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第8章 真実への道
ヤギ村の怪
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王宮のワーロン将軍に執務室に魔法の黒カラスが戻ってきた。
「マークスがやられただと!」
ザウス隊長が声を上げた。それは彼らにとって思いがけない報告だった。
「マークスめ! 口ほどにもない!」
ワーロン将軍はそう苦々しく言った。
「しかし次の手を考えませんと・・・」
ザウス将軍は地図を見て言った。
「こうなればあいつを呼べ! もしものために王宮に置いておいたが、もうあいつしかおらぬ」
ワーロン将軍が言った。
「はっ!」
ザウス隊長はそう言って執務室から出て行った。
◇◇◇◇
リーカーはエミリーとともに来た道を引き返していた。行く当てはなかったが進まねばどんな者たちが襲ってくるか、わからなかった。しかしその後をつけている者があった。それは魔法使いのウイッテだった。彼はリーカーを倒すことしか生きていく道がなかった。もしそれができなければ、あの方に抹殺されてしまう・・・。巨大火の玉の爆発で怪我を負ったが次第に回復してきており、後は最後の戦いを仕掛けるだけだった。
「リーカーめ!」
つぶやくウイッテは前方に小さな村を見た。確かそこはヤギ村。そこはわずかな者しか住んでいないが力自慢の男たちが多いと聞く・・・ウイッテはそれを思い出し、不気味に笑うと魔法で姿を消した。
◇◇◇◇
サランサはエリザリー女王の世話を続けていた。エミリーの無事な声を聞いてエリザリー女王は日に日に回復していた。ただ困ったことはエミリーの声を移したその白フクロウをエリザリー女王が離したがらないことだった。これでしばらくリーカーと連絡が取れなくなってしまった。だがサランサはリーカーが無事である気がしていた。
「サランサ。アーリーを殺しリーカーに罪を擦り付けたものは誰じゃ?」
エリザリー女王は声を潜めて聞いてきた。元気を取り戻しつつあるエリザリー女王は企てをした者を知りたがった。
「それはわかりません・・・」
サランサはそう言うしかなかった。自分の父の犯した罪を真っ向から女王に告げることはまだためらわれた。ただそんな自分が次第に疎ましくなり、悲しい気分に見舞われていた。
◇◇◇◇
リーカーとエミリーはヤギ村に着いた。そこは不気味なほど静まり返っていた。田畑にも道にも人の姿はなかった。しかしリーカーは人の気配を感じていた。
(誰かいる・・・だが姿を見せぬ・・・どうしてだ?)
リーカーは目を動かして周囲を伺いながら慎重に歩いた。エミリーもその不気味な気配を感じ取っているようでおびえていた。
「バタバタバタ!」
急に鳥が飛び立った。それを合図に家にいた村の者たちがリーカーの前に飛び出した。彼らは鍬や鋤、鎌などを振り上げていた。そしてその目には邪悪な光が宿っていた。
(魔法で操られている! しかもこんなに大勢・・・)
リーカーはとっさに思った。何者かがリーカーを襲うように仕向けたのだろう。
村人たちはリーカーとエミリーに襲い掛かってきた。リーカーはとっさに剣を抜き、村人たちを平打ちして倒していった。しかし魔法にかかっているため取れても次々に起き上がってきた。
「まずい・・・これではきりがない。村人を斬るわけにはいかぬ・・・」
リーカーは戦いながらエミリーとともにその場から抜け出した。その後を村人たちが追って行った。
その光景をウイッテは遠くから見ていた。
「村人たちはすべて儂の魔法にかかっておる。死ぬまで奴らを追い詰めるだろう。ふふふ」
不気味な笑いを浮かべていた。
◇◇◇◇
王宮の門に作物を積んだ荷車が農夫たちによって運ばれてきていた。
「よし、通れ!」
門番に言われて荷車は門をくぐり、蔵のある裏に向かった。しかし一人の農夫がそこから離れて建物の陰に身を隠した。
「気づかれておらぬな」
それはミラウスだった。マークスに言われて王宮に探りに来たのだった。まずは力になってくれそうなサランサを探さねばならなかった。ミラウスは周囲を見渡して、静かに中に入って行った。サランサがいるところまでは距離があり、衛兵の警備も厳重なはずだった。
ミラウスはなんとか魔法で姿をくらましながら王宮の内部に近づいていた。廊下を行き来する者は多かったが気づかれなかった。
(これならサランサ様にお会いできるだろう)
だがその油断がいけなかった。急に開いた扉にぶつかり、魔法が解けて農夫姿のミラウスが姿を現した。
「きゃあ!」
そばにいた女官が声を上げた。それを聞きつけて衛兵が駆け寄ってきた。
「何だ! 貴様は!」
(まずい! ここで正体がばれては元も子もない・・・)
ミラウスは跪いて頭を床につけた。
「お許しください。作物を収めに来た農夫でございます。初めて来たもので迷ってしまって・・・」
「怪しい奴! ちょっと来い!」
衛兵はミラウスの手を引っ張ろうとしたが、ミラウスは頭をさげたまま、
「お許しください・・・」
と言い続けた。その騒ぎに人が集まってきた。
「どうしたのです?」
やさしい声が聞こえた。
「サランサ様、侵入者です」
衛兵はそう答えた。
(しめた!)
ミラウスはサランサの方に向かって、
「お許しください。ベーク村の者です。サランサ様」
と言うと顔を上げて目配せした。それを察してサランサは言った
「ベーク村の者なら用があります。この者は私の部屋に連れて行きます」
「よろしいので?」
衛兵が聞いた。
「ええ、大丈夫です。さあ、来るのです」
サランサが言うとミラウスは恐縮したふりをしながらその後をついて行った。
◇◇◇◇
リーカーはエミリーとともに村人から逃げていた。
「いつまでも逃げ切れることはできぬ・・・」
リーカーは決心して立ち止まって剣を構えた。そして呪文を唱えていた。村人たちはその周りを取り囲み、一斉に襲い掛かった。それに押し潰されるようにリーカーとエミリーの姿は消えた。多分その中で無残な姿になっていることは想像できた。
「これで奴らを葬った。たわいもなかったわい」
その近くにウイッテは姿を現した。さんざんリーカーたちを打ちのめした村人たちは、命令されたことをやり遂げたのでそのままぼうっと家に帰っていった。
「さて、リーカーは?」
ウイッテがのぞきこむと、そこには2本の傷だらけの太い木が落ちているだけだった。
「これは!」
ウイッテは驚くと、ふいに後ろに人の気配を感じた。
「やっと姿を現したな!」
ウイッテが振り返ると背後にリーカーが立っていた。
「貴様! 魔法を使って村人の目をくらましたな!」
「そうだ。簡単な魔法だ」
「くそ! こんな単純な手に引っ掛かるとは・・・。こうなったら直接、儂が手を下してやる! 覚悟しろ!」
ウイッテは呪文を唱えた。すると多数の火の玉が空中に浮かび、リーカーに一斉に向かって来た。リーカーは
「***結界***」
を張って防いだ。彼の前で火の玉が爆発していき、煙が辺りに立ち込め始めた。それでもウイッテは狂ったかのように火の玉を放ち続けた。それらはさらにリーカーの張った結界にぶつかり、
「ドッカーン!」
と大爆発を起こした。
「これほどまでなら奴は生きておるまい!」
ウイッテは汗を流して息を切らしながらそう言った。立ち込めた煙は次第に晴れていった。
「!」
ウイッテは目を疑った。そこにリーカーが無事な姿で立っていた。あれほどまでの火の玉を結界ではね返したとは・・・ウイッテはとても信じられなかった。
「では、いくぞ!」
リーカーはウイッテに駆け寄ってきた。その剣は魔法で光を放っていた。
「まずい!」
ウイッテは慌てて結界を張った。しかしリーカーは、
「***魔道剣*一刀斬***」
で結界ごとウイッテを斬り裂いた。
「おのれ! リーカー! ここで儂を倒してもあの方がお前とエミリーを抹殺するだろう。楽しみにしているがいい!」
ウイッテは悔しさと苦痛に顔をゆがませながら倒れていった。
「パパ!」
隠れていたエミリーが飛び出してきた。
「村人の魔法は解けただろう。ここに長居は無用だ。いくぞ!」
2人はそのまま道を進んでいった。
「マークスがやられただと!」
ザウス隊長が声を上げた。それは彼らにとって思いがけない報告だった。
「マークスめ! 口ほどにもない!」
ワーロン将軍はそう苦々しく言った。
「しかし次の手を考えませんと・・・」
ザウス将軍は地図を見て言った。
「こうなればあいつを呼べ! もしものために王宮に置いておいたが、もうあいつしかおらぬ」
ワーロン将軍が言った。
「はっ!」
ザウス隊長はそう言って執務室から出て行った。
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リーカーはエミリーとともに来た道を引き返していた。行く当てはなかったが進まねばどんな者たちが襲ってくるか、わからなかった。しかしその後をつけている者があった。それは魔法使いのウイッテだった。彼はリーカーを倒すことしか生きていく道がなかった。もしそれができなければ、あの方に抹殺されてしまう・・・。巨大火の玉の爆発で怪我を負ったが次第に回復してきており、後は最後の戦いを仕掛けるだけだった。
