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隣国へ足を踏み入れます。(見ても見なくてもいいです。がっかり注意)
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巷では、先日ルピナス王国の第一王子が王位継承権を剥奪されたことが噂になっている。
婚約者に暴力をはたらいた、いや国王の暗殺だ、などと詳細は様々に語られているが、実際のところは平民である彼らには分かりようもないことだ。彼らはただ、第一王子が王族を抜けた事実を餌に噂を楽しんでいる。
それは当のルピナス王国だけではなく、ここ、ガーベラ商業国でもそうだった。
「……へえ、そんなことが」
「おう、そうさ。なんだ兄ちゃん、知らないのかい?」
「最近まで森の方にいたからね」
「森だって⁉ 流石旅人だ! 俺だったらビビって足も踏み入れられねぇ!」
ガハハハハッ、と豪快に笑うと屋台商人の男は客へ商品を手渡した。
「へい、保存用クッキー二袋!」
「ありがとう」
「気にすんなよ! 金落としてくれてんだから‼」
商人に笑い返した旅人が、ローブを被り直しそのまま踵を返そうとしたその時、
「すまない」
二人の間に憲兵が入り込んだ。
憲兵は旅人の方を向いた。
「君、ローブを脱いでくれるか?」
「いいですけど……それで、何か?」
ローブを脱いだ旅人が問いかけるも、憲兵は無言で旅人を見ている。
旅人は白銀の長い髪ごと頭を掻いた。白銀の瞳は迷惑そうに憲兵を映している。
「あの……」
「……いや、すまない。気のせいだったようだ」
旅人は眉を潜めた。急いでいるかもしれない人間を呼び止め、気のせいだったと終わらすのはいかがなものだ。
そんな心の声に気づいたのか、憲兵は申し訳なさそうに首を掻いた。
「本当に申し訳ない。探し人に似ていたもので」
「探し人?」
「ルピナス王国の第一王子………いえ、元王子であるリヴァン様です」
「……その方を、何故?」
「上からの命でして。……兎にも角にも、本当に失礼いたしました!」
「いや、まあ、気にしてないんで」
その言葉に思わず破顔した憲兵は、懐から一枚の紙を出すと旅人へ渡した。
「もしこの方を見つけられたら、我々憲兵に報告していただきたいのですが」
「ええ、いいですよ」
「ありがとうございます! それでは、失礼」
深々と一礼すると、憲兵は旅人に背を向けた。そのまま、近くの人にも話しかけ紙を渡しているところを見ると、どうやらその人物にとても大事な用があるのだろう。憲兵の言葉から考えるに、犯罪者として、ではないようだ。もし犯罪者なら警戒するよう注意されるだろう。
商人に会釈し、旅人は歩きながら紙を見つめた。
そこに踊る名は『リヴァン』。王族ではなくなったからか、ミドルネームと姓は書かれていない。
彼の容姿をみてみると、一番に挙げられるのは『美青年』だろう。ルピナス王国の王家にしか現れないという綺麗な赤色を持っており、その髪は綺麗に短髪へと切り揃えられている。絵画越しとはいえ、赤く輝く意思の強い瞳からは、誰かを引っ張っていく者が持つ独特の雰囲気を感じることができる。
まさしく王族。選ばれた者だった。
それが何故、と思わなくはないが、そんなこと一庶民が知ったことではない。
旅人は宿へと入り、女将への挨拶もそこそこに自分の部屋へと入っていった。
それを見ていた一つの影に、彼は気づくことができなかった。
自室へと入ると、旅人はすぐに盗聴盗撮対策の魔道具をつけ、ベッドへ突っ伏した。
「あー、疲れた」
疲労を滲ませながらも仰向けになると、旅人は憲兵から貰った紙を掲げた。
「……流石、俺。よく動揺しなかった」
はあ、と大きく溜め息をつく旅人――否、ルピナス王国元第一王子リヴァン。現在はミトと名乗る彼の最近は大忙しだった。
