それ以上に青ざめた顔で俯き歩く彼女をどこか不審に感じた。
何か悩んで見えたようにも感じる、あまりキャラでも無いがこちらから話しかけてみるか。
「深くは聞かんが、お前町の人間が亡くなったこと。そんなに気になるのか?」
「・・・それはだって、同じ土地に住む仲間で・・・私達みたいな外国の人間を受け入れてくれたんだよ?そんな優しい人達がなんの理由もなく殺されちゃうなんて・・・」
「なあ、俺は一言も”殺された”なんて聞いてないし言ってもいないぞ。”町に馴染めなくて友達もいない”と言っていたよな?それに最初から思っていたが、お前お人好しにしてはあまりにも度が過ぎている、繰り返す様だが仲も大して良くも無い人間にそこまでする理由が町の人達の為にしても目的が分からん。お前は何をしてどうして欲しいんだ?」
「どうして欲しいって・・・目的なんてないよ。ただ皆んなに良い暮らしをして欲しいだけで」
「お前の言う良い暮らしってなんだ、何から何を救うんだ?お前はそれをしてそいつからどう思われたいんだ?」
彼女はついに黙った、そしてしゃがみ込み再び大泣きする。嗚咽しながら必死に伝えようとする彼女の姿にはいつもの明るい面影はなかった。
そんな姿を見て初めて彼女の人らしく人たらしめる部分を見れた気がした。どこか影を感じていたあの笑顔と底無しにも見える明るさは偽ったものというより無理をしていた様にも思えたからだ。なんとなくそんな気がした。
暫く泣き続ける彼女のとなりにただ黙って立っていても埒があかない。けしかけたのは俺だが彼女の口吃り自分の事をしっかりと伝えない姿勢に少し苛立ちはあった。単なる八つ当たりにも思うが何か重要な事が彼女から聞けていない気がしたのだ。
「答えろ、お前は何を見て何をしたかったんだ?」
答える余裕なんてないと言わんばかりに咳と鳴き声が止まらないがなんとか伝えようと言葉を一つ一つ聞き取れるくらいに落ち着き出した。
「私は・・・ただ皆んなに認め・・・みと・・・欲しかった・・・。だ・・誰とも、馴染め・・ない・・・私が悪かった・・・なのに・・・なのに・・・」
「成程、お前は町の民から尊敬されたかったんだな?仲良くなれるきっかけが欲しかったんだな?」
激しく頷く彼女、顔は水という水でグチャグチャだ。
「お前は回りくどいんだ。俺の手下だろ?お前が好かれようが好かれまいが俺という王がお前の上に立ち対話する。これ以上にお前は何を求める?図々しい」
「でも・・・っで・・・も、リフレシアは契約しただけで友達じゃ・・・」
「じゃあ、新たな契約だ。お前が俺の友達になってやる、だから泣くな、そして今はお前を必要としているんだ。友として手伝えサニア」
泣きまくる彼女は袖で涙や鼻水を拭い頷いた。彼女は深呼吸をしやっとの事で落ち着きを見せたのだ。
「・・・ごめんリフレシア」
「ホントだバカ、それより”殺された”ってどういうことだ?」
彼女は再び俯き泣きそうな顔で言った。
「・・・リフレシアあの箱は開けるべきじゃ・・・無かったかも知れない」
「はあ?」
「町の人達が次々と”砂上の夢”に呑まれていなくなったのを見たの・・・何人も」
「”砂上の夢”?なんだそれ」
「いつか話したと思うんだけど、この地域特有の自然現象なんだ・・・、砂一粒一粒に魔力を持っててその砂達が持ちきれない魔力を持った時にその砂が集まって色んな生物や建造物なんかを真似して形になり魔力を消費する現象の事・・・」
ああ、度々見て夜に襲われた”砂の塊”のそれか。
「そういえばここ数日いつもより見るな、それに呑まれた?どういう事だ」
「お父さんはその事を調査してるんだけど・・・」
彼女は辛そうにグッと言葉を飲み込もうとし唇を噛み締め続けた。何やらその時点で嫌な予感はしていたが。
「・・・・。最近見かけた”砂上の夢”・・・あれに町の人や砂には無い力を感じるの・・・・、それに・・・あの箱に入っていた変な物の力も・・・」
「おい・・・まさか」
「私が箱を開けちゃったから!!ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
砂達があの箱の力で独立し魔力を補給する為に人を襲い魔力を補給してる。”砂上の夢”が発現すればする程ここは砂の餌になるってことか?
「サニア!急ぐぞ!!」
魔法を解き、元の大きさへと戻りサニアを手で持ちながら最高速で地下牢ダンジョンの元へと飛び立つ。
人目など気にしてなんていられない、今直ぐにでも封印しなければ町だけでなくいつしか世界中、何より俺もサニアさえも巻き添えになる。
「リフレシア!私・・・」
「うるさい!!!黙ってろ!!!」
「ごめんなさい・・・」
「良いか!封印魔法のコツは絶対的な力を、相手に見せつける様に自身が相手より上であると強く思う事だ!」
「で・・・でも・・私魔法なんか・・・」
「出来る出来ないかじゃ無い!やれ!!出来たんだよお前は!!俺すらも封印出来たんだ!!」
「でもリフレシアより強いなんて思った事・・・」
「あぁ、お前は俺より弱い!理屈もコツも分からんが、お前のそのよく分からない”自信”こそがお前の強さだ!!
俺の手下だぞ!!これ以上泣き言言うな!情けない!!!」
「・・・・、うん」
「大丈夫だ、私の友である事に誇りを持て。お前の足らぬ”自信”はそれ以上に価値がある」
「・・・分かった。私やってみる」
地平線は明るく日が差した、飛びながら眠る様な器用な事も出来ず結局夜中中只管飛んだり滑空したりし時間を潰していた。なまじ体は全開になった訳でも無くいまだ鈍って感じる。そしてとてつもなく眠い。
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丁度サニアがオアシスのある所へ差し掛かろうとした所で地上へと降りそのまま歩いて彼女のいる所まで向かう、
遠目から見る彼女の姿を確認した所で声をかけようとしたが、彼女は泣いていた。
「な・・・なんで泣いているんだあいつ?」
初めて見る表情に戸惑っていると彼女は俺の方を見ると涙目を擦りながら、俺を凝視しこっちへと向かってきたのだ。
「リ、リフレシア?」
「サニアどうしたお前?」
涙を拭い目を擦り俺をジロジロと見るサニアにようやく意味が分かった。そう小さくなっていたのだ、それを不思議に思っていたのだろう。
「あ・・・そうか、サニア今はこの姿について説明している場合では無い!今直ぐ地下牢ダンジョンへ向かうぞ!」
「リフレシア・・・リフレシア・・・・」
彼女は何度も俺の名を呼び再び大粒の涙を溢し泣き崩れた。まるで意味が分からなかった、だが俺は今直ぐにでも地下牢ダンジョンに置いてきた旗の封印をして欲しい一心で待っていたその事も、彼女の涙を見て少し落ち着き冷静になれた。とりあえず落ち着かせるか・・・
「どうした?なにがあった?」
「街の人達が大勢亡くなって・・・」
「生き物が死ぬのは当たり前だ。それにお前町の人間と仲も大して無いんだろ?」
「でも・・・私町をいつか良い所に住みやすい場所にするって・・・でも出来なくて・・・」
「相変わらずお人好しだなお前は・・・、大体今お前は金がない以上何も出来ない。というか良くそんな奴らに感情移入出来るな、俺には到底無理そうだよ」
「でもリフレシアも町の人の為に交渉だったり一緒に掘ってくれたりしてたでしょ?」
「それはお前が望んだ事だからだ、別にお前以外がどうなろうと知ったことではない」
「ひどい・・・」
「酷くない」
この優しさがいつかつけ込まれなければ良いが。彼女は徐々に涙を拭落ち着きを戻し始めた所で、俺の置かれている状況を話した。
返事はないながらもしっかりと首は縦に動いており返事は返していた。
「お前には力がある、今は使い方も意味も分からんだろうがとにかくお前にしか出来ないだろう仕事だ。悔しいがおれは元より小賢しい魔法は苦手だ」
「・・・でも私そんなの分かんないよ」
「分からないなら分かるまでやれ、俺が力を貸してやる」
サニアは黙っていた。いつもの元気は無い、気疲れなんだとばかり最初は思っていた。身内でもない人間の心配をしてどこまでも心労するとはと。
「顔色が良くないが地下牢ダンジョンまでついて来れそうか?」
「大丈夫、不安だけどリフレシアが一緒なら」
俺は姿をそのままに彼女の歩く速度に合わせ地下牢ダンジョンへと向かった。いつもより小さくなった分歩くのも随分先が長く感じ疲れるが、それ以上に青ざめた顔で俯き歩く彼女をどこか不審に感じた。
何か悩んで見えたようにも感じる、あまりキャラでも無いがこちらから話しかけてみるか。
「深くは聞かんが、お前町の人間が亡くなったこと。そんなに気になるのか?」
「・・・それはだって、同じ土地に住む仲間で・・・私達みたいな外国の人間を受け入れてくれたんだよ?そんな優しい人達がなんの理由もなく殺されちゃうなんて・・・」
