公爵令嬢にざまぁされまして、

たいやき さとかず

文字の大きさ
1 / 3

王家脱退計画を終了します。

しおりを挟む
「王族として恥ずかしくないのか、リヴァン!」
「ですが父上!」
「ですがも何もない!」
 国王陛下の叱咤を受けた青年―――リヴァン第一王子は、怯んだように一歩後ずさる。
 親子だろうが国王陛下という肩書きがあるからには容赦などしない。それが分かっているのか、リヴァンは悔しそうに自らの父親であるルジアンを睨み付けた。
「リヴァンさまぁ……?」
 刺々しい空気が謁見の場を支配する中、一人の少女は甘えたようにリヴァンにしなだれかかった。
 場の空気が冷たいものになっていく。
 周りの使用人や貴族達の冷たい目線が二人へと注がれた。ただ一つ、ルジアンの前に膝を立てている青年達は少女に惚れている為、嫉妬という激情を王子に注いだ。それに構わず、リヴァンはその少女に笑いかける。意味が分かっていない少女もまた笑い返した。
「そこまでにしろ」
 甘い空気になった二人を国王陛下が睨み付けると、不満そうに王子と少女は顔を反らす。
「エンシェリー公爵令嬢を公の場で、根拠もない悪事を働いたとの暴言の数々、令嬢への暴力行為。王族としてこれを許すわけにはいかん」
「父上!」
「よって、リヴァン・アース・ストレーゼを廃嫡とする。エンシェリー公爵令嬢との婚約も撤回しよう。今日よりストレーゼの名を棄て、平民として我国へと尽力せよ。他の者達も同様の処罰とする」
 サァッとリヴァンだけでなく、少女に惚れ、エンシェリー公爵令嬢を詰った貴族の子息達が顔を青くする。ただ一人、少女は現状を理解していないのか未だに元王子へとしなだれかかっている。少女の長い茶髪が肩から落ちるも、リヴァンは衝撃でそれに気づけなかった。
 その様子を見たルジアンは眉を潜め溜め息をついた。
「―――これより謁見は終了だ。この平民達に適当な荷物を与えた後、城の外へと追い出せ」
「ハッ!」
 力の抜けた元子息達は、兵士につれられふらふらと歩きだす。中には「無礼者!」と詰る者もいたが、もう彼等は貴族ではない。兵士が言うことを聞く訳がなかった。
 次々と連れられていく元子息達。兵士に連れられ喚く少女の後、最後に連れられるのはリヴァンだった。
「―――リヴァン様」
 正気を取り戻したのか反抗している元王子に声をかけたのはエンシェリー公爵令嬢だった。
 緩やかな金髪を後ろに流し、姿勢を正した冷静な公爵令嬢をリヴァンは睨む。
「ずっと貴方が好きではなかった。貴方の婚約者であるのが辛かった」
 冷徹な声に眉を潜め、兵士に連れられ歩きながらも公爵令嬢を振り替える。
「あの馬鹿な女性と、末永くお幸せに」
 ―――ガタリ。
 皮肉気な笑顔を最後に、扉が音をたてて閉じていった。
 呆気にとられる暇もなく、兵士達は元王子を乱暴に門へと引き摺る。
 少しの着替えと少しの食料、10000Gという最低一月は生きられる金を渡されリヴァンが城を出ると、門前には子息達が集まっていた。
「たったこれっぽっちで、どうやって生活しろっていうんだ!」
「おい! 入れろ! 俺は伯爵家次期当主だぞ!!」
 現実を知り項垂れるか、現実を信じられず喚きたてるか。世間を知らない貴族子息達は、そのどちらかに別れていた。
 ―――皆が惚れた少女は、どこにもいなかった。
「あの娘は、幽閉されているそうですよ」
 眼鏡をかけた青年は、呆然としたリヴァンを睨み付けた。
「―――あなたのせいだ。あなたのせいで、僕達は!!」
 掴み掛かってくるそれをひらりと交わし、リヴァンは王都へと走り出した。
「待て‼」
 数秒して、眼鏡の青年がリヴァンを追いかける。一瞬遅れて、他の子息達も駆け出した。
 いきなり変わった生活に動揺する青年達は、必死に元王子を追い掛ける。身分を取り上げられ、家族から離され、今まで蔑んだ平民へと取り下げられ、愛する人にはもう会えない。何かに当たらなければやっていられなかった。誰かのせいにしなければ壊れそうな脆い心だった。
 生まれもった恵まれたモノは、彼等の自尊心ばかりを作り上げ、彼等自身の成長を妨げた。
 未来という脅威への怯えを怒りに変え、彼等はリヴァンを追い掛ける。
 例え、目の前にその姿が見えなくても。
 自分を守る為、自信を正当化する為。元王子を探し続けた。


