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第10章 王様に似た男 ーアール国ー
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アール国は森に囲まれた自然豊かな国である。その国の王、トーネルは在位15年以上になる。彼の敷いた善政により国は豊かになり、領民から慕われていた。だが一つ困ったことがあった。トーネル王には跡継ぎの王子がいなかった。それに不可思議なことに若くして妃を失った後、次の妃を迎えようとしなかった。家来たちは皆、それを気にしていた。
「王様。真に僭越ではございますが、次の王をお決めになりませんと。」大臣のダジャルは申し上げた。
「うむ。それは考えておる。」トーネル王は答えた。王冠から垂れ下がった目隠しでその表情は読みとれなかった。
「それはジール公でございますな。」ダジャル大臣はトーネル王の従弟の名前を出した。王の近い親族で適格者はもうジール公しか見当たらず、家来たちもそう思っていた。
「いや、他の者を考えておる。」トーネル王は意外なことを言った。その言葉はダジャル大臣にとって思いもよらないものだった。彼も王を継ぐのはジール公だと思っていた。だから自分の娘を与え、婿としたのだった。
「それでは一体、誰を?高名なハークレイ法師様に推挙していただいて、他の国から迎えられるつもりでしょうか?恐れながらそれでは皆、承服しかねます。我が王家は初代の王より武勇の誉れ高く、その血統にて領民の尊敬を得ております。ジール公しかないと考えております。」ダジャル大臣は言った。
「ジールでは心もとない。私に考えがある。この話はしばし待て。」トーネル王はそう言った。そう言われればダジャル大臣は口をつぐむしかなかった。しかし彼は不服だった。
(確かにジール公は頼りなく、トーネル王の様に国を率いていけないだろう。しかしそれがねらい目だ。自分が後見人となればこの国を牛耳っていけるだろう。それにはハークレイ法師のような影響力の強い方が関われないようにしなければ。)と思っていた。彼には密かな野望があった。
晴れた次の日、老人はヤコブの3人の息子を連れて森の修練場に向かった。その道々、彼らに昨夜の話の続きに、方術のことについて話していた。それは彼らにとって新鮮で興味深い話であった。
やがて修練場についた。それはこの森の滝だった。
「ここで滝に打たれて、世間を忘れて邪念を捨てるのです。それで本当の道が見えてくる。」老人は言った。
「まだ水は冷たいのですが、大丈夫なのでございますか?」モーリが尋ねた。
「ああ、大丈夫だ。それで心が鍛えられる。それでは行ってくる。」老人は言った。
「私も、私もご一緒してもいいでしょうか?」ジャストが聞いた。
「ああ、いいですとも。」老人はうなずいた。老人はジャストが何か大きな運命を担っているように感じていた。それが何であるかはまだはっきりとはわからなかったが・・・。
老人とジャストは裸になって滝に打たれた。老人は静かに目をつむりそこで瞑想に入った。ジャストはその水の冷たさになかなか心を集中できなかったが、そのうちに少しずつ心を安定させていった。
「王様。真に僭越ではございますが、次の王をお決めになりませんと。」大臣のダジャルは申し上げた。
「うむ。それは考えておる。」トーネル王は答えた。王冠から垂れ下がった目隠しでその表情は読みとれなかった。
「それはジール公でございますな。」ダジャル大臣はトーネル王の従弟の名前を出した。王の近い親族で適格者はもうジール公しか見当たらず、家来たちもそう思っていた。
「いや、他の者を考えておる。」トーネル王は意外なことを言った。その言葉はダジャル大臣にとって思いもよらないものだった。彼も王を継ぐのはジール公だと思っていた。だから自分の娘を与え、婿としたのだった。
「それでは一体、誰を?高名なハークレイ法師様に推挙していただいて、他の国から迎えられるつもりでしょうか?恐れながらそれでは皆、承服しかねます。我が王家は初代の王より武勇の誉れ高く、その血統にて領民の尊敬を得ております。ジール公しかないと考えております。」ダジャル大臣は言った。
「ジールでは心もとない。私に考えがある。この話はしばし待て。」トーネル王はそう言った。そう言われればダジャル大臣は口をつぐむしかなかった。しかし彼は不服だった。
(確かにジール公は頼りなく、トーネル王の様に国を率いていけないだろう。しかしそれがねらい目だ。自分が後見人となればこの国を牛耳っていけるだろう。それにはハークレイ法師のような影響力の強い方が関われないようにしなければ。)と思っていた。彼には密かな野望があった。
晴れた次の日、老人はヤコブの3人の息子を連れて森の修練場に向かった。その道々、彼らに昨夜の話の続きに、方術のことについて話していた。それは彼らにとって新鮮で興味深い話であった。
やがて修練場についた。それはこの森の滝だった。
「ここで滝に打たれて、世間を忘れて邪念を捨てるのです。それで本当の道が見えてくる。」老人は言った。
「まだ水は冷たいのですが、大丈夫なのでございますか?」モーリが尋ねた。
「ああ、大丈夫だ。それで心が鍛えられる。それでは行ってくる。」老人は言った。
「私も、私もご一緒してもいいでしょうか?」ジャストが聞いた。
「ああ、いいですとも。」老人はうなずいた。老人はジャストが何か大きな運命を担っているように感じていた。それが何であるかはまだはっきりとはわからなかったが・・・。
老人とジャストは裸になって滝に打たれた。老人は静かに目をつむりそこで瞑想に入った。ジャストはその水の冷たさになかなか心を集中できなかったが、そのうちに少しずつ心を安定させていった。
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本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
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