【完結】影を使って婚約者の秘密を暴いたら、とんでもないことになりました。

ハナミズキ

文字の大きさ
20 / 63

マライア・ブランケンハイム①

しおりを挟む


「やあ、ブリジット。よく来てくれた」
 
「ご機嫌よう、マライア様」


私が待つ王太女宮の執務室に、最高位の女性騎士服を身に纏ったマライア様が颯爽と入ってきた。


「面を上げて。この部屋は遮音魔法をかけてあるから楽にしていいよ」 


許しを得て顔を上げると、国内外で『王国の花』と賞賛される美貌が目に飛び込んできた。


この国の王太女、マライア・ブランケンハイム。


元近衞騎士である王配コルネリウス様の光輝く金髪とサファイアブルーの瞳を受け継いだ、文武両道の麗人。

王女でありながら騎士である父に倣い、その身体能力の高さで頭角を表し始め、最終的に女人禁制の騎士団に女性騎士の地位を確立させた方だ。


日頃から彼女は騎士服を好んで身につけ、男性に引けを取らない見事な剣技と王子のような振る舞いから、多くの令嬢に慕われて非公式のファンクラブまであるほどの人気ぶりだ。

彼女を慕って女性騎士志望者が年々増えているらしい。
騎士見習いのアデライド様もマライア様を慕う一人だ。 


そんな男顔負けのスペックを持つ王女だが、令息達のプライドを刺激して反感を買うかと思いきや、彼女がいつも好んで着ている騎士服は、訓練で鍛え上げられた美しい体を強調させて男達を魅了している。

露出のないパンツスタイルの騎士服は、普段ドレスの下に隠された女性の曲線美を露わにしてしまう為、体型が人の目に触れてしまうのだ。


訓練で鍛えたしなやかな筋肉質の体型は、豊かな丸みを押し上げ、引き締まった腰とスラリと細く長い手足が相まって、素晴らしい曲線美を作り出している。

まあ簡単に言うと、男の欲を刺激するエロい体をしているので、男性に妬まれることなく人気を得ているのだ。

ジャイアントベビーのような一部例外もいるが。



何が怖いって、それが全てマライア様の計算で作り上げて得た支持だということ。

人の心理を心得ている。

そのカリスマ性で次期女王の即位は憂いなく行われるであろうと言われた矢先のコレだ。



「さあ、我が愚弟達の愚行を見せてもらおうか」



今から変態達の痴態プレイ上映会が始まる。

私も事前情報を得て覚悟はしていたものの、彼らの痴態を見るのは中々の苦痛だった。

知り合いが出演するAVを見させられる事は、エゼルと同じく豚料理を見たくない程には衝撃だった。

それが血を分けた弟となると、どれほどの衝撃か───、






「おえええええっ、気持ち悪ぅ───っっ」



だよね。

そうなるよね。



食事前という事で吐いてはいなかったけど、要所要所でマライア様は吐き気を催してドン引きしていた。

だがその他の側近達の映像はお母様と同じく爆笑しており、なかなかの担力を見せた。


そしてイアンの資料に関しては眉を顰める。


「この男だけ毛色が違うな。ハネス伯爵夫人の実家はランドル伯爵家だったか。まさかランドル前伯爵が病死ではなく毒殺だったとはな。流行病で死者多数だった混乱事を利用した犯罪か」

「はい。理由はかつてから不倫関係にあった血の繋がらない兄との痴情のもつれ。過去見の魔道具の記録映像では学生時代から体の関係を結んでいたようです」

「結婚時に非処女だとバレなかったのか?」

「事前にハネス伯爵を酔わせて事に及び、寝てしまった後に動物の血で偽装したみたいです。そちらの映像も証拠で残っています」


「はあ・・・、ハネス伯爵夫人は夜会で何度か挨拶を交わした事があるが、大人しくて男の後ろに控える様な女性だった。そんな人がこんな大それた事をするとはなぁ」

「私も同じ認識でしたよ。だからこそ狂ってると思いました。動機は兄の心が他の女に向いた事が許せなかったのでしょう。だから他の女と結婚する前に殺したのだと思います。その後彼女は精神が崩壊したのかイアンに執着し、息子を兄に見立てて体の関係を強要しました」



そしてイアンは壊れた。

全てに蓋をして穏やかに笑っているのは一種の防衛本能だろう。ハネス伯爵の実子ではない自分が穏便に暮らす為の処世術だった。



「ハネス伯爵家は王都の事業に深く関わっている。彼らに何かあれば国の流通に大打撃を与えかねない。公表はできないが、非公式でハネス伯爵夫人は捕らえねばならないな。。コレは重罪だ。知ってしまった以上見逃す事はできない」




そう、ハネス伯爵夫人が殺したのは兄だけではない。


死んだ兄の婚約者と、彼女のお腹に宿る子供も、嫉妬のあまり手をかけてしまっていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

旦那様には愛人がいますが気にしません。

りつ
恋愛
 イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

貴方が側妃を望んだのです

cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。 「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。 誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。 ※2022年6月12日。一部書き足しました。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。  史実などに基づいたものではない事をご理解ください。 ※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。  表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。 ※更新していくうえでタグは幾つか増えます。 ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

私を幽閉した王子がこちらを気にしているのはなぜですか?

水谷繭
恋愛
婚約者である王太子リュシアンから日々疎まれながら過ごしてきたジスレーヌ。ある日のお茶会で、リュシアンが何者かに毒を盛られ倒れてしまう。 日ごろからジスレーヌをよく思っていなかった令嬢たちは、揃ってジスレーヌが毒を入れるところを見たと証言。令嬢たちの嘘を信じたリュシアンは、ジスレーヌを「裁きの家」というお屋敷に幽閉するよう指示する。 そこは二十年前に魔女と呼ばれた女が幽閉されて死んだ、いわくつきの屋敷だった。何とか幽閉期間を耐えようと怯えながら過ごすジスレーヌ。 一方、ジスレーヌを閉じ込めた張本人の王子はジスレーヌを気にしているようで……。 ◇小説家になろう、ベリーズカフェにも掲載中です! ◆表紙はGilry Drop様からお借りした画像を加工して使用しています

白い結婚を告げようとした王子は、冷遇していた妻に恋をする

夏生 羽都
恋愛
ランゲル王国の王太子ヘンリックは結婚式を挙げた夜の寝室で、妻となったローゼリアに白い結婚を宣言する、 ……つもりだった。 夫婦の寝室に姿を見せたヘンリックを待っていたのは、妻と同じ髪と瞳の色を持った見知らぬ美しい女性だった。 「『愛するマリーナのために、私はキミとは白い結婚とする』でしたか? 早くおっしゃってくださいな」 そう言って椅子に座っていた美しい女性は悠然と立ち上がる。 「そ、その声はっ、ローゼリア……なのか?」 女性の声を聞いた事で、ヘンリックはやっと彼女が自分の妻となったローゼリアなのだと気付いたのだが、驚きのあまり白い結婚を宣言する事も出来ずに逃げるように自分の部屋へと戻ってしまうのだった。 ※こちらは「裏切られた令嬢は、30歳も年上の伯爵さまに嫁ぎましたが、白い結婚ですわ。」のIFストーリーです。 ヘンリック(王太子)が主役となります。 また、上記作品をお読みにならなくてもお楽しみ頂ける内容となっております。

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...