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32.罪悪感
しおりを挟む───学園の庭園。
休日の学園は静かで、庭園にいる僕らがまるで世界から取り残されているような、そんな穏やかな日差しの中。
僕は促されて座ったベンチで、そっと足元に視線を落とした。
隣には同じベンチに座っている王子がいる。
「……命令だったとはいえ、僕は……殿下を陥れようとしていました。
どれだけ詫びても、償えない気がして……」
罪の意識が胸に刺さっている。
あの時、レオン王子が何も言わず、ただ「お前の幸せが1番大事」と言い切ってくれたのが、かえって苦しかった。
「……レオン殿下。僕を、許さなくてもいいです…」
僕は自嘲気味に小さく笑った。
その瞬間、ふわりと腕が伸びてきて、僕の両脇に手を入れるとそのまま持ち上げられた。
何が起きたのかとびっくりしている間に、王子の膝の上に向かい合う形で座らされる。
そして身体を優しく、けれど逃さぬ力で抱きしめられた。
「……許さないよ」
レオン王子の声は、低く、耳元に触れる距離で囁かれる。
僕の肩がビクリと震える。やっぱり、と思った瞬間──
「許さないのは、それを理由に俺から離れることだ。
罪悪感とか、責任とか──そんなものを盾にして、俺から逃げようとしたら、俺はきっと、ずっと君を縛るよ」
そう言いながら、ぎゅっと抱きしめている力を強めて拘束を強くする。
「どんな理由があっても、ノエルの心は最終的に俺を選んでくれた。
最後に俺を信じて、俺のそばにいることを選んだ。それが、全部だ」
その声には、揺るぎのない執着と、深く底なしの愛情が宿っていた。
「……レオン殿下……でも、僕は……」
「黙って」
唇が重なる。ふいに奪われた熱に、ノエルの瞳が大きく見開かれる。
「っ……」
「ねえ、分かってる? 俺はノエルを助けたかったんじゃない。君を手に入れたかったんだ」
王子の手が僕の頬に触れ、指先が熱をもって撫でる。
その目はまっすぐで、逸らせない。射抜くように見てくるその視線に、僕の体が硬直する。
「俺に悪いと想って離れるくらいなら、もっと俺を信じて。俺のものでいるって、決めて」
「僕……は……」
「──ほら、目を逸らさないで。かわいいね、ノエル。俺だけの、ノエル」
その声が耳の奥に残って、逃げ場なんて最初からなかったんだと悟る。
胸の奥がきゅうっと熱くなる。
腕の中に閉じ込められて、逃がす気のない独占欲に抱きしめられて。
なぜかそれに安心しちゃってるのだから、僕も王子から離れないという覚悟を持たないといけないな。
王子の膝の上でそう決意して。
おそるおそる自分からも背中に腕を回すと、王子は嬉しそうな雰囲気を全開にさらにギュッと抱きしめてきた。
「さ、部屋に行こう。このままだとここでノエルを襲っちゃいそう」
「……っ」
王子の言葉で一瞬で赤くなる顔。
僕は小さく頷くのが精一杯だった。
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