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幽るもの
肆
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*
「巫寿。今日ちょっとお出かけしようか」
朝起きて直ぐによそ行きの着物を着せられた。洋服ではなく着物を着せられる時はお母さんたちのお友達に会うときか、オヤシロへ行く時だ。
どこいくの?とまだ開ききらない目を擦りながら尋ねる。
「志ようちゃんのところだよ」
「しようちゃん!? やったー!」
ぴょーんと飛び跳ねて喜ぶ私にお母さんは「帯結べないよ」と苦笑いを浮べる。
志ようちゃんはお母さんとお父さんの親友で、すごく面白くて優しいお姉さんだ。すごくたまに、そしてこっそりとしか会えない人で、お母さんは「志ようにはとても大切なお勤めがあるからよ」と言っていた。
志ようちゃんのお家はとても広くてお庭はいい匂いがして、遊びに行くといつも美味しいお菓子を出してくれる。白いお兄さんは少し怖いけど、お母さんがいつもよりも楽しそうな顔をするから、私も志ようちゃんのおうちが好きだった。
志ようちゃんのおうちは凄く遠い。たくさんあるかなければいけない。車で行けばいいのにと文句を言うと、お母さんは「一度やったら凄く怒られたのよねぇ」とほっぺたを抑えていた。
いつも途中でくたびれて、お母さんにおんぶしてもらう。
本当はもうちょっと歩けるけれど、今日も半分くらい歩いたところでお母さんにおんぶをおねだりした。
お母さんのおんぶは温かくていい匂いがする。
そしていつの間にか眠ってしまって、気が付けば志ようちゃんのおうちに着いているのだ。
鳥居のところで白いお兄さんに「また来たのかガキンチョ」と睨まれる。ベェッと舌を出してお母さんとお家に入った。志ようちゃんのお家にはピンポンがないのに、志ようちゃんは私たちが遊びに来るとエスパーみたいに気付く。
今日も後ろから驚かそうとして飛び付いたけれど、少しもびっくりする素振りを見せずに「いらっしゃい巫寿」と志ようちゃんは笑った。
あれ?と首を傾げる。
いつもならぎゅうっと抱きしめてくれる志ようちゃんが、今日はしてくれなかった。
遅れてやってきたお母さんを見ると一瞬泣きそうな顔をして、パッと笑う。
「巫寿、お母さんと少しお話することがあるからお庭で遊んでて。台所の戸棚にクッキーが置いてあるから、それを持って行っていいよ」
私は志ようちゃんが作ってくれるお菓子が大好きで、特にチョコチップがザクザク入った手作りクッキーが大好物だった。まんまと食べ物に釣られてスキップで台所へ向かい、戸棚から袋詰めされたクッキーを見つけ出すと、これまたスキップで庭に出た。
志ようちゃんのおうちの庭には背の低い梅の木が沢山植えてある。けれど梅の木の高さじゃ木登りをしても楽しくなくて、いつもいちばん大きな楠に登った。赤く色付いた葉っぱがとても綺麗だった。
幹に近い太い枝に腰を下ろすと、袖に入れていたクッキーを取り出しいただきますと手を合わせる。
志ようちゃんのクッキーはいつも変な形だ。この前はアリクイの形でその前はバクの形だと言っていた。今日のクッキーもよく分からない形をしているけれど四本足なので多分動物だ。変な形でも味はピカイチ。
美味しい~と頬に手を当てて、最近お母さんに教えてもらった歌を歌う。
「お星さん昇った 遊びましょ 妖狐コンコン こんばんは」
志ようちゃんとお母さんはなんのお話をしているんだろう。
「お月さん沈んだ また明晩 提灯小僧と はよ帰ろ」
志ようちゃん、ちょっと元気がないように見えたな。
「お日さん照った ねんねこりん 目目連の こもりうた────つまんなーい」
歌い終わると同時に唇を尖らせ伸びをする。足をバタバタと振って履いていた草履を地面に落としたその瞬間。
「わ、ビックリした。どこの子? どうやって入ってきたの? 駄目だよ、御神木さまに登っちゃ。ほら降りておいで」
足元からそんな声がして見下ろす。緑色の袴を履いたお兄さんが、目を丸くしてこちらを見上げていた。
ほら、と脇に手を差し込まれ抱き上げられた。落とした草履を拾ったお兄さんは私にそれを履かせて土の上に下ろした。
「君お名前は? いくつ? お父さんかお母さんは近くにいる?」
お母さんや志ようちゃんからも、この木には登ってはいけないと前々から言われていた。登っているのが見つかって怒られると思った私は、きゅっと身を縮めて答える。
「しいなみこと、みっつ……おかあさんときたの」
お名前ちゃんと言えて偉いね、お兄さんはそう笑ってぐりぐりと私の頭を撫でた。怒られなかったことにほっと息を吐く。
私の手を握って歩き出したお兄さんを見上げた。志ようちゃんのお家で白いお兄さん以外に男の人と会うのは初めてだった。
「どうして緑色なの?」
お兄さんの袴を指さして首を傾げる。
「神修の学生だからだよ。これは制服」
