101 / 228
第五章 〜ゲーム開始『君に捧ぐ愛奏曲〜精霊と女神の愛し子〜』
96. 再会の傷跡 side クリスフォード
しおりを挟むルカディオと冷たい再会を果たしたヴィオラは、クリスフォードとノアに促され、呆然としたままその場を離れた。
寮の入口前のやり取りだったが、寮生の帰宅時間とズレていて人通りが少なかった事と、クリスフォードが激昂した瞬間にノアが認識阻害などの魔法を施した事で、二人が注目を浴びる前に隠す事が出来た。
「クリス……お前本当に自覚が足りないぞ。今回はたまたま人が少なかったから大事にならなかったものの、あの場に能力の高い魔法士がいれば、お前たちの隠された属性がバレるところだった」
「ごめん……、つい黒い感情が溢れちゃって、どうやってあの脳筋バカをぶちのめしてやろうかと怒りに飲まれちゃったんだよね……」
「仮にも治癒魔法士がそんな物騒な事を考えるな。……はあ、やはり魔法訓練の期間が短かったな。本来なら物心ついた頃から始めるものだが、お前達は呪いのせいで通常より半分の期間しかできていない。ジルと王太子に相談して小型の制御装置を用意してもらった方がいいだろう」
「うん。ごめん──」
「……いや、ヴィオラがあの状態なんだ。お前の気持ちもわかるよ。俺も、腹が立って仕方ない」
静かに怒りを纏うノアを前に、クリスフォードは自分の未熟さを痛感する。
認識阻害魔法で自分と同じ年代に見えても、やはり中身は大人で、皇族で、帝国魔法士団の副団長なのだ。
あの時の一瞬の状況判断と対応は鮮やかなものだった。
「ルカディオのやつ、ノアがあの時護衛だったノア様だと気づかなかったね」
「気づかれたら困るだろ。ヴィオラがまた傷つけられる。でも──結局こっちの俺でも悪い方向に話が拗れたな」
「話を聞かないアイツが悪いよ。……どうでもいいって、政略結婚ってなんだよ。自分がヴィオラにプロポーズして親に婚約を承諾させたくせに……っ」
「そうなのか?」
「そうだよ!あの頃はヴィオラはあの女に虐待されていて、ルカディオがヴィオラを守るって僕と約束したんだ。なのに……よりによってアイツがヴィオラを傷つけた……!」
あの冷たい瞳と冷たい声は、きっと妹の心を突き刺しただろう。あれからずっと目が虚で、一言も言葉を発しなかったヴィオラ。
邸に帰ってきたらジャンヌに連れられて、そのまま自室に篭っている。
ため息をついていると、ジャンヌがサロンにやってきた。
「ノア様、クリスフォード様」
「ジャンヌ……ヴィオラの様子は?」
ノアが尋ねると、ジャンヌは痛ましそうに表情を崩した。
「今はお休みになっています。先程魔力が暴走しかけたので、体に負担がかかったのでしょう。侍女のカリナさんが側で看てくれてます」
「そうか……」
「ほんとにアイツ……許せない」
ルカディオの身に起きた悲劇をクリスフォードも知っている。あの変貌ぶりはその影響だということも理解している。
だがそれでも、自分との約束を破り、ヴィオラを傷つけるという選択をした幼馴染を許すことが出来なかった。
ヴィオラを浮気者だと決めつけ、結婚するまでお互い好きに楽しもうと言った。つまりこれから自分も女を囲うつもりだということだ。
これからも、ヴィオラを傷つける気なのだ。
「あんな奴……、婚約破棄だ!」
「おい、クリス」
「父上が帰ってきたら、今日のことを全部話して婚約破棄してもらう」
「ヴィオラの意思は?本当にヴィオラがそれを望んでいると思うか?」
「ノアだってアイツの冷たい顔を見ただろ?アイツはこれからもヴィオを傷つけるつもりだ。そんな男とヴィオを結婚させてもいいって言うのか?不幸になるってわかっているのに!」
「それは……」
「アイツはヴィオラを守るという約束を破った。そんな男に妹を任せられないし、アイツと関わるたびにヴィオの魔力が揺らいだら、それこそ命取りだ」
二人の仲はもう拗れ過ぎている。
ヴィオラが今までどんなに辛い境遇でも心を保てたのは、ルカディオの想いがあったからだ。
でもそのルカディオが敵に回ったら、ヴィオラはきっと耐えられない。壊れてしまう。
(そんなこと、絶対にさせない)
もうルカディオに、
ヴィオラの伴侶になる資格はない。
165
あなたにおすすめの小説
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめる事にしました 〜once again〜
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【アゼリア亡き後、残された人々のその後の物語】
白血病で僅か20歳でこの世を去った前作のヒロイン、アゼリア。彼女を大切に思っていた人々のその後の物語
※他サイトでも投稿中
邪魔者は消えますので、どうぞお幸せに 婚約者は私の死をお望みです
ごろごろみかん。
恋愛
旧題:ゼラニウムの花束をあなたに
リリネリア・ブライシフィックは八歳のあの日に死んだ。死んだこととされたのだ。リリネリアであった彼女はあの絶望を忘れはしない。
じわじわと壊れていったリリネリアはある日、自身の元婚約者だった王太子レジナルド・リームヴと再会した。
レジナルドは少し前に隣国の王女を娶ったと聞く。だけどもうリリネリアには何も関係の無い話だ。何もかもがどうでもいい。リリネリアは何も期待していない。誰にも、何にも。
二人は知らない。
