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第9章 へつらう父の哀れな姿 ーヨースチン伯爵領ー
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ジャックとハンスは家に戻ってきた。ジャックは何も言わずに奥の部屋に閉じこもった。ハンスは父に声をかけたかったが、何と言っていいかわからず、そのままソファに座ったままうとうとと寝てしまった。
ジャックは明かりもつけず、ただ目をつぶって心を整えていた。そして剣をすっと持ってそれを引き抜いた。その剣の鈍く放つ光を見て彼の決心は決まった。
「私がやらねばならぬ!許せ、ハンス。」ジャックはそう言うと、剣をしまって瞑想を始めた。
朝になり奥の部屋からジャックが出て来た。その音にハンスは目覚めて立ち上がった。
「父上!」ハンスは声をかけたが、目の前にいる父は何か恐ろしげに見えた。
「これを。」ジャックはハンスに書付を手渡した。
(何だろう?)とハンスがその書付を開けると、それは絶縁状だった。
「親子の縁を切った。これでお前と私は他人だ。」ジャックはそれだけ言うと外に出て行った。
「どうしてでございますか!」ハンスは気が動転しつつも大声で問うてみたが、ジャックは振り返ることもなくそのまま行ってしまった。
(一体、どうして?・・・。そうだ。あのご老人に相談しよう!)ハンスは思い立って、急いで焼かれた村に行ってあの老人を探した。その老人は夜を徹して村人たちの手当てをしていた。
「お願いでございます!」ハンスは息を切らせて言った。そのただならぬ様子に老人は、
「どうされたのかな?こんなに慌てて。」と尋ねた。
「父がこれを。」ハンスは絶縁状の書付を渡した。
「これは・・・」老人は中を見て目を見開いた。
「どうして父が私を・・・」
「これはいかん。お父上は死ぬ気だ。急がねば・・・」老人は立ち上がり、急いで道に向かった。その後をハンスが追っていった。
ジャックは決意を固め、伯爵の屋敷の前に来た。昨夜は酒宴が開かれたらしく、酒の匂いが外まで漂ってきていた。中にいる者はすべて眠りこけているようで屋敷は不気味なほど静まり返っていた。ジャックは何も言わず、屋敷に入って行った。廊下や部屋のあちこちで酒を飲んで側近たちがそのまま寝ていた。ジャックは鋭い目で見渡しながら進んでいった。すると奥の部屋で鎧を着たまま寝入っている伯爵の姿を見つけた。
ジャックは片膝をついて、
「伯爵様!」と声をかけた。すると伯爵は眠そうに目をこすって起き上がった。そして目の前にジャックがいるのに気付いた。
「ジャックではないか!」
「はい。ジャックでございます。」ジャックは頭を下げた。
「何しに来た? お前が邪魔立てしたのは見ていたぞ!」伯爵が言った。
「これまでの不忠をお詫びに参りました。」ジャックは言った。
「不忠だと! ふん! 今さら謝っても遅い。お前が私のいうことを聞かずにとるに足らぬ村人をどれだけかばってきたか、私が知らぬと思うのか! それに昨日のことといい、今度は村人とともに重い罪に問うてやるぞ!」伯爵は吐き捨てるように言った。
「伯爵様。私はどんな仕打ちでも甘んじてお受けいたします。しかし村人たちに何の罪もございませぬ。せめて村人たちには・・・」ジャックは地面にこすりつけんばかりに頭を下げた。
「もう遅いわ! 村人たちといい、マクライといい、お前といい、私を馬鹿にしよって!すべて成敗してやる!」伯爵は声を荒げた。