「セイフク?」
「そ。制服」
それが何を意味するのは分からなかったけれど、わかった振りをして「ふーん」と答える。お兄さんに手を引かれてキシキシ音を立てる廊下を歩いた。
「お兄さんだれ?」
「俺は神々廻芽だよ。宮さまのところでお勉強してるんだ。ミコトちゃんのお母さんも宮さまに会いに来たの?」
みやさま?と首を傾げる。
ここは志ようちゃんのお家だ。志ようちゃんのお家には志ようちゃんと白いお兄さんしかいない。
「お母さんは、しようちゃんに会いに来たんだよ」
「なるほど。君のお母さんが、審神者さまがよくお話されていた泉ちゃんか」
お兄さんは納得したようにひとつ頷いた。志ようちゃんの部屋が見えた。障子はすこしだけ開きっぱなしになっていた。声をかける前にそっと覗き込む。
私がお母さんにひざ枕してもらっている時みたいに、志ようちゃんがお母さんさんのひざに顔を伏せていた。志ようちゃんの肩が震えている。
志ようちゃん、泣いてるの……?
「泉ちゃん。ごめんなさい。ごめんなさい、私はどうしたら」
大人の人が泣いているのは初めて見た。驚きと困惑でお兄さんを見上げる。お兄さんは真剣な顔で部屋の中を覗き込んでいた。
「志よう、私を見て。大丈夫だから私に話して」
「私を嫌いにならないで。どうか私を許して」
お母さんは困ったように志ようちゃんの背中を撫でた。
「私が名前を付けたから。私があの子に名前なんて付けたから、あの子を縛ってしまったッ……」
「どういうこと? もしかして先見の明で何か見たの?」
「こんなことになるなんて微塵も思ってなかったの……! ああ、どうしたらいい? 私は何てことを。泉ちゃんたちの大切な、私たちの大切な希望を」
巫寿、志ようちゃんが私の名前をつぶやく。泣き腫らした顔でゆっくりとお母さんを見た。
巫寿、わたしの名前。
お母さんとお揃いで、お兄ちゃんとお揃いで、お父さんたちの大切な人がつけてくれた名前。
「私はこの子に、神々に愛され、永遠の祝福がありますように。そういう意味を込めて巫寿と名付けた」
「ええ。知っているわ。貴方がそう教えてくれたもの」
それがいけなかったの。
志ようちゃんは震える声で続けた。
「審神者である私が、かむくらの巫女である私が、巫寿に名前を与えたことがいけなかったの。名前を授けるというのは命を与えること、人生を縛ること。私は巫寿に"巫寿"という呪いをかけたのよ」
お母さんの瞳が揺れる。志ようちゃんはお母さんと繋いだ手をぎゅっと握りしめた。
「巫寿の巫は、かむくらの巫女の巫。巫寿はかむくらの巫女である私の宿命の半分を背負っているわ」
は、とお母さんが息を飲む音がした。
「ここ半年、先見の明で同じ未来をほぼ毎日見ていたの。審神者の装束を着た私が、空亡と相打ちになって死ぬ夢よ」
「うそ……そんな」
お母さんがこぼれ落ちそうなほど目を見開いた。瞳が激しく揺らいでいる。
「でも少し前からね、別の未来も交互に見るよになったの。内容は同じだけれど、そこで死ぬのは私じゃなくて、神修の制服を着た16歳くらいの女の子────大きくなった巫寿だった」
お母さんが手のひらで口を抑えた。
お母さんと志ようちゃんの話は難しい。なんの話をしているのか分からない。けれど私の名前が沢山呼ばれているから、きっと私の話なんだ。
「何百回と同じ未来を見た。きっとこの未来は変えられないんだと思う。神職たちは疲れきっているわ。彼らだけじゃ絶対に空亡を討伐することはできない。トドメを刺すのは間違いなく私か、大きくなった巫寿。そして、トドメを刺した者は相打ちになる。つまり────」
お母さんの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。いやよ、喉の奥から絞り出た言葉に志ようちゃんは小さく首を振った。
「空亡を倒すには、私か巫寿のどちらかが死ななければならない」
お兄さんが握っていた私の手をするりと解いた。顔を上げるともう既にお兄さんは背を向けて歩き出していた。
廊下が軋んで、部屋の中にいた二人がハッと振り返った。志ようちゃんがくしゃりと顔を歪めて私に手を差し出す。戸惑いながらもその腕に抱かれた。
「巫寿。可愛い巫寿。どうか私を許して。巫寿、大切な子。私たちの希望」
ほっぺたに志ようちゃんの涙が落ちて冷たかった。後ろからお母さんに抱きしめられて苦しかった。ふたりが泣いているのが悲しくて、私も涙がこぼれた。
「巫寿。今日ちょっとお出かけしようか」
朝起きて直ぐによそ行きの着物を着せられた。洋服ではなく着物を着せられる時はお母さんたちのお友達に会うときか、オヤシロへ行く時だ。
どこいくの?とまだ開ききらない目を擦りながら尋ねる。
「志ようちゃんのところだよ」
「しようちゃん!? やったー!」
ぴょーんと飛び跳ねて喜ぶ私にお母さんは「帯結べないよ」と苦笑いを浮べる。
志ようちゃんはお母さんとお父さんの親友で、すごく面白くて優しいお姉さんだ。すごくたまに、そしてこっそりとしか会えない人で、お母さんは「志ようにはとても大切なお勤めがあるからよ」と言っていた。
志ようちゃんのお家はとても広くてお庭はいい匂いがして、遊びに行くといつも美味しいお菓子を出してくれる。白いお兄さんは少し怖いけど、お母さんがいつもよりも楽しそうな顔をするから、私も志ようちゃんのおうちが好きだった。
志ようちゃんのおうちは凄く遠い。たくさんあるかなければいけない。車で行けばいいのにと文句を言うと、お母さんは「一度やったら凄く怒られたのよねぇ」とほっぺたを抑えていた。
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そしていつの間にか眠ってしまって、気が付けば志ようちゃんのおうちに着いているのだ。
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今日も後ろから驚かそうとして飛び付いたけれど、少しもびっくりする素振りを見せずに「いらっしゃい巫寿」と志ようちゃんは笑った。
あれ?と首を傾げる。
いつもならぎゅうっと抱きしめてくれる志ようちゃんが、今日はしてくれなかった。
遅れてやってきたお母さんを見ると一瞬泣きそうな顔をして、パッと笑う。
「巫寿、お母さんと少しお話することがあるからお庭で遊んでて。台所の戸棚にクッキーが置いてあるから、それを持って行っていいよ」
私は志ようちゃんが作ってくれるお菓子が大好きで、特にチョコチップがザクザク入った手作りクッキーが大好物だった。まんまと食べ物に釣られてスキップで台所へ向かい、戸棚から袋詰めされたクッキーを見つけ出すと、これまたスキップで庭に出た。
志ようちゃんのおうちの庭には背の低い梅の木が沢山植えてある。けれど梅の木の高さじゃ木登りをしても楽しくなくて、いつもいちばん大きな楠に登った。赤く色付いた葉っぱがとても綺麗だった。
幹に近い太い枝に腰を下ろすと、袖に入れていたクッキーを取り出しいただきますと手を合わせる。
志ようちゃんのクッキーはいつも変な形だ。この前はアリクイの形でその前はバクの形だと言っていた。今日のクッキーもよく分からない形をしているけれど四本足なので多分動物だ。変な形でも味はピカイチ。
美味しい~と頬に手を当てて、最近お母さんに教えてもらった歌を歌う。
「お星さん昇った 遊びましょ 妖狐コンコン こんばんは」
志ようちゃんとお母さんはなんのお話をしているんだろう。
「お月さん沈んだ また明晩 提灯小僧と はよ帰ろ」
志ようちゃん、ちょっと元気がないように見えたな。
「お日さん照った ねんねこりん 目目連の こもりうた────つまんなーい」
歌い終わると同時に唇を尖らせ伸びをする。足をバタバタと振って履いていた草履を地面に落としたその瞬間。
「わ、ビックリした。どこの子? どうやって入ってきたの? 駄目だよ、御神木さまに登っちゃ。ほら降りておいで」
足元からそんな声がして見下ろす。緑色の袴を履いたお兄さんが、目を丸くしてこちらを見上げていた。
ほら、と脇に手を差し込まれ抱き上げられた。落とした草履を拾ったお兄さんは私にそれを履かせて土の上に下ろした。
「君お名前は? いくつ? お父さんかお母さんは近くにいる?」
お母さんや志ようちゃんからも、この木には登ってはいけないと前々から言われていた。登っているのが見つかって怒られると思った私は、きゅっと身を縮めて答える。
「しいなみこと、みっつ……おかあさんときたの」
お名前ちゃんと言えて偉いね、お兄さんはそう笑ってぐりぐりと私の頭を撫でた。怒られなかったことにほっと息を吐く。
私の手を握って歩き出したお兄さんを見上げた。志ようちゃんのお家で白いお兄さん以外に男の人と会うのは初めてだった。
「どうして緑色なの?」
お兄さんの袴を指さして首を傾げる。
「神修の学生だからだよ。これは制服」
「セイフク?」
「そ。制服」
それが何を意味するのは分からなかったけれど、わかった振りをして「ふーん」と答える。お兄さんに手を引かれてキシキシ音を立てる廊下を歩いた。
「お兄さんだれ?」
「俺は神々廻芽だよ。宮さまのところでお勉強してるんだ。ミコトちゃんのお母さんも宮さまに会いに来たの?」
みやさま?と首を傾げる。
ここは志ようちゃんのお家だ。志ようちゃんのお家には志ようちゃんと白いお兄さんしかいない。
「お母さんは、しようちゃんに会いに来たんだよ」
「なるほど。君のお母さんが、審神者さまがよくお話されていた泉ちゃんか」
お兄さんは納得したようにひとつ頷いた。志ようちゃんの部屋が見えた。障子はすこしだけ開きっぱなしになっていた。声をかける前にそっと覗き込む。
私がお母さんにひざ枕してもらっている時みたいに、志ようちゃんがお母さんさんのひざに顔を伏せていた。志ようちゃんの肩が震えている。
志ようちゃん、泣いてるの……?
「泉ちゃん。ごめんなさい。ごめんなさい、私はどうしたら」
大人の人が泣いているのは初めて見た。驚きと困惑でお兄さんを見上げる。お兄さんは真剣な顔で部屋の中を覗き込んでいた。
「志よう、私を見て。大丈夫だから私に話して」
「私を嫌いにならないで。どうか私を許して」
お母さんは困ったように志ようちゃんの背中を撫でた。
「私が名前を付けたから。私があの子に名前なんて付けたから、あの子を縛ってしまったッ……」
「どういうこと? もしかして先見の明で何か見たの?」
「こんなことになるなんて微塵も思ってなかったの……! ああ、どうしたらいい? 私は何てことを。泉ちゃんたちの大切な、私たちの大切な希望を」
巫寿、志ようちゃんが私の名前をつぶやく。泣き腫らした顔でゆっくりとお母さんを見た。
巫寿、わたしの名前。
お母さんとお揃いで、お兄ちゃんとお揃いで、お父さんたちの大切な人がつけてくれた名前。
「私はこの子に、神々に愛され、永遠の祝福がありますように。そういう意味を込めて巫寿と名付けた」
「ええ。知っているわ。貴方がそう教えてくれたもの」
それがいけなかったの。
志ようちゃんは震える声で続けた。
「審神者である私が、かむくらの巫女である私が、巫寿に名前を与えたことがいけなかったの。名前を授けるというのは命を与えること、人生を縛ること。私は巫寿に"巫寿"という呪いをかけたのよ」
お母さんの瞳が揺れる。志ようちゃんはお母さんと繋いだ手をぎゅっと握りしめた。
「巫寿の巫は、かむくらの巫女の巫。巫寿はかむくらの巫女である私の宿命の半分を背負っているわ」
は、とお母さんが息を飲む音がした。
「ここ半年、先見の明で同じ未来をほぼ毎日見ていたの。審神者の装束を着た私が、空亡と相打ちになって死ぬ夢よ」
「うそ……そんな」
お母さんがこぼれ落ちそうなほど目を見開いた。瞳が激しく揺らいでいる。
「でも少し前からね、別の未来も交互に見るよになったの。内容は同じだけれど、そこで死ぬのは私じゃなくて、神修の制服を着た16歳くらいの女の子────大きくなった巫寿だった」
お母さんが手のひらで口を抑えた。
お母さんと志ようちゃんの話は難しい。なんの話をしているのか分からない。けれど私の名前が沢山呼ばれているから、きっと私の話なんだ。
「何百回と同じ未来を見た。きっとこの未来は変えられないんだと思う。神職たちは疲れきっているわ。彼らだけじゃ絶対に空亡を討伐することはできない。トドメを刺すのは間違いなく私か、大きくなった巫寿。そして、トドメを刺した者は相打ちになる。つまり────」
お母さんの瞳から大粒の涙がこぼれ落ちた。いやよ、喉の奥から絞り出た言葉に志ようちゃんは小さく首を振った。
「空亡を倒すには、私か巫寿のどちらかが死ななければならない」
お兄さんが握っていた私の手をするりと解いた。顔を上げるともう既にお兄さんは背を向けて歩き出していた。
廊下が軋んで、部屋の中にいた二人がハッと振り返った。志ようちゃんがくしゃりと顔を歪めて私に手を差し出す。戸惑いながらもその腕に抱かれた。
「巫寿。可愛い巫寿。どうか私を許して。巫寿、大切な子。私たちの希望」
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