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第5章 ニールの港
火に包まれる
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王宮ではワーロン将軍が執務室で地図を眺めていた。リーカーの足取りはいまだ不明だが、ワーロン将軍には確信があった。リーカーはニールの港にいると・・・。
「もうマークスはニールの港に着いたはずだ」
マークスならリーカーを追い詰められるはず・・・その確信もあった。そう考えていると急に執務室の一方の壁が光に包まれた。
「これは!」
ワーロン将軍はすぐにその場で片膝をついて頭を下げた。すると人の姿が現れた。
「どうなっておる? リーカーはニールの港におるぞ」
ワーロン将軍は顔を上げて答えた。
「はっ。お教えいただいた通りにマークスを向かわせております」
「私の手の者も仕掛けておる。だが念には念だ。リーカーの死を確認するまで手を抜くな。奴はハイスという者のところにおるぞ」
この人影は何もかも見通しているようであった。ニールの港どころか、ハイスまでつかんでいた。そこまでわかれば、マークスはリーカーを探すのに苦労はしないはずだ・・・ワーロン将軍はそう思った。
「はっ。早速、マークスに伝えます」
「よい知らせを待っておるぞ!」
その人影はそう言って消えていった。
「これでリーカーは終わりよ。ふふふ」
ワーロン将軍は立ち上がって不気味に笑っていた。
◇◇◇◇
リーカーは貯蔵庫の窓から外を眺めて物思いにふけっていた。
(一体、ワーロン将軍がどうしてエミリーや私を狙っているのか? 何のために?)
それを考えると、企んだのはワーロン将軍だけとは思えなかった。別の黒幕がいるように感じていた。その者が何か大きな企みをもってリーカーたちを追い詰めている・・・そんな気がしていた。そしてもう一つ、リーカーには知りたいことがあった。
(白フクロウで情報を送ってくれたり、気遣ってくれている人は誰なのか?)
それでどれだけ心が助けられて力づけられたことか・・・誰かはわからないが、その白フクロウの伝える言葉からは優しさにあふれていた。
(どなたかは存ぜぬが礼を言う。私たちがどれほど助かったことか・・・)
リーカーは心の中でそう思った。そばにいるエミリーは空中に絵を描いて無邪気に遊んでいた。幸せな日々を送っていた彼女はあの日から地獄に叩き落とされた。今は安全なこの場所でひと時の安らぎを得ている。
「エミリーはこの身に代えても必ず守る!」
リーカーはその決意を新たにしていた。
しばらくして扉が開く音がした。リーカーは一瞬、身構えたが入ってくる相手を見て緊張を解いた。
「おい。腹が減っただろう。食い物を持ってきてやったぜ」
ハイスが両手にパンや果物、焼いた肉を入れた籠をもって入ってきた。
「これはすまんな。」
リーカーは魔法で水や食べ物を出すことはできるがあまりうまいものではないので、エミリーは喜んで笑顔になった。ハイスは籠を2人の前に置いた。
「さあ、食ってくれ!」
「おいしそう!」
エミリーが手を伸ばした。だが、
「よせ!」
とリーカーはその手を押さえた。エミリーは驚いてリーカーの顔を見た。その顔は険しい表情になっていた。敵を前にしたかのように・・・。
「お前、操られているな!」
リーカーにはハイスの目が尋常には見えなかった。うつろで生気を失い、これは魔法にかかっている者の目だった。するとハイスは籠をひっくり返して扉から外に出た。
「待て!」
リーカーが追いかけようとしたが、その扉から港のならず者たちが武器を持って入ってきた。
「お前には恨みはねえが金のためだ! 死んでもらうぜ!」
ならず者たちは武器を振り上げて向かって来た。リーカーは右手を伸ばした。すると剣が飛んできてその手に収まった。
「斬られたくなくば去れ!」
リーカーは大声を上げるが、ならず者たちは襲い掛かってきた。リーカーは剣を振り回し彼らを平打ちにしていった。すると焦げ臭いにおいがして煙が充満してきた。ハイスが貯蔵庫に火をつけたようだった。
(まずい・・・このままでは煙に巻かれてしまう・・・)
リーカーは袖口で口を押えた。その後ろでエミリーは煙で咳き込んでいた。
(魔法で逃げるか・・・)
だがならず者たちが束になって掛かってきているので、エミリーの手を引いて魔法をかける隙がなかった。そのうち火も回ってきた。扉のあたりも火に包まれ逃げ道がなくなっていた。
「おい! 俺たちも殺す気か!」
その頃になってならず者たちも自分たちも危ないことに気付いた。彼らはリーカーを襲うのを止めて逃げ出そうとした。しかし煙に巻かれて倒れる者、火に飛び込んで燃えてしまう者、それは様々だったが、誰一人、そこから逃れることはできなかった。
「***結界***」
リーカーは魔法で防ぐが、それがどれほどもつかわからなかった。火はますます燃え盛っていた。
◇◇◇◇
マークスはワーロン将軍から送られた魔法の黒カラスの情報を手にしていた。そしてハイスの居場所に向かおうとしてた。すると遠くで貯蔵庫が燃えているのを見た。マークスはなぜか、そこに何かがあるように感じていた。それで、馬を止めた。
「火事か。助けが必要であろう」
「そんなことよりリーカーを。早く行かねば逃げるかもしれません」
ミラウスはそう進言したが、マークスは首を横に振った。
「いや、放ってはおけぬ。行くぞ!」
マークスは火事の方に馬を走らせた。ミラウスは肩をすくめながらもその後を魔兵とともに追っていった。
◇◇◇◇
ウイッテはその火事を遠くから見ていた。彼の策略が思っていた以上にうまくいったことに満足していた。
「これならさすがのリーカーも助かるまい。魔法で結界を張ったところであの業火ではそんなに持つまいよ。火が収まるまで静かなところでゆっくり待つか」
そう言ってその場から姿を消した。
◇◇◇◇
魔法にかかっているハイスは燃え盛る貯蔵庫を満足そうに見ていた。すると後ろからマークスが来た。ハイスはゆっくりその方向に顔を向けた。
(ん? 魔法にかかっているな?)
マークスはハイスの目を見てそう思った。マークスはその者がリーカーと関係しているように直感した。
(魔法を解いてやる。もしかしたらリーカーの居場所がわかるかも知れない)
マークスはすぐに呪文を投げかけて魔法を解いた。するとすぐにハイスは正気に戻った。
「お、おれは・・・」
今まで自分が何をしていたか、まるでわからず混乱していた。マークスが強い口調で尋ねた。
「リーカーはどこだ?」
「リーカー・・・あっ。貯蔵庫に・・・・」
ハイスが振り向けば貯蔵庫は燃えていた。そこからは火が見え、煙がもうもうと立ち上っている。
「ああ、燃えている。大変だ!」
ハイスは狼狽していた。
「リーカーは貯蔵庫にいるんだな?」
マークスが念を押すように問うた。
「ええ。でもあんなに火が・・・旦那。魔法が使えるのだったらリーカーを助けてください。奴は俺の親友なんです!」
ハイスはそう答えた。それを聞いてマークスはすぐに貯蔵庫に馬を飛ばした。
(リーカーがいるということは、もしかするとエミリー様も・・・エミリー様だけは助けねばならぬ!)
マークスは必死の思いだった。
◇◇◇◇
リーカーは魔道剣の力も使って結界魔法を続けていたが、激しい火の中で身動きが取れなかった。そしてさらに火はますます燃え盛ってきていた。
(このままであとどれほどもつか・・・脱出する手を考えなければ・・・)
すると結界を張って火を防いだ者が貯蔵庫に入ってきた。
「リーカー! 見つけたぞ!」
それはマークスだった。
「マークス殿。やはりあなたが来たか!」
リーカーはマークスをじっと見据えていた。
「そこを動くな! エミリー様を渡せ!」
マークスはそう言ったが激しい火のため、2人には近づけなかった。リーカーは声を上げた。
「聞いてくれ! 私は妻のアーリーを殺していない。多分、ワーロン将軍の策略だ!」
それは悲痛な叫びだった。だがマークスは態度を変えなかった。
「そんなことは聞いておらぬ。私はエミリー様を無事に王宮にお送りするだけだ。邪魔をするなら貴様を斬る!」
「ワーロン将軍の手が回った王宮にエミリーを一人でやるわけにはいかぬ!」
リーカーは大声で言い返した。
「ならば覚悟せよ! リーカー!」
マークスは剣を抜いたものの、やはり火の勢いが強くて2人にはなかなか近づけなかった。一方、リーカーの方もどうにもならなくなっていた。魔法も限界が近づき、結界が揺らぎ始めた。
「もうマークスはニールの港に着いたはずだ」
マークスならリーカーを追い詰められるはず・・・その確信もあった。そう考えていると急に執務室の一方の壁が光に包まれた。
「これは!」
ワーロン将軍はすぐにその場で片膝をついて頭を下げた。すると人の姿が現れた。
「どうなっておる? リーカーはニールの港におるぞ」
ワーロン将軍は顔を上げて答えた。
「はっ。お教えいただいた通りにマークスを向かわせております」
「私の手の者も仕掛けておる。だが念には念だ。リーカーの死を確認するまで手を抜くな。奴はハイスという者のところにおるぞ」
この人影は何もかも見通しているようであった。ニールの港どころか、ハイスまでつかんでいた。そこまでわかれば、マークスはリーカーを探すのに苦労はしないはずだ・・・ワーロン将軍はそう思った。
「はっ。早速、マークスに伝えます」
「よい知らせを待っておるぞ!」
その人影はそう言って消えていった。
「これでリーカーは終わりよ。ふふふ」
ワーロン将軍は立ち上がって不気味に笑っていた。
◇◇◇◇
リーカーは貯蔵庫の窓から外を眺めて物思いにふけっていた。
(一体、ワーロン将軍がどうしてエミリーや私を狙っているのか? 何のために?)
それを考えると、企んだのはワーロン将軍だけとは思えなかった。別の黒幕がいるように感じていた。その者が何か大きな企みをもってリーカーたちを追い詰めている・・・そんな気がしていた。そしてもう一つ、リーカーには知りたいことがあった。
(白フクロウで情報を送ってくれたり、気遣ってくれている人は誰なのか?)
それでどれだけ心が助けられて力づけられたことか・・・誰かはわからないが、その白フクロウの伝える言葉からは優しさにあふれていた。
(どなたかは存ぜぬが礼を言う。私たちがどれほど助かったことか・・・)
リーカーは心の中でそう思った。そばにいるエミリーは空中に絵を描いて無邪気に遊んでいた。幸せな日々を送っていた彼女はあの日から地獄に叩き落とされた。今は安全なこの場所でひと時の安らぎを得ている。
「エミリーはこの身に代えても必ず守る!」
リーカーはその決意を新たにしていた。
しばらくして扉が開く音がした。リーカーは一瞬、身構えたが入ってくる相手を見て緊張を解いた。
「おい。腹が減っただろう。食い物を持ってきてやったぜ」
ハイスが両手にパンや果物、焼いた肉を入れた籠をもって入ってきた。
「これはすまんな。」
リーカーは魔法で水や食べ物を出すことはできるがあまりうまいものではないので、エミリーは喜んで笑顔になった。ハイスは籠を2人の前に置いた。
「さあ、食ってくれ!」
「おいしそう!」
エミリーが手を伸ばした。だが、
「よせ!」
とリーカーはその手を押さえた。エミリーは驚いてリーカーの顔を見た。その顔は険しい表情になっていた。敵を前にしたかのように・・・。
「お前、操られているな!」
リーカーにはハイスの目が尋常には見えなかった。うつろで生気を失い、これは魔法にかかっている者の目だった。するとハイスは籠をひっくり返して扉から外に出た。
「待て!」
リーカーが追いかけようとしたが、その扉から港のならず者たちが武器を持って入ってきた。
「お前には恨みはねえが金のためだ! 死んでもらうぜ!」
ならず者たちは武器を振り上げて向かって来た。リーカーは右手を伸ばした。すると剣が飛んできてその手に収まった。
「斬られたくなくば去れ!」
リーカーは大声を上げるが、ならず者たちは襲い掛かってきた。リーカーは剣を振り回し彼らを平打ちにしていった。すると焦げ臭いにおいがして煙が充満してきた。ハイスが貯蔵庫に火をつけたようだった。
(まずい・・・このままでは煙に巻かれてしまう・・・)
リーカーは袖口で口を押えた。その後ろでエミリーは煙で咳き込んでいた。
(魔法で逃げるか・・・)
だがならず者たちが束になって掛かってきているので、エミリーの手を引いて魔法をかける隙がなかった。そのうち火も回ってきた。扉のあたりも火に包まれ逃げ道がなくなっていた。