「リーカーめ!」
つぶやくウイッテは前方に小さな村を見た。確かそこはヤギ村。そこはわずかな者しか住んでいないが力自慢の男たちが多いと聞く・・・ウイッテはそれを思い出し、不気味に笑うと魔法で姿を消した。
◇◇◇◇
サランサはエリザリー女王の世話を続けていた。エミリーの無事な声を聞いてエリザリー女王は日に日に回復していた。ただ困ったことはエミリーの声を移したその白フクロウをエリザリー女王が離したがらないことだった。これでしばらくリーカーと連絡が取れなくなってしまった。だがサランサはリーカーが無事である気がしていた。
「サランサ。アーリーを殺しリーカーに罪を擦り付けたものは誰じゃ?」
エリザリー女王は声を潜めて聞いてきた。元気を取り戻しつつあるエリザリー女王は企てをした者を知りたがった。
「それはわかりません・・・」
サランサはそう言うしかなかった。自分の父の犯した罪を真っ向から女王に告げることはまだためらわれた。ただそんな自分が次第に疎ましくなり、悲しい気分に見舞われていた。
◇◇◇◇
リーカーとエミリーはヤギ村に着いた。そこは不気味なほど静まり返っていた。田畑にも道にも人の姿はなかった。しかしリーカーは人の気配を感じていた。
(誰かいる・・・だが姿を見せぬ・・・どうしてだ?)
リーカーは目を動かして周囲を伺いながら慎重に歩いた。エミリーもその不気味な気配を感じ取っているようでおびえていた。
「バタバタバタ!」
急に鳥が飛び立った。それを合図に家にいた村の者たちがリーカーの前に飛び出した。彼らは鍬や鋤、鎌などを振り上げていた。そしてその目には邪悪な光が宿っていた。
(魔法で操られている! しかもこんなに大勢・・・)
リーカーはとっさに思った。何者かがリーカーを襲うように仕向けたのだろう。
村人たちはリーカーとエミリーに襲い掛かってきた。リーカーはとっさに剣を抜き、村人たちを平打ちして倒していった。しかし魔法にかかっているため取れても次々に起き上がってきた。
「まずい・・・これではきりがない。村人を斬るわけにはいかぬ・・・」
リーカーは戦いながらエミリーとともにその場から抜け出した。その後を村人たちが追って行った。
その光景をウイッテは遠くから見ていた。
「村人たちはすべて儂の魔法にかかっておる。死ぬまで奴らを追い詰めるだろう。ふふふ」
不気味な笑いを浮かべていた。
◇◇◇◇
王宮の門に作物を積んだ荷車が農夫たちによって運ばれてきていた。
「よし、通れ!」
門番に言われて荷車は門をくぐり、蔵のある裏に向かった。しかし一人の農夫がそこから離れて建物の陰に身を隠した。
「気づかれておらぬな」
それはミラウスだった。マークスに言われて王宮に探りに来たのだった。まずは力になってくれそうなサランサを探さねばならなかった。ミラウスは周囲を見渡して、静かに中に入って行った。サランサがいるところまでは距離があり、衛兵の警備も厳重なはずだった。
ミラウスはなんとか魔法で姿をくらましながら王宮の内部に近づいていた。廊下を行き来する者は多かったが気づかれなかった。
(これならサランサ様にお会いできるだろう)
だがその油断がいけなかった。急に開いた扉にぶつかり、魔法が解けて農夫姿のミラウスが姿を現した。
「きゃあ!」
そばにいた女官が声を上げた。それを聞きつけて衛兵が駆け寄ってきた。
「何だ! 貴様は!」
(まずい! ここで正体がばれては元も子もない・・・)
ミラウスは跪いて頭を床につけた。
「お許しください。作物を収めに来た農夫でございます。初めて来たもので迷ってしまって・・・」
「怪しい奴! ちょっと来い!」
衛兵はミラウスの手を引っ張ろうとしたが、ミラウスは頭をさげたまま、
「お許しください・・・」
と言い続けた。その騒ぎに人が集まってきた。
「どうしたのです?」
やさしい声が聞こえた。
「サランサ様、侵入者です」
衛兵はそう答えた。
(しめた!)
ミラウスはサランサの方に向かって、
「お許しください。ベーク村の者です。サランサ様」
と言うと顔を上げて目配せした。それを察してサランサは言った
「ベーク村の者なら用があります。この者は私の部屋に連れて行きます」
「よろしいので?」
衛兵が聞いた。
「ええ、大丈夫です。さあ、来るのです」
サランサが言うとミラウスは恐縮したふりをしながらその後をついて行った。
◇◇◇◇
リーカーはエミリーとともに村人から逃げていた。
「いつまでも逃げ切れることはできぬ・・・」
リーカーは決心して立ち止まって剣を構えた。そして呪文を唱えていた。村人たちはその周りを取り囲み、一斉に襲い掛かった。それに押し潰されるようにリーカーとエミリーの姿は消えた。多分その中で無残な姿になっていることは想像できた。
「これで奴らを葬った。たわいもなかったわい」
その近くにウイッテは姿を現した。さんざんリーカーたちを打ちのめした村人たちは、命令されたことをやり遂げたのでそのままぼうっと家に帰っていった。
「さて、リーカーは?」
ウイッテがのぞきこむと、そこには2本の傷だらけの太い木が落ちているだけだった。
「これは!」
ウイッテは驚くと、ふいに後ろに人の気配を感じた。
「やっと姿を現したな!」
ウイッテが振り返ると背後にリーカーが立っていた。
「貴様! 魔法を使って村人の目をくらましたな!」
「そうだ。簡単な魔法だ」
「くそ! こんな単純な手に引っ掛かるとは・・・。こうなったら直接、儂が手を下してやる! 覚悟しろ!」
ウイッテは呪文を唱えた。すると多数の火の玉が空中に浮かび、リーカーに一斉に向かって来た。リーカーは
「***結界***」
を張って防いだ。彼の前で火の玉が爆発していき、煙が辺りに立ち込め始めた。それでもウイッテは狂ったかのように火の玉を放ち続けた。それらはさらにリーカーの張った結界にぶつかり、
「ドッカーン!」
と大爆発を起こした。
「これほどまでなら奴は生きておるまい!」
ウイッテは汗を流して息を切らしながらそう言った。立ち込めた煙は次第に晴れていった。
「!」
ウイッテは目を疑った。そこにリーカーが無事な姿で立っていた。あれほどまでの火の玉を結界ではね返したとは・・・ウイッテはとても信じられなかった。
「では、いくぞ!」
リーカーはウイッテに駆け寄ってきた。その剣は魔法で光を放っていた。
「まずい!」
ウイッテは慌てて結界を張った。しかしリーカーは、
「***魔道剣*一刀斬***」
で結界ごとウイッテを斬り裂いた。
「おのれ! リーカー! ここで儂を倒してもあの方がお前とエミリーを抹殺するだろう。楽しみにしているがいい!」
ウイッテは悔しさと苦痛に顔をゆがませながら倒れていった。
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隠れていたエミリーが飛び出してきた。
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