転生令嬢エヴァの婚約破棄から始まる愛と妄想の日々

キョクトウシラニチ

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1章 主人への愛が重い侍女は執着系厩番にロックオンされる

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 ジュノの叔父は公爵家の厩番をしていて、彼に憧れたジュノは弟子として数年間公爵家でお世話になっていた。
 12歳から働き始めて、仕事を覚えて、20歳になった今年叔父からこのトーン子爵家を紹介された。トーン子爵家の厩番が高齢のため、新しい人員としてジュノが働き出したのだ。
 若いながら馬の仕事は叔父の手ほどきのお陰でなかなかやれていると思う。
 だが、彼は公爵家に居た頃から恋愛面において充足感を得られることは無かった。

 ハウスメイドや侍女、キッチンメイドに従僕、何人か恋人ができたことはあった。彼はいつも相手から告白をされて、それを受けて交際をしていた。
 従僕の男の子が彼に告白した時、少しだけ心が動かされて、彼はキッチンメイドから従僕に乗り換えた。
 だけど情熱はすぐに消えて何度か情交をした後、相手の事が好きではないなと冷めた頭がジュノに言ってくるのだ。酷く冷めた言葉が頭を占める『もう飽きたな』と。

 何人もの恋人を移り歩いて来て、このトーン子爵家に来た時も最初は誰にも興味を持てなかった。
 ジュノの親しみやすい笑顔の奥では、人に対する無関心が鎮座していたのだ。もちろん、仕事仲間として周りと社交辞令の付き合いはする。だけど誰かに恋する事はジュノには難しかった。

 奇妙だなと目に留まったのは、子爵令嬢に引っ付いている若手のメイドの存在だった。

 少女が令嬢の世話をしている。なんでだ?普通はベテランのメイドや侍女だろう。元いた公爵家のご令嬢は3人も侍女をつけていたし、子爵家でも侍女ぐらい雇えるだろう?
 どう見ても13、4歳の肉付きの無い小さな子供がチョコチョコと令嬢の周りで眼鏡を光らせて世話しまわっている。
 周りにあの少女の事を聞いてみると、彼女は令嬢より年上の侍女だったのだ。
 ラウラという眼鏡の侍女は、ふくよかなお嬢様との対比でジュノには子供に見えた。侍女という知識や教養がないとできない業務をしているのだから、彼女は仕事はできるのだろう。
 どんなに取り澄ましてお行儀よく歩いていても、お嬢様にくっ付いている少女に見えてジュノには可笑しくて仕方なかった。いつの間にか目で追ってしまっていた。

 そして、あの森でラウラと共にマッシュルームを採取した日、キノコを抱き締めながら泣くラウラに人生で初めて胸がキューっと苦しくなった。
 自分でもなぜ心臓が苦しくなったのか分からなかった。
 続けてラウラが言った言葉にジュノは雷に打たれた気がした。
「お嬢様の婚約者が憎くてっ!本当は、本当はトリカブトを探していたんです…な、内緒にしてくださいっ。お願いしますっ…うぅぅ」
 泣きながら自分の罪を告白したラウラだが、その愛情の裏返しの極端な行動がジュノには光輝いて見えた。
 そこまでお嬢様の事を大事にしているのか、彼女を傷つけた人間を殺したいと思うほど。

 ああ…
 良いな。

 彼女にそんな風に思ってもらえるお嬢様が心底羨ましい。
 そんな情熱を持ったこの少女にしか見えない女性にジュノは激しい恋慕を抱いた。
 今すぐに押し倒して小さな体に熱杭を打ち込みたい衝動に、ギラギラした目を伏せて隠し、屋敷まで彼女を連れて行き、自分は宿舎に戻る。

