【悲報】JKヒモ勇者様、初回配信中にうっかり『氷帝』と呼ばれた美少女配信者を助け、エンシェントドラゴンを一閃してバズってしまう。

シンギョウ ガク

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第26話 悪夢の再来

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 光が納まりつつ中、魔法陣から姿を現したのは巨大な緑色のスライムだった。


「ひよっこ! 下がれ! こいつはお前が敵う相手ではない!」


 俺の脳裏に攻撃を受けるたび増殖し、多くの兵士や戦士たちを体内に取り込み、溶かしていったあの最強のスライムの記憶が蘇る。


 今までダンジョンで見たやつは、増殖分裂後の小さなスライムっぽいやつだったが……。


 この大きさは、世界の2割を灰燼に帰したスライムに初対峙した時の大きさに酷似している。


 だとすれば、下手に刺激しないで、全力の攻撃で一気に消し去らねばならん!


 俺は腰に差した剣に手を掛け、攻撃する隙を狙う。


「ジャイアントスライム程度、わたくしの敵ではありません! 三郎様はそこで見ていてくださいませ!」


「待て! ひよっこ! 動くな! 止まれ!」


 俺の制止を振り切ったひよっこが、巨大なスライムに向かい剣を引き抜き挑みかかった。


 ひよっこの気配に気付いたスライムが、不気味な明滅を繰り返す。


 こっちの世界の連中は、スライムの怖さを知らないのかっ! 不用意に飛び込めば――


「神聖なる光精よ。暗闇を払い、光明の加護をもたらさん! 煌きの盾シャイニングシールド!」


 勝手にスライムに挑んだひよっこと自分に、光の精霊の力を借りて、強力な防護魔法を展開する。


 以前、葵にかけた防護魔法よりさらに強力な防護力を付与するものだが……。


 正直、光の精霊の力の弱いダンジョン内では、最強スライムの溶解液を何度も耐えられる代物ではない。


 不安しかないが、ないよりはマシだ!


「三郎様、ありがとうございます!」


「ひよっこ! 礼はいいから、その防護魔法があるうちにこっちに戻れ! そこにいたら死ぬぞ!」


「大丈夫! プラーナ式戦闘術やアリー姉さんの力を借りられるようになったわたくしは、そう簡単に倒されません!」


 接近戦を挑もうと駆け寄るひよっこに対し、巨大なスライムが不気味な明滅を止めると、身体を震わせ始める。


「溶解液がくるぞ! すぐに距離を取って、何が何でもかわせ! 絶対に浴びるな!」


「大丈夫! やれます!」


 違う! そういう意味じゃない! なんで、この世界の連中はスライムの凶悪さを理解しないんだ! 


 溶解液を浴びるために突っ込んでいくひよっこを助けるため、とっさにプラーナを発動させた自分の身体が動いていた。


 視線の先では、身体を震わせたスライムの身体が縦に大きく伸び、緑色にけばけばしく発光する溶解液が周囲へ飛び散った。


「きゃあああっ!?」


 飛び散った溶解液が、ひよっこに掛けた防護魔法の障壁に当たり、勢いよく煙を吹き上げる。


 こっちの想定以上の速さで障壁が溶解してる!


 やはり、光の精霊の力が弱いため、外よりも効果が低いっ! 


 あとすこしで障壁が崩壊する寸前、なんとかひよっこを抱きかかえて助けることに成功した。


「馬鹿野郎! だから、下がれと言った! 溶解液の一発で最高強度の防護魔法はボロボロだ!」


「あの……スライムはなんですか……あんなの見たことないです……。三郎様の防護魔法がいともたやすく崩壊するだなんて……」


 抱きかかえられたひよっこは、目の前で起きたことが理解できないのか、呆然自失の状態だった。


「お前らはスライムの怖さを知らなすぎだぞ! 俺の制止を振り切って無防備に突っ込む、馬鹿がいるかっ!」


「ですが、ジャイアントスライムがあのような強力な溶解液を出すなんて報告は――」


「葵の時もそうだったが、俺とお前らではスライムに対し、認識の違いが甚だしいのか?」


「認識の違い? 言ってる意味が――」


「まぁ、今はそんな話をしてる余裕はない! お前の敵意にスライムが反応してしまったからな! 一旦退く!」


 俺はひよっこを肩に担ぐと、スライムから距離を取るべく、相手の動きを注意深く見る。


 溶解液を外したスライムは、地面に飛び散った溶解液を啜り集めているように、不気味な明滅を繰り返し始めた。


 今ならこっちを追って捕食してくる感じはないだろう。


 退くなら今しかあるまい。


「全速で動く。しっかり掴まれ!」


「え、あ、はい――っ!」


 再び溶解液を放とうとしていたスライムから、俺たちは全速力で逃げ出した。
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