*


 可哀想な奴等だと、初めて会った時に彼は思っていた。
 どれだけ頑張っても、想いは変わらず、結果は最悪な方向へと変わる。
 忠告はしたし、足掻いてもみた。
 それで結果はこれだ。
 自分の非力さに何度も唇を噛んだが、エスカレートしていくその行動は既に自業自得と言えた。
 だから、放置した。
 そして最後の手段を行使し、巻き込ませた。
 あれらは貴族として最悪の部類だと言えた。あれらがいれば将来的にこの国は駄目になる。せめて庶民の上に立つ者として最後の仕事をしようと思い、長年の計画に巻き込むことに決めた。
(まあ、でも可哀想なことしたな)
 これは愛に飢えていた彼等への最悪の仕打ちだろう。とはいえ、自分でどうにか出来たくせに、アドバイスを無視して何もしなかった彼等には同情しかできない。
 可哀想。それで終了。
(まあ、いっか。俺、あいつ等のこと好きじゃないし)
  寧ろ嫌いな部類、と心で呟く。
 彼は薄く笑った。
(まずはへそくりだして、王都を出ないとな)
 貴族の身を追われた青年達への同情はもう消えていた。あるのはこの先への期待だけ。
「自由になれる準備はもうしてある」
 青年―――リヴァンは周りをキョロキョロと見ると、王都を囲む壁をよじ登り出した。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」 「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」  私は思わずそう言った。  だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。  ***  私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。  お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。  だから父からも煙たがられているのは自覚があった。  しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。  「必ず仕返ししてやろう」って。  そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。

むしゃくしゃしてやった、後悔はしていないがやばいとは思っている

F.conoe
ファンタジー
婚約者をないがしろにしていい気になってる王子の国とかまじ終わってるよねー

婚約破棄? 私、この国の守護神ですが。

國樹田 樹
恋愛
王宮の舞踏会場にて婚約破棄を宣言された公爵令嬢・メリザンド=デラクロワ。 声高に断罪を叫ぶ王太子を前に、彼女は余裕の笑みを湛えていた。 愚かな男―――否、愚かな人間に、女神は鉄槌を下す。 古の盟約に縛られた一人の『女性』を巡る、悲恋と未来のお話。 よくある感じのざまぁ物語です。 ふんわり設定。ゆるーくお読みください。

辺境追放された「植物魔導師」の領地開拓 ~枯れ果てた死の大地は、俺の魔力で聖域(楽園)へと変貌する~

リーフレット
ファンタジー
​「植物魔法? ああ、農作業にしか使えないあの地味な魔法か」 ​帝国騎士団の専属魔導師だったアルトは、無能な二世皇太子レオンによって、一方的に追放を言い渡された。 アルトがどれほど魔導植物を駆使し、帝国の食糧難を裏から支えていたかを知らぬまま、彼は「戦闘に役立たない役立たず」という烙印を押されたのだ。 ​帝国を出て行き着いた先は、魔物が跋扈し、草一本生えないと言われる最果ての荒野。 死を待つだけの地。しかし、アルトは絶望するどころか、晴れやかな顔で笑っていた。 ​「やっと、気兼ねなく『植物』を愛でられる。……よし、ここを世界一の庭(楽園)にしよう」

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

真実の愛に婚約破棄を叫ぶ王太子より更に凄い事を言い出した真実の愛の相手

ラララキヲ
ファンタジー
 卒業式が終わると突然王太子が婚約破棄を叫んだ。  反論する婚約者の侯爵令嬢。  そんな侯爵令嬢から王太子を守ろうと、自分が悪いと言い出す王太子の真実の愛のお相手の男爵令嬢は、さらにとんでもない事を口にする。 そこへ……… ◇テンプレ婚約破棄モノ。 ◇ふんわり世界観。 ◇なろうにも上げてます。

完)まあ!これが噂の婚約破棄ですのね!

オリハルコン陸
ファンタジー
王子が公衆の面前で婚約破棄をしました。しかし、その場に居合わせた他国の皇女に主導権を奪われてしまいました。 さあ、どうなる?

処理中です...