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第9章 へつらう父の哀れな姿 ーヨースチン伯爵領ー
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次の日、ハンスは外に出て山々をぼうっと見ていた。家にいる父は毅然として立派に見えたが、外で伯爵にへつらうようにしていた父を好きにはなれなかった。そんなことならこの地に来ずに王都にいて、理想の父の姿を追っていた方が幸せのように思えていた。かといって王都の親類のもとに戻るのはいやだった。父の助けとして働きに行くと言った手前、すぐに帰るわけにいかなかった。
(私はどうしたらいいのか・・・)ハンスは草の上に寝そべった。そこに
「どうしましたか?」昨日の老人が声をかけた。
「これは。昨日はお恥ずかしいところをお見せしました。」ハンスはすぐに身を起こした。
「お父上のことを考えておられたのかな?」老人が尋ねた。
「はい。父のことが分からないのです。一体、父はどういう人なのか・・・」ハンスは顔を下に向けた。
「人というものはそう簡単にはわからぬものです。しかし時間をかけるとその人の姿が見えてきます。きっとお父上はあなたが思っていたように立派な方と思いますよ。」老人は優しく言った。
「そうでしょうか・・・」ハンスはため息をついて言った。
ジャックはマクライの屋敷に急ぎ呼ばれていた。そのただならぬ様子にジャックは何か大きなことがあったと感じていた。
「ジャック。伯爵様の御様子はどうだ?」マクライはいきなり訊いてきた。
「行いは改まっておりませぬ。いやそれどころか、村人への乱暴はひどくなる一方です。御諫めしてもお聞き届けになりませぬ。なんとか村人たちに被害が及ばぬようにとは思っておりますが・・・」ジャックは言った。
「そうか。それはまずい。」マクライは苦悩の表情を見せた。その様子がやはりいつもと違うと感じたジャックは
「いかがいたしました?何かありましたな?」と尋ねた。
「実はさる高貴な方がこの地に見えられている。」マクライは声を潜めて言った。
「それは?」
「ハークレイ法師様じゃ。」マクライは辺りに人がいないのを確認しながら言った。
「えっ!ハークレイ法師様が!まさか・・・。」ジャックは我が耳を疑った。
「驚くのも無理はない。これは本当だ。昨日、我が屋敷に見えられた。」
「ならばもし伯爵様の行状が知れると・・・」
「ああ、そうだ。まずいことに法師様はもうご存じだ。もし法師様から王様に伯爵様の行状が耳に入れば、この由緒ある伯爵家はお取り潰しじゃ。それでなくても伯爵様の悪いうわさは外にまで広がっておる。」マクライはため息をついた。
「それでは伯爵家はすぐに取り潰されてしまうのですか!」ジャックの声は大きくなった。
「いや、待て!法師様には今しばし御猶予をいただいた。だがもううかうかしている時間はない。今すぐにでも伯爵様をお諫めして行いを正していただけねば。儂もこの身に代えてもそれをするつもりじゃ。ジャック。お前にもさらに苦労をかけるかもしれぬ。だがこの伯爵家のため頼むぞ。」マクライはジャックに頭を下げた。
「何をおっしゃられますか。この不肖ジャック、伯爵家のためには命を懸ける所存です。」ジャックはきっぱりと言った。
(私はどうしたらいいのか・・・)ハンスは草の上に寝そべった。そこに
「どうしましたか?」昨日の老人が声をかけた。
「これは。昨日はお恥ずかしいところをお見せしました。」ハンスはすぐに身を起こした。
「お父上のことを考えておられたのかな?」老人が尋ねた。
「はい。父のことが分からないのです。一体、父はどういう人なのか・・・」ハンスは顔を下に向けた。
「人というものはそう簡単にはわからぬものです。しかし時間をかけるとその人の姿が見えてきます。きっとお父上はあなたが思っていたように立派な方と思いますよ。」老人は優しく言った。
「そうでしょうか・・・」ハンスはため息をついて言った。
ジャックはマクライの屋敷に急ぎ呼ばれていた。そのただならぬ様子にジャックは何か大きなことがあったと感じていた。
「ジャック。伯爵様の御様子はどうだ?」マクライはいきなり訊いてきた。
「行いは改まっておりませぬ。いやそれどころか、村人への乱暴はひどくなる一方です。御諫めしてもお聞き届けになりませぬ。なんとか村人たちに被害が及ばぬようにとは思っておりますが・・・」ジャックは言った。
「そうか。それはまずい。」マクライは苦悩の表情を見せた。その様子がやはりいつもと違うと感じたジャックは
「いかがいたしました?何かありましたな?」と尋ねた。
「実はさる高貴な方がこの地に見えられている。」マクライは声を潜めて言った。
「それは?」
「ハークレイ法師様じゃ。」マクライは辺りに人がいないのを確認しながら言った。
「えっ!ハークレイ法師様が!まさか・・・。」ジャックは我が耳を疑った。
「驚くのも無理はない。これは本当だ。昨日、我が屋敷に見えられた。」
「ならばもし伯爵様の行状が知れると・・・」
「ああ、そうだ。まずいことに法師様はもうご存じだ。もし法師様から王様に伯爵様の行状が耳に入れば、この由緒ある伯爵家はお取り潰しじゃ。それでなくても伯爵様の悪いうわさは外にまで広がっておる。」マクライはため息をついた。
「それでは伯爵家はすぐに取り潰されてしまうのですか!」ジャックの声は大きくなった。
「いや、待て!法師様には今しばし御猶予をいただいた。だがもううかうかしている時間はない。今すぐにでも伯爵様をお諫めして行いを正していただけねば。儂もこの身に代えてもそれをするつもりじゃ。ジャック。お前にもさらに苦労をかけるかもしれぬ。だがこの伯爵家のため頼むぞ。」マクライはジャックに頭を下げた。
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