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#06.焦り
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修学旅行当日の朝。私たち生徒は最寄り駅構内にあるバスターミナルへ集められていた。既にほとんどのクラスメイトが集まっており、各グループごとに円を成しては賑わいを見せていた。
今日から三泊、伊咲とホテルで二人きり……。先日から脳裏を過るのはそればかり。もし間違いを犯してしまったらと考えるだけで背筋が凍る。
どうにか二人だけでいる時間を最低限にしなくてはならない。
思考を悶々と巡らせていると、遠くの方に彼女の姿が見えた。真っ赤なキャリーバッグを重そうに引きながらこちらへ駆け寄ってくる。
その姿に喉の奥がきゅうっと締まる感覚を覚え、一気に緊張感が高まった。
彼女は集合の列に紛れると、私に笑顔を向けて言った。
「今日は寝坊しなかったんだね」
寝坊どころか、今日からのことを考えすぎて眠れなかったよ。そう心の中で呟いた。
「寝坊したら置いて行かれる……」
「寒いの嫌いなら、ちょうどいいんじゃない?」
「嫌だよ、伊咲との初旅行なのに!」
彼女の言葉に、つい反射的に口走ってしまった。彼女はその言葉をしっかりと耳にして驚いたように目を丸くさせている。
しまった、と思っても、もう遅い。次第に彼女が口を開いた。
「理解していないようだから一応確認するけど、修学旅行ですよ」
その瞳は真剣そのもので、肩の力ががくんと抜けた。
「いや、はい、分かってます……」
「よかった、頭おかしくなったのかと思った!」
言うと彼女は心底楽しそうにけらけらと笑い始めた。私が思っているほど彼女は気にしていないようだった。
どうか羽目を外さないようにと心中で深く決心し、ようやく現れた大型バスに乗り込んだ。
車内では二人して騒ぎ立て、必死で話題を探した。そうでもしなければ肩が触れてしまいそうな距離に彼女が居るということを意識しすぎてしまいそうだった。
どうかこの胸の高鳴りが彼女に伝わってしまわないようにと願いながら、窓の外の景色に目を輝かせる彼女の背中を見つめていた。
修学旅行当日の朝。私たち生徒は最寄り駅構内にあるバスターミナルへ集められていた。既にほとんどのクラスメイトが集まっており、各グループごとに円を成しては賑わいを見せていた。
今日から三泊、伊咲とホテルで二人きり……。先日から脳裏を過るのはそればかり。もし間違いを犯してしまったらと考えるだけで背筋が凍る。
どうにか二人だけでいる時間を最低限にしなくてはならない。
思考を悶々と巡らせていると、遠くの方に彼女の姿が見えた。真っ赤なキャリーバッグを重そうに引きながらこちらへ駆け寄ってくる。
その姿に喉の奥がきゅうっと締まる感覚を覚え、一気に緊張感が高まった。
彼女は集合の列に紛れると、私に笑顔を向けて言った。
「今日は寝坊しなかったんだね」
寝坊どころか、今日からのことを考えすぎて眠れなかったよ。そう心の中で呟いた。
「寝坊したら置いて行かれる……」
「寒いの嫌いなら、ちょうどいいんじゃない?」
「嫌だよ、伊咲との初旅行なのに!」
彼女の言葉に、つい反射的に口走ってしまった。彼女はその言葉をしっかりと耳にして驚いたように目を丸くさせている。
しまった、と思っても、もう遅い。次第に彼女が口を開いた。
「理解していないようだから一応確認するけど、修学旅行ですよ」
その瞳は真剣そのもので、肩の力ががくんと抜けた。
「いや、はい、分かってます……」
「よかった、頭おかしくなったのかと思った!」
言うと彼女は心底楽しそうにけらけらと笑い始めた。私が思っているほど彼女は気にしていないようだった。
どうか羽目を外さないようにと心中で深く決心し、ようやく現れた大型バスに乗り込んだ。
車内では二人して騒ぎ立て、必死で話題を探した。そうでもしなければ肩が触れてしまいそうな距離に彼女が居るということを意識しすぎてしまいそうだった。
どうかこの胸の高鳴りが彼女に伝わってしまわないようにと願いながら、窓の外の景色に目を輝かせる彼女の背中を見つめていた。
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