「なあ、俺は一言も”殺された”なんて聞いてないし言ってもいないぞ。”町に馴染めなくて友達もいない”と言っていたよな?それに最初から思っていたが、お前お人好しにしてはあまりにも度が過ぎている、繰り返す様だが仲も大して良くも無い人間にそこまでする理由が町の人達の為にしても目的が分からん。お前は何をしてどうして欲しいんだ?」
「どうして欲しいって・・・目的なんてないよ。ただ皆んなに良い暮らしをして欲しいだけで」
「お前の言う良い暮らしってなんだ、何から何を救うんだ?お前はそれをしてそいつからどう思われたいんだ?」
彼女はついに黙った、そしてしゃがみ込み再び大泣きする。嗚咽しながら必死に伝えようとする彼女の姿にはいつもの明るい面影はなかった。
そんな姿を見て初めて彼女の人らしく人たらしめる部分を見れた気がした。どこか影を感じていたあの笑顔と底無しにも見える明るさは偽ったものというより無理をしていた様にも思えたからだ。なんとなくそんな気がした。
暫く泣き続ける彼女のとなりにただ黙って立っていても埒があかない。けしかけたのは俺だが彼女の口吃り自分の事をしっかりと伝えない姿勢に少し苛立ちはあった。単なる八つ当たりにも思うが何か重要な事が彼女から聞けていない気がしたのだ。
「答えろ、お前は何を見て何をしたかったんだ?」
答える余裕なんてないと言わんばかりに咳と鳴き声が止まらないがなんとか伝えようと言葉を一つ一つ聞き取れるくらいに落ち着き出した。
「私は・・・ただ皆んなに認め・・・みと・・・欲しかった・・・。だ・・誰とも、馴染め・・ない・・・私が悪かった・・・なのに・・・なのに・・・」
「成程、お前は町の民から尊敬されたかったんだな?仲良くなれるきっかけが欲しかったんだな?」
激しく頷く彼女、顔は水という水でグチャグチャだ。
「お前は回りくどいんだ。俺の手下だろ?お前が好かれようが好かれまいが俺という王がお前の上に立ち対話する。これ以上にお前は何を求める?図々しい」
「でも・・・っで・・・も、リフレシアは契約しただけで友達じゃ・・・」
「じゃあ、新たな契約だ。お前が俺の友達になってやる、だから泣くな、そして今はお前を必要としているんだ。友として手伝えサニア」
泣きまくる彼女は袖で涙や鼻水を拭い頷いた。彼女は深呼吸をしやっとの事で落ち着きを見せたのだ。
「・・・ごめんリフレシア」
「ホントだバカ、それより”殺された”ってどういうことだ?」
彼女は再び俯き泣きそうな顔で言った。
「・・・リフレシアあの箱は開けるべきじゃ・・・無かったかも知れない」
「はあ?」
「町の人達が次々と”砂上の夢”に呑まれていなくなったのを見たの・・・何人も」
「”砂上の夢”?なんだそれ」
「いつか話したと思うんだけど、この地域特有の自然現象なんだ・・・、砂一粒一粒に魔力を持っててその砂達が持ちきれない魔力を持った時にその砂が集まって色んな生物や建造物なんかを真似して形になり魔力を消費する現象の事・・・」
ああ、度々見て夜に襲われた”砂の塊”のそれか。
「そういえばここ数日いつもより見るな、それに呑まれた?どういう事だ」
「お父さんはその事を調査してるんだけど・・・」
彼女は辛そうにグッと言葉を飲み込もうとし唇を噛み締め続けた。何やらその時点で嫌な予感はしていたが。
「・・・・。最近見かけた”砂上の夢”・・・あれに町の人や砂には無い力を感じるの・・・・、それに・・・あの箱に入っていた変な物の力も・・・」
「おい・・・まさか」
「私が箱を開けちゃったから!!ごめんなさい、ごめんなさい・・・」
砂達があの箱の力で独立し魔力を補給する為に人を襲い魔力を補給してる。”砂上の夢”が発現すればする程ここは砂の餌になるってことか?
「サニア!急ぐぞ!!」
魔法を解き、元の大きさへと戻りサニアを手で持ちながら最高速で地下牢ダンジョンの元へと飛び立つ。
人目など気にしてなんていられない、今直ぐにでも封印しなければ町だけでなくいつしか世界中、何より俺もサニアさえも巻き添えになる。
「リフレシア!私・・・」
「うるさい!!!黙ってろ!!!」
「ごめんなさい・・・」
「良いか!封印魔法のコツは絶対的な力を、相手に見せつける様に自身が相手より上であると強く思う事だ!」
「で・・・でも・・私魔法なんか・・・」
「出来る出来ないかじゃ無い!やれ!!出来たんだよお前は!!俺すらも封印出来たんだ!!」
「でもリフレシアより強いなんて思った事・・・」
「あぁ、お前は俺より弱い!理屈もコツも分からんが、お前のそのよく分からない”自信”こそがお前の強さだ!!
俺の手下だぞ!!これ以上泣き言言うな!情けない!!!」
「・・・・、うん」
「大丈夫だ、私の友である事に誇りを持て。お前の足らぬ”自信”はそれ以上に価値がある」
「・・・分かった。私やってみる」
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