 今まで特定の誰かを想ったことなんてない彼は人生で初めてラウラを想って自身を慰めた。
 ジュノは人生で初めて恋した。

 仕事仲間が集まる食堂で彼女に告白したのは、彼女に断られ難くするという浅はかな計算があった。
 だが、ラウラには利かなかった。お嬢様を差し置いて自分が恋愛などできないと言っていたのを聞いた。
 それを教えてくれたハウスメイドのアナはどうやらジュノとラウラを応援してくれるようだ。
 よしよし、ではアナに手伝ってもらうことにする。まずは屋敷の使用人を味方につけて周りから固める。そして少しずつラウラさんとの距離を詰めよう…

 そんな事を考えていたら、長期滞在されるお客人のゼスト様が屋敷にやってきた。
 ラウラを落とすのは長期計画と考えていたが、意外なことにラウラからジュノに接触してきたのだ。

 なんとまたトリカブトを探したいという相談を受けて、困った。
 ゼスト様がパーティの時にお嬢様に失礼なことをしたらしい。だからと言って流石に客人を毒殺するのはダメだろう。
 そんな彼女の話を聞いても、やっぱり極端な事を考えるラウラには好感しか持てなかった。

 可愛い。

 思い悩んで、この小さな体で考えて、俺のところに来てくれたのか。
 少しでも彼女の気持ちを落ち着かせるためにジュノは牝馬の尿のイタズラの提案をした。
 それにはラウラも喜んでいた。

 翌日にゼスト様の相棒の牡馬が、ゼスト様のお尻周りに鼻先をくっ付けているのを発見した時、ジュノは噴出した。
 実は男同士だと気さくで話しやすい感じのいい人なんだけどなぁ。発情した牝馬の尿じゃないから怪我はしないけど、少しだけ罪悪感を感じる。
 頻繁にラウラが新鮮な尿を取りにくるから、彼女と自然に話をするようになった。
 よし、俺の事を好きになってくれ。そう心の中で願った。
 しかしお嬢様の話になった時、俺が突っ込んだ話をしてしまって失敗したようだ。彼女が厩舎に来てくれなくなった。

 彼女が厩舎に来てくれるから続いていた細い交流は途絶えてしまった。
 クサクサした気分で昼食をとりに行くと、食堂の前で執事のコメットがラウラと話し込んでいた。小さなラウラの話をしっかりと聞くためか、背の高いコメットはいつも機械の様に真っ直ぐに伸びた背筋を曲げて顔をラウラに近づけていた。

 自分の体の血が嫉妬で沸き立つのを感じた。
 その怒りや焦りに似た気持ちは、ジュノの足を地面に縫い留めて、その場で二人を見守ることしかさせなかった。人生初の嫉妬だった。
 しかも、話が終わるとコメットがラウラの頭を撫でたのだ。
 二人の様子を伺っていると、ラウラが少し驚いた後、ニコリと口角を上げるのが見えた。

 くそ!そういうことなのか?!俺じゃなくて、コメットが良いのかよ!!

 その場で動けず、拳を握りしめた。自分の手の関節が鳴る音とギリギリと奥歯を噛みしめる音がする。

 鉛の様に重たくなった足のままラウラを目で追いかけていると、彼女は次にゼスト様に捕まった。

 ラウラはゼスト様に良い感情を持っていないし、お嬢様に失礼な態度をとった彼を恐れてもいる。直接対峙されたら、どうなるか…

 案の定彼女は顔を白くして、小刻みに震えていた。
 ジュノは思わず彼女を庇った。
 大丈夫。ゼスト様は横暴な貴族じゃない、絶対に体調不良の使用人を恫喝したりしない。
 ゼスト様に適当な嘘をついて、彼女を宿舎まで連れていく。ラウラの白い顔がだんだんと元に戻っていくが、ジュノはコメットへの嫉妬でひどいことを言いそうだったので、すぐにその場から逃げようとした。
 なのに、
 彼女が俺を引き止めたのだ。
 小さな白い手が俺のシャツを引っ張る。

 なんだよ。
 俺の気持ちわかってるくせに、今、二人きりなんだぞ。コメットさんがいいんなら、俺にこんな事するなよ。
 人性初めての嫉妬にジュノは途切れ途切れに言葉を絞り出した。さっきのコメットさんとの親密なやりとり、厩舎に来なくなった事、ラウラがジュノをどう思っているのか、疑問はたくさんあるのに、いつもみたいに流暢に言葉は出てこない。

 子供みたいな拗ねた声しか出なくて、情けなくて…俺、この子の事好きでどうしようもないんだなと思い知る。


「ちがうわ!コメットとは何もないし。ただの同僚よ!あ、あ、あなただって!ソフィアと楽しそうにしていたじゃない!!」

 え?
 その小さな叫びは、俺にはご褒美だった。

「ラウラさん?嫉妬してたの?」
 胸が弾んで口が緩むのが止められない。少し意地悪な質問をして、意図して追い詰める様に彼女から欲しい言葉を引き出した。
 彼女のドロドロした嫉妬心を暴いて、俺はもう興奮が止められなかった。

 その感情が欲しかった。
 この小さな女性のとんでもないドロドロした感情を俺に向けてほしかった。仕える主人の敵を毒殺しようと考える程、純粋なのに真っすぐで重たい気持ちを俺に向けることができたんだ。
 気持ちが止めれなくて彼女の唇を奪うと、眼鏡の奥の目が赤くなっていて、顔も上気している。
 少し強引に舌を入れて絡ませると、力が抜けて俺に体を預けてきたので、俺は逸る気持ちのままに彼女の部屋に入り込んだ。
 部屋は綺麗で彼女らしくこじんまりと整頓されていて、所々可愛らしいドライフラワーが小さく飾られている。
 俺はキスで彼女の口を犯すのを止められない。股間の間の物はギンギンで、今直ぐ押し倒せと頭のどこかで誰かが言う。
 何とか前戯をしないとと、鼻息荒くキスしながら、彼女の制服を脱がしていく。
 彼女の肌が見えてくると、やっと少し抵抗した。
 小さくて細い体にコンプレックスがあるのか、胸元を隠してくるから、手を軽く拘束して胸を触る。
 触ってみると、確かに全く胸は無い。でも白くて、胸の先端だけプクりと色を変えた可愛い飾りがついている。
 多分この小さな胸がコンプレックスなんだろうなぁ…そんな事考えてることがいじらしくて、可愛い。
 彼女の胸はほとんど脂肪が無いけど、先の部分が小さいのに赤い色をしていて、綺麗だ。小さい女の子に悪戯している背徳的な気分にもなる。ああ、この小さな胸を抱くたびにうんと可愛がってやろう。嫌がっても気持ちよくなることを教え込んで、俺の手で少し大きくなるかもしれない。
 脚の挟間の花弁は慎ましい小ささなのに、下着越しに湿っているのが分かった。また頭の中で今直ぐ入れたい!と叫ぶ声が聞こえたが、そいつはボコボコにして頭の隅に追い出す。
 初めて彼女に触るのだから、あっという間に終わりたくなくて、目を皿にして忘れないように頭に記録するつもりだ。
 口に含んだ彼女の胸の飾りは今までの恋人の中でも一番小さくて未熟だ。指では下着越しに彼女の良いところを探る。少し下着をずらして直接触ると、やはりほとんど毛が無くて、これもコンプレックスかもしれないと思った。でも彼女のクリトリスが皮の下で主張しているのを感じるから、少しずつ刺激した。
 彼女が小さく声を漏らしていて、その高い声が混じる吐息が可愛くて仕方がない。
 夢中で彼女を貪っていると、その体が痙攣した。
 この慣れない感じはたぶん初めてだ。
 彼女の人性初の男からの絶頂を俺が与えたと思うと、仄暗い征服欲が満たされた。
 指を入れると、また抵抗した。絶対逃さない。トイレ?ああ、この子潮吹く才能ある子だ…
 ますます興奮する。
 さらに指で攻めると、綺麗に潮を吹いて絶頂した。可愛い過ぎるだろ。もう限界。
 またキスすると、彼女の眼鏡に鼻が当たった。落ちて壊れるとマズイので、顔を覆っていた分厚い眼鏡を外す。

