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第9章 王宮を前にして
押し寄せる敵
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やがて夜が訪れた。雲が月を隠し、辺りは暗闇に閉ざされていた。魔騎士たちに見つかりにくくなったが、王宮の堀を越える手がやはり見つからなかった。
「なんとか手を考えねば・・・」
リーカーは遠くに見える王宮をにらみ続けた。こうなったら強攻して門を突破しなければならぬのか・・・。横にいるエミリーは心配そうに彼を見ていた。
その時、上空でカラスがけたたましく鳴いた。暗闇でも活動するのは魔法の黒カラスに違いなかった。
「しまった! 見つかったか! エミリー! 急いで身を隠すぞ!」
リーカーはエミリーの手を引いて林に駆け込もうとした。だが遅かった。カラスの鳴き声を聞いて多くの足音が向かってきていた。
「見つけたぞ! リーカー!」
リーカーが振り返ると魔騎士や魔兵が駆け寄ってきていた。もうエミリ-ともに逃げ切ることは難しいように思われた。
「エミリー。この林に隠れていなさい。もしこの父に何かあっても、お前は何としても王宮に駆け込んで女王様に会うのだ。よいな!」
リーカーはエミリーから手を放して言った。
「パパ・・・」
エミリーはリーカーのそばから離れようとしなかった。
「行くのだ! それがエミリー、それがお前の道だ!」
リーカーは大きな声で叱るように言った。エミリーはリーカーのことが気になりつつも、少しずつ林の中に入っていった。そしてすぐにリーカーは魔騎士と魔兵に囲まれた。
「リーカー! お前には抹殺命令が出ている。おとなしく討たれよ! この魔騎士バーンが討ち取ってくれる!」
「ここで貴様らに討たれるわけにいかぬ。だが逃げはせぬ。かかって来い!」
リーカーは剣を抜いた。
「ふふふ。これほどの人数、それも我らは歴戦の魔騎士と魔兵。貴様一人でどうしようというのだ!」
バーンは笑った。
「ワーロンの私兵になり下がった貴様どもに何ができる!」
リーカーが言い放った。
「何を! それならば目にものを見せてやる! 行け!」
バーンの合図で魔兵たちは剣にに魔力をこめて斬りかかってきた。リーカーは自らの剣に、
「***魔道剣*発動***」
の呪文をかけた。すると剣は生き物のように躍動した。魔兵たちの剣をはね返し、リーカーの剣は一瞬のうちに魔兵たちを斬り倒した。
「おのれ!」後に残った魔騎士バーンも剣を抜いて呪文を唱えた。
「いくぞ!」
リーカーは素早く間合いに入ると、剣を振り下ろした。するとバーンの体を一刀両断したように見えた。
「なに!」
リーカーは声を漏らした。剣は空を切り、バーンの体は右と左に分かれ、それぞれの体が一人のバーンになった。そのバーンたちはリーカーに斬りかかってきた。
「カーン!シュッ!シュッ!」
リーカーはその2人のバーンに剣を振り下ろした。しかし手ごたえはなく、バーンは4人に増えていた。
(分身魔法か!)
リーカーはこの上級魔法に驚きを隠せなかった。
「ふふふ。驚いたか。貴様の魔法など取るに足らぬ。こちらから行くぞ!」
4人のバーンが襲い掛かってきた。リーカーは何とか後ろに下がりつつ、剣を避けていた。これ以上斬れば人数がさらに増えるであろうし、さすがに4人が相手ではリーカーはなす術がなかった。
(このままではやられる・・・だが・・・)
リーカーは魔法の修行を思い出した。
(確かに4人だ。しかし魔法で増えているだけだ。斬られれば死ぬ。もしかすると斬られる瞬間に、剣を避けて斬られているふりをして分身しているだけかもしれぬ。斬ったことで人数が増えたのを見せて、私を混乱させ、十分に剣を振るわせないために。逃がられずに確実に仕留められれば・・・)
リーカーはさっと後ろに下がり剣を構えなおした。
「これで最後だ!」
4人のバーンは剣を振り上げてリーカーに迫ってきた。そこには油断という隙があるように見えた。リーカーは向かっていくと、
「***魔道剣*光陰斬***」
一瞬の素早さで剣を横に払った。すると剣が魔法で輝き、光を放った。向かって来た4人のバーンがその光に飲み込まれた。
「うわっ!」
悲鳴があがった。通り抜けたリーカーが振り向くと、4人のバーンを包んだ光は消え、彼らは地面に倒れた。そこに転がったのは一人のバーンの亡骸だった。
「ふうっ・・・」
リーカーは剣をしまうと息を吐いた。敵を倒した安心感とともに体を激しい痛みが襲っていた。また魔法を使いすぎたため、鉱の呪いが出ていた。リーカーの左大腿が金属のように固くなっていたのだ。
(またしても・・・だがこれで王宮に・・・)
リーカーがそう思った時、
「見事だった」
手を叩きながら男が出て来た。その顔には不気味な笑いを浮かべていた。それはあのザウス隊長だった。
「ザウス! 貴様だな! 我らを抹殺しようとしたのは!」
リーカーが声を上げた。
「ああ、そうだ。ワーロン将軍の御命令だ」
ザウス隊長は冷たく言い放った。
「貴様らの陰謀を女王様に申し上げる。ここを通してもらうぞ!」
リーカーが叫んだ。
「通すわけにはいかぬ。ここで貴様を葬る。反逆者としてな」
ザウス隊長は冷ややかに言った。
「では剣で決着をつけてやる!」
リーカーは剣を抜く態勢で慎重に足を運んだ。
「貴様ごとき、俺に敵うと思うのか!」
ザウス隊長は構えもせず、ただリーカーを見ていた。
「ならば受けてみよ!」
リーカーは素早く剣を抜いて斬りつけた。だがザウス隊長は簡単にそれを避けた。
「***魔道剣*一刀斬***」
リーカーは剣を振り下ろした。しかしザウス隊長は余裕でかわして平気な顔で立っていた。
「貴様の剣の動きは見えている! 貴様などこれで十分だ。召喚! 黒竜!」
ザウスは呪文を唱えた。するとザウス隊長の体から一匹の黒い竜が現れた。それは獰猛な面構えに鋭い牙を生やし、黒光りする硬い鱗に覆われた大きな体に、両手には鋭い爪を伸ばしていた。
「なに!」
リーカーはうわさに聞く召喚魔法の黒竜を見て驚きを隠せなかった。
「行け!この男を殺せ!」
ザウスが言うと黒竜はリーカーに向かって来た。リーカーは剣で防ぐが、黒竜は執拗にリーカーに襲い掛かって来た。剣と黒竜の牙と爪が火花を散らして、何度もぶつかり合った。
「なかなかやるな。それなら・・・」
ザウス隊長はゆっくり剣を抜いた。そして呪文を唱えると、その剣は黒色になった。リーカーがそれに気づかず、黒竜と激しい戦いを繰り広げていた。ザウス隊長はそっと背後から近づいた。
「死ね!漆黒の刃!」
いきなり剣を振り下ろした。するとその剣から影のような黒い物体が放たれ、リーカーに直撃した。
「うわーっ!」
強い衝撃を受けてリーカーは声を上げてそのまま堀に落ちていった。
「やったか!」
ザウス隊長は堀をのぞきこんだ。だがしばらく待ってもリーカーは浮かんで来なかった。そこに多くの魔騎士と魔兵が集まってきていた。
「あの刃の衝撃を受ければ十中八九、生きてはいまい。だが念のためここを見張れ! さて娘はどこだ? 遠くに行っておるまい。探せ! 探せ! 探し出して殺せ!」
ザウス隊長は大きな声で叫んだ
「なんとか手を考えねば・・・」
リーカーは遠くに見える王宮をにらみ続けた。こうなったら強攻して門を突破しなければならぬのか・・・。横にいるエミリーは心配そうに彼を見ていた。
その時、上空でカラスがけたたましく鳴いた。暗闇でも活動するのは魔法の黒カラスに違いなかった。
「しまった! 見つかったか! エミリー! 急いで身を隠すぞ!」
リーカーはエミリーの手を引いて林に駆け込もうとした。だが遅かった。カラスの鳴き声を聞いて多くの足音が向かってきていた。
「見つけたぞ! リーカー!」
リーカーが振り返ると魔騎士や魔兵が駆け寄ってきていた。もうエミリ-ともに逃げ切ることは難しいように思われた。
「エミリー。この林に隠れていなさい。もしこの父に何かあっても、お前は何としても王宮に駆け込んで女王様に会うのだ。よいな!」
リーカーはエミリーから手を放して言った。
「パパ・・・」
エミリーはリーカーのそばから離れようとしなかった。
「行くのだ! それがエミリー、それがお前の道だ!」
リーカーは大きな声で叱るように言った。エミリーはリーカーのことが気になりつつも、少しずつ林の中に入っていった。そしてすぐにリーカーは魔騎士と魔兵に囲まれた。
「リーカー! お前には抹殺命令が出ている。おとなしく討たれよ! この魔騎士バーンが討ち取ってくれる!」
「ここで貴様らに討たれるわけにいかぬ。だが逃げはせぬ。かかって来い!」
リーカーは剣を抜いた。
「ふふふ。これほどの人数、それも我らは歴戦の魔騎士と魔兵。貴様一人でどうしようというのだ!」
バーンは笑った。
「ワーロンの私兵になり下がった貴様どもに何ができる!」
リーカーが言い放った。
「何を! それならば目にものを見せてやる! 行け!」
バーンの合図で魔兵たちは剣にに魔力をこめて斬りかかってきた。リーカーは自らの剣に、
「***魔道剣*発動***」
の呪文をかけた。すると剣は生き物のように躍動した。魔兵たちの剣をはね返し、リーカーの剣は一瞬のうちに魔兵たちを斬り倒した。
「おのれ!」後に残った魔騎士バーンも剣を抜いて呪文を唱えた。
「いくぞ!」
リーカーは素早く間合いに入ると、剣を振り下ろした。するとバーンの体を一刀両断したように見えた。
「なに!」
リーカーは声を漏らした。剣は空を切り、バーンの体は右と左に分かれ、それぞれの体が一人のバーンになった。そのバーンたちはリーカーに斬りかかってきた。
「カーン!シュッ!シュッ!」
リーカーはその2人のバーンに剣を振り下ろした。しかし手ごたえはなく、バーンは4人に増えていた。
(分身魔法か!)
リーカーはこの上級魔法に驚きを隠せなかった。
「ふふふ。驚いたか。貴様の魔法など取るに足らぬ。こちらから行くぞ!」
4人のバーンが襲い掛かってきた。リーカーは何とか後ろに下がりつつ、剣を避けていた。これ以上斬れば人数がさらに増えるであろうし、さすがに4人が相手ではリーカーはなす術がなかった。
(このままではやられる・・・だが・・・)
リーカーは魔法の修行を思い出した。
(確かに4人だ。しかし魔法で増えているだけだ。斬られれば死ぬ。もしかすると斬られる瞬間に、剣を避けて斬られているふりをして分身しているだけかもしれぬ。斬ったことで人数が増えたのを見せて、私を混乱させ、十分に剣を振るわせないために。逃がられずに確実に仕留められれば・・・)
リーカーはさっと後ろに下がり剣を構えなおした。
「これで最後だ!」
4人のバーンは剣を振り上げてリーカーに迫ってきた。そこには油断という隙があるように見えた。リーカーは向かっていくと、
「***魔道剣*光陰斬***」
一瞬の素早さで剣を横に払った。すると剣が魔法で輝き、光を放った。向かって来た4人のバーンがその光に飲み込まれた。
「うわっ!」
悲鳴があがった。通り抜けたリーカーが振り向くと、4人のバーンを包んだ光は消え、彼らは地面に倒れた。そこに転がったのは一人のバーンの亡骸だった。
「ふうっ・・・」
リーカーは剣をしまうと息を吐いた。敵を倒した安心感とともに体を激しい痛みが襲っていた。また魔法を使いすぎたため、鉱の呪いが出ていた。リーカーの左大腿が金属のように固くなっていたのだ。
(またしても・・・だがこれで王宮に・・・)
リーカーがそう思った時、
「見事だった」
手を叩きながら男が出て来た。その顔には不気味な笑いを浮かべていた。それはあのザウス隊長だった。
「ザウス! 貴様だな! 我らを抹殺しようとしたのは!」
リーカーが声を上げた。
「ああ、そうだ。ワーロン将軍の御命令だ」
ザウス隊長は冷たく言い放った。
「貴様らの陰謀を女王様に申し上げる。ここを通してもらうぞ!」
リーカーが叫んだ。
「通すわけにはいかぬ。ここで貴様を葬る。反逆者としてな」
ザウス隊長は冷ややかに言った。
「では剣で決着をつけてやる!」
リーカーは剣を抜く態勢で慎重に足を運んだ。
「貴様ごとき、俺に敵うと思うのか!」
ザウス隊長は構えもせず、ただリーカーを見ていた。
「ならば受けてみよ!」
リーカーは素早く剣を抜いて斬りつけた。だがザウス隊長は簡単にそれを避けた。
「***魔道剣*一刀斬***」
リーカーは剣を振り下ろした。しかしザウス隊長は余裕でかわして平気な顔で立っていた。
「貴様の剣の動きは見えている! 貴様などこれで十分だ。召喚! 黒竜!」
ザウスは呪文を唱えた。するとザウス隊長の体から一匹の黒い竜が現れた。それは獰猛な面構えに鋭い牙を生やし、黒光りする硬い鱗に覆われた大きな体に、両手には鋭い爪を伸ばしていた。
「なに!」
リーカーはうわさに聞く召喚魔法の黒竜を見て驚きを隠せなかった。
「行け!この男を殺せ!」
ザウスが言うと黒竜はリーカーに向かって来た。リーカーは剣で防ぐが、黒竜は執拗にリーカーに襲い掛かって来た。剣と黒竜の牙と爪が火花を散らして、何度もぶつかり合った。
「なかなかやるな。それなら・・・」
ザウス隊長はゆっくり剣を抜いた。そして呪文を唱えると、その剣は黒色になった。リーカーがそれに気づかず、黒竜と激しい戦いを繰り広げていた。ザウス隊長はそっと背後から近づいた。
「死ね!漆黒の刃!」
いきなり剣を振り下ろした。するとその剣から影のような黒い物体が放たれ、リーカーに直撃した。
「うわーっ!」
強い衝撃を受けてリーカーは声を上げてそのまま堀に落ちていった。
「やったか!」
ザウス隊長は堀をのぞきこんだ。だがしばらく待ってもリーカーは浮かんで来なかった。そこに多くの魔騎士と魔兵が集まってきていた。
「あの刃の衝撃を受ければ十中八九、生きてはいまい。だが念のためここを見張れ! さて娘はどこだ? 遠くに行っておるまい。探せ! 探せ! 探し出して殺せ!」
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