主人公は自称勇者の末裔?? いいえ、魔王です!!

奏琉

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魔王、役割を放棄する。

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「魔王様、正気なのですか!貴方がこの城を空けるなんてヘブっ!?」


ギャンギャンと騒ぎながらなんとか私の視界に入ろうと動き回る鴉のような羽根をもつ魔物。


それだけならまだしも、必至になりすぎて積んであった書物につまづき派手にひっくり返る。


「煩いぞ、クロウ。私の決定に逆らうというのか?」


ひたりと私が目線をやるだけで竦み上がる魔物。



もといクロウ。


クロウは何百年も私に仕えているがそれでもなお私から溢れ出る魔力に竦み、どこか一線を引いているかのように接してくる。


それが、嫌なのだ。


なにも私は無駄な殺生を好む訳では無い。


実際、ここに私を倒しに来た勇者を名乗る者達でさえ私は殺してなどいないのだ。


普段の2割程度の力で相手をし、殺すことはせずにこの魔王城に来た記憶だけを抜き取る。


そして、適当な森へ捨てる。


我ながら完璧な対応だと言えるだろう。


そんな行動のせいで人の暮らす村ではこんな噂が出来てしまったらしい。


魔王城にたどり着いた者は誰ひとりとしていない。


なぜなら魔王がその強大な力をもって魔王城を隠しているから。


魔王城に行くためには、真の勇者でなくてはならない。


魔王の持つ闇に対抗できるような明るい、明るい陽の力を持つ勇者でなければ、、、


そんな噂をくだらないと笑い飛ばし、私はある男に思いを馳せる。


ただ一人、私と対等な立場で接することができるあの勇者。


あれは、六十年程前のことだった。


仲間も連れずにふらりとやってきた奴は私とサシで。


一対一で戦いたいと言ったのだ。


相も変わらず、私は力を抑えたままだったがそれでも奴は私に劣らない戦いぶりを見せた。


たしか、その勇者の名前は、、、


ジン=エフォート。


きっと奴はもう死んでいるか、生きていたとしても老人だろう。


人間の生は短いものだ。


それでも、奴と交わした約束を忘れることはできない。


だからこそ。


「私は本気だ。そのためにも、ここは封鎖する。」


城の大広間に予め呼んでおいたこの城に居座る魔物達に決定を下すために、私は足を進める。


「魔王様よ!」


「我らが主よ!」


「俺たちに人を滅ぼす力を!」


口を開けば人頼み。


ここにいるのは戦う術を持たぬか弱き魔物か、中級以上の力と理性を持った魔物達。


下級の魔物は、理性を持たず本能に忠実なためここにはいない。


おそらく、普段人々が相手にしているのは下級魔物なのだろう。


本当に恐ろしいのは中級からだというのに平和な奴らだ、と今までに何度思ったことか。


「皆の者よ、我の言葉を聞け。」


ガヤガヤと騒がしかった広間がシンと静まる。


「今日をもって、魔王城は封鎖する。いかなる理由があったとしても、立ち入りは禁止だ。そして、我は人と行動を共にする。これから先、人を襲うということが我に楯突くことになるとしっかり覚えておけ。」


返事は聞かなくたっていい。


どうせNOとは言えないのだから。


「待っていろ、ジンよ。約束は必ず、、、」


|いつか必ず再戦を|
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