まず、森に隠したへそくり数ヶ所を掘り起こし、獣や魔物に襲われ、倒し、買い貯めていた空間魔法付きの鞄にそれをいれ、森を歩き回り、小さな町に入った。そこで素材となった獣や魔物をお金にかえ、冒険者登録。すぐに村を出てまた歩き回り、ようやく大国であるガーベラ商業国に入ることができた。ここまでで約二ヶ月である。ハイスピードで来たため、ようやく今日、宿という安全安心な回復場所で寝ることができるのだった。
(長かった。本当に長かった……)
一ヶ月なんてあっという間、と思っていたが、実際はその一ヶ月は随分と過酷で長々しく感じた。それが二ヶ月分である。ミトは完全に嘗めていたのだ、命の危険に晒される毎日というものを。
とはいえ、なんとか乗り越えられたのでミトとしては及第点だ。
それよりも、だ。
先程、憲兵に渡された紙をもう一度見た。髪や瞳の色は違うが、顔は正しくリヴァン……ミトそのものだ。
顔をじっと見つめられた時は、それはそれは焦ったものだ。どれだけ格好が変わろうと顔だけは変えられない。なんとかバレなかったから良かったものの、これからは慎重に行動しなくてはならない。
「……いっそ顔に傷でもつけるか?」
(いやでも、痛いしな……)
悩みに悩むミトだったが、だんだんと考えるのが面倒になってきた。
「まあ、明日にでも考えるか」
まだ昼時だが、今日は夜中に行動しなくてはならない。
体力を回復するために、ミトは瞼を閉じた。
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ほら見ろ!作者が調子のった結果がこれだよ!!
この単細胞脳め!
と、美少女に可愛く罵られたいですね。
正直ここまで評価されるとは思っても見ず、ビックリです。どうせ数人に見ていただける程度だろうなと思ってました。こんなつもりじゃなかった。
本当にありがとうございます。
お気に入りの数や感想等にビビっていると、「続きかー」と可哀想な頭が思ってしまって手が勝手に動きデータを漁ってたら、目が勝手にこんなのを発見してしまいした。
お目汚し、本当にごんなさい。
婚約者に暴力をはたらいた、いや国王の暗殺だ、などと詳細は様々に語られているが、実際のところは平民である彼らには分かりようもないことだ。彼らはただ、第一王子が王族を抜けた事実を餌に噂を楽しんでいる。
それは当のルピナス王国だけではなく、ここ、ガーベラ商業国でもそうだった。
「……へえ、そんなことが」
「おう、そうさ。なんだ兄ちゃん、知らないのかい?」
「最近まで森の方にいたからね」
「森だって⁉ 流石旅人だ! 俺だったらビビって足も踏み入れられねぇ!」
ガハハハハッ、と豪快に笑うと屋台商人の男は客へ商品を手渡した。
「へい、保存用クッキー二袋!」
「ありがとう」
「気にすんなよ! 金落としてくれてんだから‼」
商人に笑い返した旅人が、ローブを被り直しそのまま踵を返そうとしたその時、
「すまない」
二人の間に憲兵が入り込んだ。
憲兵は旅人の方を向いた。
「君、ローブを脱いでくれるか?」
「いいですけど……それで、何か?」
ローブを脱いだ旅人が問いかけるも、憲兵は無言で旅人を見ている。
旅人は白銀の長い髪ごと頭を掻いた。白銀の瞳は迷惑そうに憲兵を映している。
「あの……」
「……いや、すまない。気のせいだったようだ」
旅人は眉を潜めた。急いでいるかもしれない人間を呼び止め、気のせいだったと終わらすのはいかがなものだ。
そんな心の声に気づいたのか、憲兵は申し訳なさそうに首を掻いた。
「本当に申し訳ない。探し人に似ていたもので」
「探し人?」
「ルピナス王国の第一王子………いえ、元王子であるリヴァン様です」
「……その方を、何故?」
「上からの命でして。……兎にも角にも、本当に失礼いたしました!」
「いや、まあ、気にしてないんで」
