メカラス連邦諸国記

第9章 へつらう父の哀れな姿 ーヨースチン伯爵領ー

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　伯爵の屋敷は異様な雰囲気に包まれていた。側近たちが武装して集まってきていたのだった。それを見たマクライは慌てて屋敷に入って伯爵のもとに行った。
「これはどうしたのですか？」伯爵は尋ねた。伯爵は抜いた剣を見つめながら、
「これから反逆者を成敗しに村に行く。」と答えた。
「何をおっしゃるのですか？相手は領民ですぞ。」マクライが声を上げた。
「私に反抗する者は許せぬ。すべて成敗するのだ。邪魔するならお前を斬るぞ！」伯爵は言った。
「私をお斬りになりたかったら存分になさったらよろしい。しかし村人たちには危害を及ばしませんように。彼らは伯爵様にお願いの儀があるだけです。伯爵様の行いを正していただければそれでいいのです。」マクライは言った。
「なんだと！行いを正せだと！無礼にもほどがあるわ！この伯爵も軽く見られたものよ。ひとつ恐ろしい目に合わせねば奴らは言うことを聞かぬ。」伯爵は言った。
「おやめください。このことが王都の王様の耳に入れば伯爵家のお取り潰しは必定。ここにいる家来はおろか、領民まで路頭に迷うことになります。どうぞお考え直しを。」マクライは両手を地について頭を深く下げた。
「そんなこと知らぬわ！この伯爵家が潰れるなら、いっそのこと、みな道連れに殺してくれるわ！それならあと腐れあるまい。はっはっは。」伯爵は笑った。
「お願いでございます。ぜひお考え直しを！」マクライは伯爵に裾にすがった。
「放せ！邪魔すれば斬るぞ！」伯爵は叫んだ。
「いいえ。放しませぬ。お考え直していただくまでは。」マクライは裾を放そうとしなかった。
「ええい！この無礼者め！」伯爵は持っている剣をマクライの背中に突き立てた。
「ぐおっ！」マクライはそのまま倒れて動かなくなった。
「馬鹿な奴よ。止めねば死なずに済んだものを・・・。皆の者、いくぞ。反逆者を叩きのめすのだ！」伯爵が剣を振り上げた。すると、
「おう！」と側近たちは声を上げた。

「伯爵たちがこっちに来るぞ！武装している！」村に見張りの者の声が響き渡った。
「なんだと！」村人たちは大騒ぎした。
「話が違うじゃねえか！」村人の一人がジャックに向かって声を荒げた。
「そんなはずはない。何かの間違いだ・・・」ジャックは信じられなかった。すぐに道の方に出て見た。すると伯爵が側近たちを従えて馬で近づいてきていた。
「お待ちください！お待ちを！」ジャックは伯爵たちを止めようと両手を広げて前に立ちふさがった。
「ジャックではないか？どうしてお前がここにいる？」伯爵は馬を止めてジャックに声をかけた。
「村人たちに不穏な動きがあったため止めていたのです。静めますので、どうぞここは私にお任せください。」ジャックは言った。
「それはならぬ。この反逆の動きに加担した者は一人残らず成敗してくれる。」伯爵は言った。
「そればかりはご容赦を。村人たちは反逆する気など毛頭ありませぬ。」ジャックはすがるように言った。
「邪魔すればお前も斬るぞ。マクライの様に！」伯爵は剣を抜いてジャックに向けた。
「えっ！マクライ様が・・・」ジャックは絶句した。
「そうだ。無礼にも私に意見をしようとしたからだ。斬って捨ててやったわ！」伯爵が吐き捨てるように言った。その言葉にジャックは気が動転した。
「ではな！」伯爵はそのまま村に入って行った。
「あっ！お待ちを！」ジャックは我に返ってその後を追っていった。
（止めねば。何とかして止めねば・・・）ジャックは焦っていた。