国王夫妻と公爵夫妻が、良かれと思ってしたことがリリネリアを追い詰めたことに。レジナルドを絶望させたことを、彼らは知らない。
彼らが偶然再会したのは運命のいたずらなのか、ただ単純に偶然なのか。だけどリリネリアは何一つ望んでいなかったし、レジナルドは何一つ知らなかった。ただそれだけなのである。
※タイトル変更しました
お二人共、どうぞお幸せに……もう二度と勘違いはしませんから
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【もう私は必要ありませんよね?】
私には2人の幼なじみがいる。一人は美しくて親切な伯爵令嬢。もう一人は笑顔が素敵で穏やかな伯爵令息。
その一方、私は貴族とは名ばかりのしがない男爵家出身だった。けれど2人は身分差に関係なく私に優しく接してくれるとても大切な存在であり、私は密かに彼に恋していた。
ある日のこと。病弱だった父が亡くなり、家を手放さなければならない
自体に陥る。幼い弟は父の知り合いに引き取られることになったが、私は住む場所を失ってしまう。
そんな矢先、幼なじみの彼に「一生、面倒をみてあげるから家においで」と声をかけられた。まるで夢のような誘いに、私は喜んで彼の元へ身を寄せることになったのだが――
※ 他サイトでも投稿中
途中まで鬱展開続きます(注意)
母と妹が出来て婚約者が義理の家族になった伯爵令嬢は・・
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
全てを失った伯爵令嬢の再生と逆転劇の物語
母を早くに亡くした19歳の美しく、心優しい伯爵令嬢スカーレットには2歳年上の婚約者がいた。2人は間もなく結婚するはずだったが、ある日突然単身赴任中だった父から再婚の知らせが届いた。やがて屋敷にやって来たのは義理の母と2歳年下の義理の妹。肝心の父は旅の途中で不慮の死を遂げていた。そして始まるスカーレットの受難の日々。持っているものを全て奪われ、ついには婚約者と屋敷まで奪われ、住む場所を失ったスカーレットの行く末は・・・?
※ カクヨム、小説家になろうにも投稿しています
許婚と親友は両片思いだったので2人の仲を取り持つことにしました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
<2人の仲を応援するので、どうか私を嫌わないでください>
私には子供のころから決められた許嫁がいた。ある日、久しぶりに再会した親友を紹介した私は次第に2人がお互いを好きになっていく様子に気が付いた。どちらも私にとっては大切な存在。2人から邪魔者と思われ、嫌われたくはないので、私は全力で許嫁と親友の仲を取り持つ事を心に決めた。すると彼の評判が悪くなっていき、それまで冷たかった彼の態度が軟化してきて話は意外な展開に・・・?
※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
妹のことを長年、放置していた両親があっさりと勘当したことには理由があったようですが、両親の思惑とは違う方に進んだようです
珠宮さくら
恋愛
シェイラは、妹のわがままに振り回される日々を送っていた。そんな妹を長年、放置していた両親があっさりと妹を勘当したことを不思議に思っていたら、ちゃんと理由があったようだ。
※全3話。
【完結】さようなら、婚約者様。私を騙していたあなたの顔など二度と見たくありません
ゆうき
恋愛
婚約者とその家族に虐げられる日々を送っていたアイリーンは、赤ん坊の頃に森に捨てられていたところを、貧乏なのに拾って育ててくれた家族のために、つらい毎日を耐える日々を送っていた。
そんなアイリーンには、密かな夢があった。それは、世界的に有名な魔法学園に入学して勉強をし、宮廷魔術師になり、両親を楽させてあげたいというものだった。
婚約を結ぶ際に、両親を支援する約束をしていたアイリーンだったが、夢自体は諦めきれずに過ごしていたある日、別の女性と恋に落ちていた婚約者は、アイリーンなど体のいい使用人程度にしか思っておらず、支援も行っていないことを知る。
どういうことか問い詰めると、お前とは婚約破棄をすると言われてしまったアイリーンは、ついに我慢の限界に達し、婚約者に別れを告げてから婚約者の家を飛び出した。
実家に帰ってきたアイリーンは、唯一の知人で特別な男性であるエルヴィンから、とあることを提案される。
それは、特待生として魔法学園の編入試験を受けてみないかというものだった。
これは一人の少女が、夢を掴むために奮闘し、時には婚約者達の妨害に立ち向かいながら、幸せを手に入れる物語。
☆すでに最終話まで執筆、予約投稿済みの作品となっております☆
私は彼に選ばれなかった令嬢。なら、自分の思う通りに生きますわ
みゅー
恋愛
私の名前はアレクサンドラ・デュカス。
婚約者の座は得たのに、愛されたのは別の令嬢。社交界の噂に翻弄され、命の危険にさらされ絶望の淵で私は前世の記憶を思い出した。
これは、誰かに決められた物語。ならば私は、自分の手で運命を変える。
愛も権力も裏切りも、すべて巻き込み、私は私の道を生きてみせる。
毎日20時30分に投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる