【悲報】JKヒモ勇者様、初回配信中にうっかり『氷帝』と呼ばれた美少女配信者を助け、エンシェントドラゴンを一閃してバズってしまう。

シンギョウ ガク

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第24話 調査

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「配信スタンバイ。各種データチェック」


 ダンジョンの入口前のロビーでひよっこが、耳に付けたいんかむでダンジョンスターズ社の配信制御室と交信している。


 数台の撮影どろーんが浮かび上がり、俺たちの周りを飛び回り始めた。


「録画されてます? データー収集は問題ない?」


 とりあえず、俺の依頼された仕事は、ダンジョンの中に入るのと、ひよっこが対処できそうない魔物が現れた時に倒すという二つ。


 待ち時間が長いので、先ほど手付としてもらったチーズケーキバーの袋を破り、口に運んだ。


 ふむ、チョコバーとはまた違った濃厚な味だな。


 これはこれで、栄養を摂取できる物だ。


 味も悪くない。


 今回の依頼の成功報酬が出たら追加で購入を検討してもいいかもしれんな。


 すぐに食べ終わってしまい、新たな袋を破ろうとしたところでひよっこから声がかかった。


「三郎様、あまり食べ過ぎると、葵様のお弁当が食べられなくなりますよ」


「問題ない。今食べているのは、補給食であって、食事ではない。それよりも準備はできたか?」


「はい、準備はできました。いつでも行けます」


 袋を開けようとしたチーズケーキバーを葵の弁当が入ったビニール袋に戻す。


「なら、行くとしよう」


 ひよっこを連れ、ダンジョンの中に三度足を踏み入れることにした。


 撮影どろーんの羽音が響く中、照明の明かりに照らされた俺たちはダンジョンの中を進む。


「今のところ魔物らしい気配はないが」


「送られてきているデータも正常ですね。魔素の上昇は見られません」


「本当に俺がダンジョンに入ると、魔素が上昇し、強力な魔物が転移してくるようになるのか?」


「それを確認するための探索ですよ。どうしたらいいですか? もっと奥へ進みますか?」


 先頭を注意深く進むひよっこであるが、さすがに探索者経験が長いこともあり、隙だらけのド素人だった葵とは雲泥の差だ。


「お前に任せる。自由にしろ。俺は後ろを付いていく」


 プラーナの使い方や精霊との対話ができるようになり、一皮むけたとは思うが……。


 社長業が落ち着かない限り、戦士としての復帰はしないつもりだろうな。


 わりとそっちでも才能を持ってる様子だし。


 部下たちもひよっこの判断に異論は挟まなかったし、相当頼りにされているというところか。


 でも、本心としてはどっちがやりたいんだろうな。


 ちょうどいい、聞いてみるとするか。


 本人のやる気によっては、俺の弟子としていろいろと指導をしてもいい逸材なわけだし。


「歩きながらでいいから答えろ」


「え? あ、はい」


「お前、探索者と社長。どっちがやりたい?」


 先頭を進むひよっこの足が止まる。


「止まるな。進みながら答えろ」


 俺の指示に従い、ひよっこは再び歩き始める。


「ご質問の意味が理解できません。わたくしはすでに探索者を引退した身。社長業を――」


「そうか。この前、プラーナの使い方を教えた時の顔は戦士を目指す者の顔だったからな。気になっただけだ。そうか、社長業に――」


「……実は迷っています。三郎様からプラーナ式の戦闘術や精霊との対話の仕方を教えていただき、自分はまだ探索者としてやれるのではと思い直しておりまして――」


「迷うなら両方やればいいだろう。別に引退など撤回すればいい」


 顔も知らぬ人のことなど、そんなに気にする必要などないのに。


 真面目過ぎるのがひよっこの欠点か。


「いちおう、エンシェントドラゴン事件の責任を取っての引退という形なので、撤回は不誠実かと」


「なら、うちのチャンネルで新人探索者としてやり直せ。それなら探索者をやれる」


「バレたら、三郎様にご迷惑が」


「俺は知らなかったで押し通すつもりだから問題ない」


 顔も知らんやつの話など、無視すればいいしな。


 貴重な戦士の器を持つひよっこを社長業だけに縛り付けるのは、この世界の損失だと思う。


「三郎様は何者にも縛られない自由な方ですね……。うらやましい」


「お前はいろいろと背負いすぎだろう。お前がいなくても世界は何とかなってると思えばいいだけだ」


 俺は元の世界では勇者と呼ばれ、魔物や魔王軍との戦いに明け暮れた身だが。


 自分が勇者をやめても、代わりを務める者はいくらでもいた。


 だからこそ、思いっきり戦うことができたし、どんな魔物や魔王軍にも大群にも怯むことなく挑めたのだ。


 ひよっこもそれくらいに割り切ってもらいたいものだ。


 そんなことを話しながら歩いていると、前方に魔物の気配を感じた。


「いるぞ」


「はい、大丈夫やれます」


 愛用の剣を抜いたひよっこは、気配のする方へ駆けた。


 周囲の様子に変化がないか、意識を研ぎ澄ますが、変った様子は感じ取れなかった。


「問題ありません。わたくしがやります!」


 先行したひよっこが引き抜いた剣がキラリと明かりを反射した。


 闇の奥から姿を現したのは、人型の魔物ゴブリンだった。


 あれならひよっこに任せても問題あるまい。


「数値が!? 数値が急上昇してる! 魔物が引き金!?」


「なんのことだ?」


「魔素濃度の数値です! 今、急上昇してるらしいです! この前を遥かに超える数値が出てるそうで、計測機器の限界を振り切ったとのこと!」


「濃度が…‥‥」


 そう言えば、ずいぶん精霊たちも騒いでる様子だな。


 あんな魔物くらいで騒ぐのは珍しいが……。


 魔素の影響か。


 周囲を飛んでいる精霊たちが、落ち着きなくソワソワしていた。


 このダンジョンはどうなっているんだ。


 凶悪なスライムは大量に発生するし、たかがゴブリン程度で精霊たちが落ち着きをなくすし、どこかおかしい。


 俺があっちの世界で幾たびも探索してきたダンジョンとは根本的に違うものなのかもしれない。


「三郎様!」


 ゴブリンを倒したひよっこが、例の転移の魔法陣が発生した場所を指差した。


 光が強くなると、魔法陣から新たな魔物が姿を現す。


「三つの頭を持つ犬……。ケルベロスだ」


「深層階の魔物です……! 多数の探索者を投じて倒す魔物ですが――アリー姉さん、力を貸して!」


 ひよっこが連れているフロストフェアリーに声をかけ、魔法の詠唱に入る。


「氷精の守護者よ! 我が意志と共にその怒りを解き放て! 氷凛新星フロストノヴァ


 魔法が発動すると、ケルベロスの目の前で爆発が起こり、周囲の空気が一気に凍り付いた。


 ケルベロスは身体の半分が凍り付いて動きを止められる。


「ガァアアアア!」


「動きが止まれば相手ではない! ガイアさん、お力をお貸しください!」


 生命の精霊ガイアを取り込み、プラーナをまとったひよっこが、剣を握り直すと以前とは比べ物にならない速度でケルベロスに詰め寄る。


 短期間でかなり使いこなしているようだな。


 あの様子だと、ケルベロスだろうと、さして難敵というわけでもなさそうだ。


 ひよっこは、動きが止まったケルベロスの首を次々に剣で斬り落とす。


 炎を吐き出そうと息を吸い込んだケルベロスの顔を真っ二つに断ち切った。


 3つの頭を失い絶命したケルベロスは、霧散して消え去った。
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