「私は悲しゅうございます。あの生真面目だった伯爵様がこのように変わられるとは・・・。すべて我らのせいでございます。この上は皆に代わり、私めが後始末をつけさせていただきたく思います。」ジャックはすっと立ち上がった。そして剣に手をかけた。彼の目から一筋の涙が流れていた。
「何をする気じゃ!」その気迫に伯爵は驚いて飛び下がった。
「あの世に行っていただきます。もちろんお一人でとは申しませぬ。私めも後から参ります。」ジャックは剣を抜いた。
「何を申す! 皆の者! 起きろ! ジャックが反逆を起こした!」伯爵は恐怖で震えながら叫んだ。するとその声で側近たちが目を覚ました。目の前でジャックが剣で伯爵を斬りつけようとして見てあわてて起き上がると、すぐに傍らの剣をつかんだ。
「ジャックを斬れ! 斬るのだ!」伯爵が大声を上げた。その声に側近たちが剣を抜いて向かって来た。ジャックは剣を振るって側近たちを斬り倒していった。その圧倒的な強さに側近たちは一人、また一人と倒されていった。
「伯爵様。ご覚悟なされよ。これしか道はないのです。この伯爵家を守るためには。」ジャックは言った。
「いやだ! 絶対に嫌だ!」伯爵は叫ぶと自ら剣を抜いて斬りかかってきた。しかしその剣はすぐにはね飛ばされ、ジャックは伯爵の顔の前に剣を突き付けた。伯爵の顔は恐怖でゆがんだ。
「許してくれ! 私が悪かった。すべてお前の言うとおりにしよう。これからは行いを改める。いや伯爵を弟に譲って引退する。だから命ばかりは・・・頼む! この通りだ!」と両手を地につけて頭をこすりつけんばかりに深く下げた。
「伯爵様・・・」ジャックはその様子にさっきまでの決心が揺らいでいた。
「わかりました。それなら剣を引きましょう。お約束ですぞ。」ジャックは剣をしまった。それを見た伯爵は落ちていた剣を拾うと、それでジャックを串刺しにした。
「ううっ!」ジャックは口から血を吐いた。
「この反逆者め!私がお前の脅しに屈すると思っていたのか! 死ね!」伯爵は恐ろしい形相になって言い放った。
「伯爵! 貴様!」ジャックは伯爵の体を引き離すと、剣を抜いてそのまま、
「ザッ!」と斬り放った。
「ぐわっ!」伯爵は断末魔の叫びをあげてそのまま倒れた。そしてジャックも崩れ落ちるように倒れた。
ジャックは明かりもつけず、ただ目をつぶって心を整えていた。そして剣をすっと持ってそれを引き抜いた。その剣の鈍く放つ光を見て彼の決心は決まった。
「私がやらねばならぬ!許せ、ハンス。」ジャックはそう言うと、剣をしまって瞑想を始めた。
朝になり奥の部屋からジャックが出て来た。その音にハンスは目覚めて立ち上がった。
「父上!」ハンスは声をかけたが、目の前にいる父は何か恐ろしげに見えた。
「これを。」ジャックはハンスに書付を手渡した。
(何だろう?)とハンスがその書付を開けると、それは絶縁状だった。
「親子の縁を切った。これでお前と私は他人だ。」ジャックはそれだけ言うと外に出て行った。
「どうしてでございますか!」ハンスは気が動転しつつも大声で問うてみたが、ジャックは振り返ることもなくそのまま行ってしまった。
(一体、どうして?・・・。そうだ。あのご老人に相談しよう!)ハンスは思い立って、急いで焼かれた村に行ってあの老人を探した。その老人は夜を徹して村人たちの手当てをしていた。
「お願いでございます!」ハンスは息を切らせて言った。そのただならぬ様子に老人は、
「どうされたのかな?こんなに慌てて。」と尋ねた。
「父がこれを。」ハンスは絶縁状の書付を渡した。
「これは・・・」老人は中を見て目を見開いた。
「どうして父が私を・・・」
「これはいかん。お父上は死ぬ気だ。急がねば・・・」老人は立ち上がり、急いで道に向かった。その後をハンスが追っていった。
