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第9章 へつらう父の哀れな姿 ーヨースチン伯爵領ー
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そこは王都から離れた人通りの少ない裏街道だった。一人の少年が分かれ道に立ち止まり、どちらに道を行くべきかを迷っていた。彼ははヨースチン伯爵領に抜ける道を探しているようだった。
「お困りですかな?」その少年の後ろを歩いていた老人が尋ねた。その老人は手入れされていない白髪と白いひげを伸ばしていた。
「はい。ヨースチン伯爵領への道はこちらかと思いまして。」少年は老人の方に向き直った。彼はしっかりした態度できちんとした身なりをしており、その様子から役人の子弟であるように思われた。
「それならこの道でよいと思います。私もそこに行くのです。あなたはヨースチン伯爵領に何かご用があるのですか?」
「はい。父がいるのです。」
「ほう、お父上が。お父上は伯爵様の家中の方ですか?」
「はい。父はジャック ルーセントという伯爵家の家臣です。私はハンスと申します。ご老人も伯爵領にご用なのですか?」少年は尋ねた。
「これは申し遅れました。私はライリーという旅の方術師です。気の向くままに旅をしております。実は昔、伯爵領に行ったことがあって、そこに古い知り合いがいましてな。一度訪ねようと思っていまして。」老人は答えた。
「そうですか。私はずっと王都にいましたのでここは初めてです。しかし道がなかなかわかりにくくて迷っていました。」ハンスは言った。
「それならともに参りましょう。少しなら道を覚えております。」老人は言った。
「それは助かります。道に迷ったらどうしようかと思っていたところです。」ハンスはほっとして言った。
ハンスと老人はヨースチン伯爵領への道を進んでいた。その道すがら、
「ヨースチン伯爵領はどのようなところですか?」とハンスが老人に尋ねた。
「緑豊かでのどかな光景が広がる、空気もすがすがしくてなかなかよいところじゃった。なにより村人たちは幸せそうに暮らしていたのを覚えている。」老人が答えた。
「そうなのですか。それは楽しみです。父からは仕送りと簡単な手紙しか来ないものですから。」
「お父上はどんなお仕事をされているのですか?」老人が尋ねた。
「詳しくはわかりませんが、伯爵様付きの仕事と聞いています。きっと伯爵様の警護を任されているのだと思います。」ハンスは答えた。
「それは、それは。お父上は御立派な方なのですな。」老人は言った。
「はい。小さい頃に母を失くした私は、物心つく前から王都の親族に預けられていたのでよくは知らないのです。しかし周りの方がおっしゃるのには剣術に優れ、学識があり、胆力があると聞いております。」ハンスは言った。その言葉には父を誇りに思う気持ちが見えていた。
「それではお会いになるのが楽しみですね。」老人が言った。
「ええ。」ハンスは微笑んだ。
「お困りですかな?」その少年の後ろを歩いていた老人が尋ねた。その老人は手入れされていない白髪と白いひげを伸ばしていた。
「はい。ヨースチン伯爵領への道はこちらかと思いまして。」少年は老人の方に向き直った。彼はしっかりした態度できちんとした身なりをしており、その様子から役人の子弟であるように思われた。
「それならこの道でよいと思います。私もそこに行くのです。あなたはヨースチン伯爵領に何かご用があるのですか?」
「はい。父がいるのです。」
「ほう、お父上が。お父上は伯爵様の家中の方ですか?」
「はい。父はジャック ルーセントという伯爵家の家臣です。私はハンスと申します。ご老人も伯爵領にご用なのですか?」少年は尋ねた。
「これは申し遅れました。私はライリーという旅の方術師です。気の向くままに旅をしております。実は昔、伯爵領に行ったことがあって、そこに古い知り合いがいましてな。一度訪ねようと思っていまして。」老人は答えた。
「そうですか。私はずっと王都にいましたのでここは初めてです。しかし道がなかなかわかりにくくて迷っていました。」ハンスは言った。
「それならともに参りましょう。少しなら道を覚えております。」老人は言った。
「それは助かります。道に迷ったらどうしようかと思っていたところです。」ハンスはほっとして言った。
ハンスと老人はヨースチン伯爵領への道を進んでいた。その道すがら、
「ヨースチン伯爵領はどのようなところですか?」とハンスが老人に尋ねた。
「緑豊かでのどかな光景が広がる、空気もすがすがしくてなかなかよいところじゃった。なにより村人たちは幸せそうに暮らしていたのを覚えている。」老人が答えた。
「そうなのですか。それは楽しみです。父からは仕送りと簡単な手紙しか来ないものですから。」
「お父上はどんなお仕事をされているのですか?」老人が尋ねた。
「詳しくはわかりませんが、伯爵様付きの仕事と聞いています。きっと伯爵様の警護を任されているのだと思います。」ハンスは答えた。
「それは、それは。お父上は御立派な方なのですな。」老人は言った。
「はい。小さい頃に母を失くした私は、物心つく前から王都の親族に預けられていたのでよくは知らないのです。しかし周りの方がおっしゃるのには剣術に優れ、学識があり、胆力があると聞いております。」ハンスは言った。その言葉には父を誇りに思う気持ちが見えていた。
「それではお会いになるのが楽しみですね。」老人が言った。
「ええ。」ハンスは微笑んだ。
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