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卒業パーティ
しおりを挟む「本当にどこまでもバカだな、愚弟のやつは」
王太女宮の執務室で、マライア様が報告書を手にして大きなため息をついた。
「ホントですね。今まで学ぶ機会ならいくらでもあったのに、現状をすべて人のせいにして悲劇のヒーロ―気取り。あげくに犯罪に手を染めるなど、王族どころか人間として失格です。もうそんな王家のゴミはさっさと捨ててしまいましょう」
「なんだブリジット、やけに辛辣だな」
「マライア様だけでなく、キャサリン様にまで手を出したんです。許せるわけがない。王家の影として、カーライルは裁きを下す決断をしました」
「ああ、知っている。母上からも聞いた。せめてこのまま何もせず、これ以上の恥を晒すことなく処罰を受け入れてほしいところだが、無理だろうなぁ」
「無理でしょうねぇ……アイツらやる気満々なんで。次やらかした時が彼らの最期です。二度と陽の当たる場所を歩けなくしてあげますよ」
王家としてはコンラッド第一王子を正しい道に導くことが出来なかったことに自責の念を感じている。実際に今までも議会でコンラッド第一王子の資質について問題提起されたこともあった。
その度に教育し直すと貴族たちを説得し、両陛下はその都度対応をしてきた。
けれど、その親心を常に踏みにじってきたのは彼自身だ。
そもそも、両陛下を間近で見ているのだから、公務の忙しさや国を維持する過酷さは、見れば誰でもわかること。
育った環境は三姉弟とも同じだ。
その上で自分の能力不足を感じたのならそれ以上の努力をしなければならない。無理だと諦めたなら、他の王族のサポートに回り、足を引っ張る真似などしてはならない。
王族の行動は常に貴族たちに見られている。そして彼らの行動指針となり、それが民たちの暮らしに直結する。
上がブレたり道を踏み外せば、犠牲になるのは民なのだ。
王族として、それだけは忘れてはいけなかった。
それを忘れたコンラッド第一王子に同情なんてできない。
「――仕方ないな。発端はあの変態ストーカー皇子とはいえ、コンラッドがまともに王子教育を受けて他国の王族と情勢を把握していれば惑わされることもなかったはずだ。末弟のシリルでさえあのクソキモ第二皇子がイカれた男だと知っているのに、交渉術も知らんゴミカスが帝国の皇族と対等に渡り合えるわけがない」
私も人のこと言えないんだけど、さっきからマライア様の王子二人の呼び方が酷い。
「第二皇子についても捕縛できる材料は両親たちが揃えました。アイツらの企みに乗じて関わっている者たちを一斉摘発する予定です」
「優秀な影を持って、我が王家も心強いよ。私の治世の時はよろしくな、ブリジット」
「身命を賭してお仕えいたします」
◇◇◇◇
「いよいよね、エゼル」
今日で最後となる制服を身に纏い、エゼルに決意を見せる。
「こっちは準備万端だ。今日で全部終わらせようぜ」
「ええ、そうね。――では、お父様、お母様、いってきます」
「いってらっしゃい。私たちも後から向かうわ」
馬車に乗り込み、学園に向かう。
今日は卒業式。最後の登校だ。
そしてすべての決着がつく日でもある。
「アイツら、卒業式とパーティー、どっちで仕掛けてくるかしらね?」
「どちらにしろ、アイツらが待っているのは地獄への扉だな。明日から生き恥晒して生きて行かなきゃいけないなんて、夢にも思ってないだろうなぁ」
「ふふふ、どんなアホ面拝ませてくれるのか楽しみね」
きっと今の私とエゼルは邪悪な笑みを浮かべていることだろう。でも、やっと今までの苦労が報われるのだ。侮辱された分、存分に仕返しさせていただこうじゃない。
そして、事態が動いたのは卒業パーティーだった。
「キャサリン・マクガイア! ブリジット・カーライル! アリア・サージェス! アデライド・バルテ! モニカ・ソワイエ! 以上、名前を呼ばれた者は前へ出ろ!」
卒業パーティーが始まり、コンラッド率いるゴミ集団が入場するなり、ズカズカと壇上に上がって声高々に私たちの名前を呼んだ。
私たちは取り乱しもせず、彼らの前に姿を現す。
――――――――――――――――――――――
1. 変態SMブタ王子の婚約者 2022/03/14 18:13
ついに始まりましたわね
2. 変態おむつバブ野郎の婚約者 2022/03/14 18:13
想定通りの来たーーーーっ!