「おい! 俺たちも殺す気か!」
その頃になってならず者たちも自分たちも危ないことに気付いた。彼らはリーカーを襲うのを止めて逃げ出そうとした。しかし煙に巻かれて倒れる者、火に飛び込んで燃えてしまう者、それは様々だったが、誰一人、そこから逃れることはできなかった。
「***結界***」
リーカーは魔法で防ぐが、それがどれほどもつかわからなかった。火はますます燃え盛っていた。
◇◇◇◇
マークスはワーロン将軍から送られた魔法の黒カラスの情報を手にしていた。そしてハイスの居場所に向かおうとしてた。すると遠くで貯蔵庫が燃えているのを見た。マークスはなぜか、そこに何かがあるように感じていた。それで、馬を止めた。
「火事か。助けが必要であろう」
「そんなことよりリーカーを。早く行かねば逃げるかもしれません」
ミラウスはそう進言したが、マークスは首を横に振った。
「いや、放ってはおけぬ。行くぞ!」
マークスは火事の方に馬を走らせた。ミラウスは肩をすくめながらもその後を魔兵とともに追っていった。
◇◇◇◇
ウイッテはその火事を遠くから見ていた。彼の策略が思っていた以上にうまくいったことに満足していた。
「これならさすがのリーカーも助かるまい。魔法で結界を張ったところであの業火ではそんなに持つまいよ。火が収まるまで静かなところでゆっくり待つか」
そう言ってその場から姿を消した。
◇◇◇◇
魔法にかかっているハイスは燃え盛る貯蔵庫を満足そうに見ていた。すると後ろからマークスが来た。ハイスはゆっくりその方向に顔を向けた。
(ん? 魔法にかかっているな?)
マークスはハイスの目を見てそう思った。マークスはその者がリーカーと関係しているように直感した。
(魔法を解いてやる。もしかしたらリーカーの居場所がわかるかも知れない)
マークスはすぐに呪文を投げかけて魔法を解いた。するとすぐにハイスは正気に戻った。
「お、おれは・・・」
今まで自分が何をしていたか、まるでわからず混乱していた。マークスが強い口調で尋ねた。
「リーカーはどこだ?」
「リーカー・・・あっ。貯蔵庫に・・・・」
ハイスが振り向けば貯蔵庫は燃えていた。そこからは火が見え、煙がもうもうと立ち上っている。
「ああ、燃えている。大変だ!」
ハイスは狼狽していた。
「リーカーは貯蔵庫にいるんだな?」
マークスが念を押すように問うた。
「ええ。でもあんなに火が・・・旦那。魔法が使えるのだったらリーカーを助けてください。奴は俺の親友なんです!」
ハイスはそう答えた。それを聞いてマークスはすぐに貯蔵庫に馬を飛ばした。
(リーカーがいるということは、もしかするとエミリー様も・・・エミリー様だけは助けねばならぬ!)
マークスは必死の思いだった。
◇◇◇◇
リーカーは魔道剣の力も使って結界魔法を続けていたが、激しい火の中で身動きが取れなかった。そしてさらに火はますます燃え盛ってきていた。
(このままであとどれほどもつか・・・脱出する手を考えなければ・・・)
すると結界を張って火を防いだ者が貯蔵庫に入ってきた。
「リーカー! 見つけたぞ!」
それはマークスだった。
「マークス殿。やはりあなたが来たか!」
リーカーはマークスをじっと見据えていた。
「そこを動くな! エミリー様を渡せ!」
マークスはそう言ったが激しい火のため、2人には近づけなかった。リーカーは声を上げた。
「聞いてくれ! 私は妻のアーリーを殺していない。多分、ワーロン将軍の策略だ!」
それは悲痛な叫びだった。だがマークスは態度を変えなかった。
「そんなことは聞いておらぬ。私はエミリー様を無事に王宮にお送りするだけだ。邪魔をするなら貴様を斬る!」
「ワーロン将軍の手が回った王宮にエミリーを一人でやるわけにはいかぬ!」
リーカーは大声で言い返した。
「ならば覚悟せよ! リーカー!」
マークスは剣を抜いたものの、やはり火の勢いが強くて2人にはなかなか近づけなかった。一方、リーカーの方もどうにもならなくなっていた。魔法も限界が近づき、結界が揺らぎ始めた。
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