 嘘だろ。
 ラウラさんの眼鏡を外したら、長くて太いまつ毛に覆われた綺麗な形のヘーゼルの瞳が出てきて、思わず息を飲んだ。
 眼鏡外して美少女出てくるとか、何処の物語りだ。もう駄目。絶対離さない。この子に子供産ませたい。絶対結婚する。
 いよいよ子種を注ぎ込んでやるとベルトに手をかけながら決心してたら、部屋にノックの音が響いた。

 仕事仲間を心配する執事のコメットの声で正気に戻った。
 ちょっと助かったかも。
 今このまま彼女を抱いてたら、止められなかったかも知れない。同意もないまま何度も中に出すことしか考えていなかった事が、怖くもあり、発情した自分が興味深くもあった。

 強引にならなくて良かった。

 ラウラさんはノックに驚いてミノムシみたいに布団に包まっていたので、ここは俺が対処しよう。
 布団を捲ると不安げな目が覗いた。
 俺が顔を寄せると、ラウラさんは勘違いして目を閉じて顎を上げた。
 ラウラさん…無意識にキス待ち顔してる…っ!!
 少し収まったジュノの下半身の熱がまたムクリと芯を持つ。反則技だろこんなの。

「今日はもう体調不良で通そう。ゼスト様にも言ってしまったしね。ラウラさんは寝てて。後は俺に任せといて」

 自分を自制して、涙で濡れたまつ毛にキスした。あー可愛い。
 さっきもぎ取ったラウラの下着をポケットに入れて、ジュノは彼女の代わりに部屋を出た。

 ジュノは少し前まで恋敵手だと思っていた執事に「ラウラは風邪で看病していた」と、適当な嘘をついてその場をやり過ごす。
 屋敷に戻っていくコメットさんの表情はいつもと同じ様に見えた。ジュノがラウラと二人きりになっていても動揺も何も感じさせないいつもの鉄仮面だった。
 なんだ。この人がさっきラウラさんに触っていたのは大した意味が無かったのかと内心胸を撫で下ろしていた。


「ジュノ」
 別れたはずのコメットさんが少し離れたところでこちらを向いて立っていた。
「ラウラに接触したのはあなただけですし、後で看病をしてあげてください。馬の世話は従僕を送りますので彼らに指示して下さい」
「それと、…彼女は私にとって妹の様に思っているので、あまり高熱が出ない様にしてくださいね。お互いに」
 鉄仮面はそれだけ言うとキビキビと歩いて行く。

 バレてたか。食えない奴。
 まぁ、なんか承認してもらえたみたいだし、午後休を貰えたみたいだし、後でもう一度ラウラさんと本番に挑もう。
 本番の彼女の蕩けた顔が見たい。

 ラウラが睡眠している間、ドロドロになるまで溶かした彼女を一晩中愛するとジュノが決心している事なんて彼女は知る由もなかった。

 -----

 え?ラウラとジュノが馬の前で楽しそうに話してる!
 えー
 えぇぇー…
 くそ!私の新しい妄想材料がぁぁぁ!クソ!ノンケかよ!!
 あああ!あんたはコメットと道なき恋に落ちていた設定だったのにぃぃ!


 ハウスメイドのアナはお嬢様のお部屋の掛け布を交換したときに、お嬢様の険しい顔を見てしまって、おっちょこちょいなアナは驚いて布を落としてしまった。
「お、…お嬢様?御加減が悪いのですか?」

「ああ、なんでもないのよ。少し外の日差しが眩しくて」
 ふふと笑顔を取り戻したお嬢様は聖女の様に神々しかった。アナはその笑みを向けられて、またお嬢様を好きになった。
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