ヤバい、ずっと淑女らしさを守るために鉄壁の守りでコイツらの顔を見るの避けてたのに、衆人環視の中で笑いをこらえなきゃいけないなんて何の拷問?
エセ騎士の変態バブ野郎がドヤ顔で私たちの名前叫んだけど! おむつ履いてバブバブ言ってるくせに!
みんな、笑ったら負けだ。淑女の仮面を絶対に剥がしてはダメだ! 絶対に負けられない戦いがここにある
3. 変態露出ぽよメガネの婚約者 2022/03/14 18:14
ちょっと! 変態のドヤ顔に今にも吹き出しそうなんだから煽らないで!
4. 変態仮面カマキリの婚約者 2022/03/14 18:14
変態仮面が、ニヒルな笑みを浮かべてこっちを見下していてムカつきます。パンツ被ったカマキリのくせに!
5. 変態NTRハアハア野郎の元婚約者 2022/03/14 18:14
ちょwwww ほんと煽らないでwww
みんな絶対笑っちゃダメだから!
6. 名無しの魔術師 2022/03/14 18:15
あの露出狂、若干顔が赤いだろ? なんでだか教えてやろうか? アイツ、阿婆擦れに唆されて今二人ともノーパンなんだぜ。
そんな痴態とスリルを満喫中なの。そんなに脱ぎたいなら、もう卒業したら裸族に婿入りすればいいのにな
あ、ちなみにそのやり取りも録画済み
7. 変態露出ぽよメガネの婚約者 2022/03/14 18:15
ノーパン想像してしまった! キモイ!
キモ過ぎるーー! 脳が汚染されるーー!
――――――――――――――――――――――
「キャサリン・マクガイア! 今この場でお前を断罪する! お前は嫉妬に駆られてこのバロー男爵令嬢を取り巻きたちと共謀して苛め抜き、危害を加えた! そして更には複数の男たちと乱交に及んだらしいな! 我が王族に貴様のような阿婆擦れを妃に迎えることはできない。よって今日をもって私はお前との婚約を破棄する!」
コンラッド第一王子がデイジーの腰を抱きながら衆人環視の中で叫ぶ。
そして後ろの変態仲間の彼らが王子と横並びになり、ドヤ顔でこちらを見下ろした。そして――
「アリア・サージェス! マクガイア公爵令嬢と共犯のお前との婚約も破棄だ!」
「アデライト・バルテ! 貴様のような極悪な人間は騎士の妻に相応しくない! お前とも婚約を破棄する!」
「モニカ・ソワイエ! 君の非道な行いには幻滅したよ。僕も君との婚約を破棄させていただく!」
次々とゴミ達が婚約破棄を言い渡し、優越感と達成感に浸った顔をした後、皆が一様にデイジーを愛おしそうに見つめている。
――――――――――――――――――――――
1. 変態SMブタ王子の婚約者 2022/03/14 18:20
やったわ……
2. 変態おむつバブ野郎の婚約者 2022/03/14 18:20
やったね
3. 変態露出ぽよメガネの婚約者 2022/03/14 18:21
ついに……ついにこの日が来たわ
4. 変態仮面カマキリの婚約者 2022/03/14 18:22
どうしよう。涙が出そうです……
5. 変態NTRハアハア野郎の元婚約者 2022/03/14 18:22
皆さん、お疲れ様! これで貴女たちも自由の身です!
あのクソゴミたちの妻になるという地獄を回避することが出来ますよ! さあ、皆さんすぐにお返事を!
――――――――――――――――――――――
「「「「婚約破棄、謹んでお受けいたします」」」」
この瞬間、周りのざわつきが最高潮に達し、婚約者たちのスレは狂喜乱舞の言葉で埋め尽くされた。
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