ジャックは決意を固め、伯爵の屋敷の前に来た。昨夜は酒宴が開かれたらしく、酒の匂いが外まで漂ってきていた。中にいる者はすべて眠りこけているようで屋敷は不気味なほど静まり返っていた。ジャックは何も言わず、屋敷に入って行った。廊下や部屋のあちこちで酒を飲んで側近たちがそのまま寝ていた。ジャックは鋭い目で見渡しながら進んでいった。すると奥の部屋で鎧を着たまま寝入っている伯爵の姿を見つけた。
ジャックは片膝をついて、
「伯爵様!」と声をかけた。すると伯爵は眠そうに目をこすって起き上がった。そして目の前にジャックがいるのに気付いた。
「ジャックではないか!」
「はい。ジャックでございます。」ジャックは頭を下げた。
「何しに来た? お前が邪魔立てしたのは見ていたぞ!」伯爵が言った。
「これまでの不忠をお詫びに参りました。」ジャックは言った。
「不忠だと! ふん! 今さら謝っても遅い。お前が私のいうことを聞かずにとるに足らぬ村人をどれだけかばってきたか、私が知らぬと思うのか! それに昨日のことといい、今度は村人とともに重い罪に問うてやるぞ!」伯爵は吐き捨てるように言った。
「伯爵様。私はどんな仕打ちでも甘んじてお受けいたします。しかし村人たちに何の罪もございませぬ。せめて村人たちには・・・」ジャックは地面にこすりつけんばかりに頭を下げた。
「もう遅いわ! 村人たちといい、マクライといい、お前といい、私を馬鹿にしよって!すべて成敗してやる!」伯爵は声を荒げた。
「私は悲しゅうございます。あの生真面目だった伯爵様がこのように変わられるとは・・・。すべて我らのせいでございます。この上は皆に代わり、私めが後始末をつけさせていただきたく思います。」ジャックはすっと立ち上がった。そして剣に手をかけた。彼の目から一筋の涙が流れていた。
「何をする気じゃ!」その気迫に伯爵は驚いて飛び下がった。
「あの世に行っていただきます。もちろんお一人でとは申しませぬ。私めも後から参ります。」ジャックは剣を抜いた。
「何を申す! 皆の者! 起きろ! ジャックが反逆を起こした!」伯爵は恐怖で震えながら叫んだ。するとその声で側近たちが目を覚ました。目の前でジャックが剣で伯爵を斬りつけようとして見てあわてて起き上がると、すぐに傍らの剣をつかんだ。
「ジャックを斬れ! 斬るのだ!」伯爵が大声を上げた。その声に側近たちが剣を抜いて向かって来た。ジャックは剣を振るって側近たちを斬り倒していった。その圧倒的な強さに側近たちは一人、また一人と倒されていった。
「伯爵様。ご覚悟なされよ。これしか道はないのです。この伯爵家を守るためには。」ジャックは言った。
「いやだ! 絶対に嫌だ!」伯爵は叫ぶと自ら剣を抜いて斬りかかってきた。しかしその剣はすぐにはね飛ばされ、ジャックは伯爵の顔の前に剣を突き付けた。伯爵の顔は恐怖でゆがんだ。
「許してくれ! 私が悪かった。すべてお前の言うとおりにしよう。これからは行いを改める。いや伯爵を弟に譲って引退する。だから命ばかりは・・・頼む! この通りだ!」と両手を地につけて頭をこすりつけんばかりに深く下げた。
「伯爵様・・・」ジャックはその様子にさっきまでの決心が揺らいでいた。
「わかりました。それなら剣を引きましょう。お約束ですぞ。」ジャックは剣をしまった。それを見た伯爵は落ちていた剣を拾うと、それでジャックを串刺しにした。
「ううっ!」ジャックは口から血を吐いた。
「この反逆者め!私がお前の脅しに屈すると思っていたのか! 死ね!」伯爵は恐ろしい形相になって言い放った。
「伯爵! 貴様!」ジャックは伯爵の体を引き離すと、剣を抜いてそのまま、
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