妖言惑衆

奏琉

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開ききった扉の奥から現れたのは、ヴェールのようなものをかぶった厳かな雰囲気を醸し出す人のような何か。


人だと断言できない理由は、ヴェールに多少隠されている獣のような耳。


そして、背後でゆっくりと揺れている尻尾のようなもの。


『縁、、、』


隣から聞こえてきた声に、振り向くと男の子が切なそうな表情をしていた。


「あの人は、あなたの知り合いなの?」


まるで、私がいたことを忘れていたかのように男の子はハッと目を見開きこちらに目線をやった。


『あ、あぁ。大切な、、、家族なんだ。』


本当に大切な人なんだろう。


切ない表情の中に、愛しさを感じる。


私も母にそのような感情を持ってもらえてるのだろうか。


『これ以上ここにいると遅くなる。帰りたいんだろう?』


もちろん帰りたいに決まっている。


だが、私の性分として好奇心が押し寄せてくる。


『もう、どうせここに来ることはないんだ。俺たちのことは気にするな。』


そうかもしれない。


いや、実際そうなのだろう。


あまり遅くなると、外出さえさせてもらえなくなるかもしれない。


「帰りたいけど、その前に一つだけ。名前を教えてくれない?」


名前だけでも知っていればまた会えるかもしれない。


私は一縷の望みをかけて彼の答えを待った。


『、、、神童  結だ。』


神社にいそうな名前。


答えてくれたことは素直に嬉しい。


「私は、佐藤   藍裡。また会えることを祈ってるわ。」


二言三言ほど言葉を交わし、獣人(?)に背を向け歩き始めた結のあとを追う。


鳥居の前に立つ結が、狐面を付け、右手をスッと掲げた。


その手には鈴。


《リーン》


結が鈴を鳴らすと、神社を包んでいた雰囲気が変わった気がした。


『このまま、進んでいけば五分とせずに元の道に戻れるはずだ。』


やっぱり、厳かな雰囲気を放っている獣人(?)と結という男の子のことをもっと知りたい。


だが、私なんかが介入できる問題ではないだろう。


一応同じ学校なのだから、また会う機会はなくはない。


「ありがとう、またね。」


『、、、じゃあな。』


また、と言ってくれなかったのはもう私と会うつもりはないということだろうか。


少し寂しく感じる。


後ろ髪を引かれる思いで私は再び鳥居の下を歩き始めた。
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