その言葉に思わず破顔した憲兵は、懐から一枚の紙を出すと旅人へ渡した。
「もしこの方を見つけられたら、我々憲兵に報告していただきたいのですが」
「ええ、いいですよ」
「ありがとうございます! それでは、失礼」
深々と一礼すると、憲兵は旅人に背を向けた。そのまま、近くの人にも話しかけ紙を渡しているところを見ると、どうやらその人物にとても大事な用があるのだろう。憲兵の言葉から考えるに、犯罪者として、ではないようだ。もし犯罪者なら警戒するよう注意されるだろう。
商人に会釈し、旅人は歩きながら紙を見つめた。
そこに踊る名は『リヴァン』。王族ではなくなったからか、ミドルネームと姓は書かれていない。
彼の容姿をみてみると、一番に挙げられるのは『美青年』だろう。ルピナス王国の王家にしか現れないという綺麗な赤色を持っており、その髪は綺麗に短髪へと切り揃えられている。絵画越しとはいえ、赤く輝く意思の強い瞳からは、誰かを引っ張っていく者が持つ独特の雰囲気を感じることができる。
まさしく王族。選ばれた者だった。
それが何故、と思わなくはないが、そんなこと一庶民が知ったことではない。
旅人は宿へと入り、女将への挨拶もそこそこに自分の部屋へと入っていった。
それを見ていた一つの影に、彼は気づくことができなかった。
自室へと入ると、旅人はすぐに盗聴盗撮対策の魔道具をつけ、ベッドへ突っ伏した。
「あー、疲れた」
疲労を滲ませながらも仰向けになると、旅人は憲兵から貰った紙を掲げた。
「……流石、俺。よく動揺しなかった」
はあ、と大きく溜め息をつく旅人――否、ルピナス王国元第一王子リヴァン。現在はミトと名乗る彼の最近は大忙しだった。
まず、森に隠したへそくり数ヶ所を掘り起こし、獣や魔物に襲われ、倒し、買い貯めていた空間魔法付きの鞄にそれをいれ、森を歩き回り、小さな町に入った。そこで素材となった獣や魔物をお金にかえ、冒険者登録。すぐに村を出てまた歩き回り、ようやく大国であるガーベラ商業国に入ることができた。ここまでで約二ヶ月である。ハイスピードで来たため、ようやく今日、宿という安全安心な回復場所で寝ることができるのだった。
(長かった。本当に長かった……)
一ヶ月なんてあっという間、と思っていたが、実際はその一ヶ月は随分と過酷で長々しく感じた。それが二ヶ月分である。ミトは完全に嘗めていたのだ、命の危険に晒される毎日というものを。
とはいえ、なんとか乗り越えられたのでミトとしては及第点だ。
それよりも、だ。
先程、憲兵に渡された紙をもう一度見た。髪や瞳の色は違うが、顔は正しくリヴァン……ミトそのものだ。
顔をじっと見つめられた時は、それはそれは焦ったものだ。どれだけ格好が変わろうと顔だけは変えられない。なんとかバレなかったから良かったものの、これからは慎重に行動しなくてはならない。
「……いっそ顔に傷でもつけるか?」
(いやでも、痛いしな……)
悩みに悩むミトだったが、だんだんと考えるのが面倒になってきた。
「まあ、明日にでも考えるか」
まだ昼時だが、今日は夜中に行動しなくてはならない。
体力を回復するために、ミトは瞼を閉じた。
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と、美少女に可愛く罵られたいですね。
正直ここまで評価されるとは思っても見ず、ビックリです。どうせ数人に見ていただける程度だろうなと思ってました。こんなつもりじゃなかった。
本当にありがとうございます。
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お目汚し、本当にごんなさい。
応援ありがとうございます!
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