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#09.終止符
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二人の背中を遠くから眺めていた。真剣な眼差しの二人から目を反らすことが出来ない。僕には見せることのない親友のその表情に、嫉妬や怒りが込み上げた。
春樹が弾かれたようにこちらを振り返ると、彼女に一言残し去っていった。彼が彼女に背を向けたその時、彼の瞳に影が差したのを僕は見逃さなかった。
僕は親友の隣へ駆け寄ると、出来る限り平静を装って声を掛けた。
「何の話してたの?」
彼女は僕と目を合わせることも無く、秘密と呟き、そのまま俯いてしまった。
思わず涙が流れてしまいそうなほどに、僕の気持ちは揺さぶられていた。こんなことになるのなら好きになんてならなければと、何度この気持ちを呪ったことだろう。
いっそ彼女のことなど忘れてしまおう、この気持ちは恋ではないのだと言い聞かせることで僕自身の感情ごと、どこかへ捨て去ろうとした。時間が経てばこの想いも薄れ、また他の誰かを想うことが出来る日が来るはずだ。全てを捨てて、全てを忘れてゼロに戻ろう。僕は独りでも、大丈夫だ。
心が音を立てて崩れていくのが分かった。僕の感情は宛てもなく宙を舞っているようだった。空っぽになった心を埋めるかのように、いつも以上に饒舌に、そして陽気に話をした。
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二人の背中を遠くから眺めていた。真剣な眼差しの二人から目を反らすことが出来ない。僕には見せることのない親友のその表情に、嫉妬や怒りが込み上げた。
春樹が弾かれたようにこちらを振り返ると、彼女に一言残し去っていった。彼が彼女に背を向けたその時、彼の瞳に影が差したのを僕は見逃さなかった。
僕は親友の隣へ駆け寄ると、出来る限り平静を装って声を掛けた。
「何の話してたの?」
彼女は僕と目を合わせることも無く、秘密と呟き、そのまま俯いてしまった。
思わず涙が流れてしまいそうなほどに、僕の気持ちは揺さぶられていた。こんなことになるのなら好きになんてならなければと、何度この気持ちを呪ったことだろう。
いっそ彼女のことなど忘れてしまおう、この気持ちは恋ではないのだと言い聞かせることで僕自身の感情ごと、どこかへ捨て去ろうとした。時間が経てばこの想いも薄れ、また他の誰かを想うことが出来る日が来るはずだ。全てを捨てて、全てを忘れてゼロに戻ろう。僕は独りでも、大丈夫だ。
心が音を立てて崩れていくのが分かった。僕の感情は宛てもなく宙を舞っているようだった。空っぽになった心を埋めるかのように、いつも以上に饒舌に、そして陽気に話をした。
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ps,無理はなさらないでくださいね(*´ω`*)個人的にとても好きなお話でした。ご執筆ありがとうございました。
ありがとうございます!
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また続編も考えているので、そちらも楽しみにして頂ければ幸いです。
ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。
完結まであと少しの間ですがお付き合いください。
コメント失礼します、綺麗な文章に惹かれました。これからも更新楽しみにしています。
ありがとうございます!