おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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アルガド視点

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 ※アルガド視点

 待ちに待っていた報告を持ってきたヴィケットが応接間から出ていくと、隣に居たマリアンを膝の上に座らせる。

「マリアン、ついにわたしたちが自由に暮らせる環境が整いそうだ。父上は王座を目指し宰相閣下と権力闘争、婚約者だったメラニアは婚約破棄した上ダンジョン内で死亡。あと、ブラックミルズで妙な人気を持っていたグレイズも死んだとなれば、この地はわたしが全て自由に決められる地になったぞ」

「おめでとうございます。これで、私との結婚も進められるということですね。これは、お祝いをせねばなりません」

「祝いなど後で良い。わたしはお前と一緒に贅沢三昧の生活を送れることを今は噛みしめたいのだ」

「アルガド様……。私も同じ想いです」

 膝上に座り甘えるようにわたしに身体を寄せてきたマリアンからは甘い香りが漂って来ていた。

 これからはギルドの仕事はアルマに任せ、闇市はヴィケットにやらせ、わたしはマリアンともに気に入った平民女を屋敷にあげて自堕落な生活を送ることにしよう。

 その前に、アルマにだけは早急にグレイズが死んだ事実を伝えねばならんな。

 今一つ、売り上げの誤魔化しに積極的な協力を見せないアルマには、グレイズという心の支えがあるのだろう。

 だが、あいつが心の支えとしているグレイズは残念な結末を迎えた。

 亡骸すらダンジョンに取り込まれ、地上に帰ることない。

 グレイズが帰ってこないとなれば、アルマも抵抗を諦めて、わたしの資産作りに手を貸すしかなくなるだろう。

 なにせ、すでに帳簿を書き換えているため、犯罪に手を染めてしまっている。その事実を糊塗するにはわたしに協力するしか道が残っていない。

「ククク、万全に自堕落な生活を送れるように手はずを整えてくる。マリアン、今から出かけるから着替えを持て」

「分かりました。すぐにお持ちいたします」

 わたしの頬に軽く接吻をするとマリアンが膝の上から降りて着替えを取りに行くため応接間を出ていくのを見送った。

 
 馬車に揺られ、冒険者ギルドに到着すると、ダンジョンが閉鎖されたことで一階の喫茶スペースには冒険者たちが大量にたむろっていた。

 そんな中をわたしが執務室へ行くため通り抜けようとすると、姿を見つけた冒険者たちが群がってくる。

「アルガド様、いったい何時になったらダンジョンの閉鎖はかいじょされるんですかっ! このままだとこっちは商売あがったりだ!」

 冒険者の男がわたしに喰ってかかるように突っかかってくる。

 すぐに冒険者ギルドの職員が冒険者を押さえ込んでいた。

「すまんな。その件をアルマと話し合おうと思ってきた。衛兵隊からダンジョン内の様子の報告が上がってきてな。封鎖は近いうちに解除される見通しだ。しばしの待機を頼む」

 わたしは冒険者たちにそう告げると、二階の執務室へあがっていった。


 執務室に入ってしばらくすると、職員によって呼び出されたアルマが入室してくる。

「お呼びのようで……」

 アルマは寝不足なのか、眼の下にクマをこしらえた顔でわたしに会釈をしてきた。

「疲れているようだな。アルマにはダンジョン封鎖に伴う色々な苦情処理を任せていてすまないとは思う。だが、安心しろ。ダンジョンの封鎖を解く時期がきたことを衛兵隊から報告を受けたのだ。これにより、明日の朝よりダンジョンの封鎖を解除しようと思うのだが……」

 グレイズたちが金色宝箱ゴールデンボックスに転移させられ、ダンジョンの閉鎖となって心労が重なり沈んでいたアルマの顔にパッと明るさが差し込んだように見えた。

 だが、その封鎖解除の理由が、アルマが心の支えにしているグレイズの死亡だと知った時のアルマの顔が楽しみである。

 わたしは執務机の上に肘を突くと組んだ手の上に顎を置いた。

「封鎖解除!? ほ、本当ですか。ま、まさか、グレイズさんたちが無事に帰還されたのですか!?」

「いや、残念だが逆の結末だ。君が期待していたグレイズたちの帰還は叶わず。メラニア捜索隊は金色宝箱ゴールデンボックスによって第二二階層まで飛ばされ、ノーライフキングの棲家ですべての者が魂を吸われ倒れていたと報告が上がってきている。百名以上の魂を喰ったノーライフキングも大人しく眠るだろうし、金色宝箱ゴールデンボックスの低層階発生も確認されなくなったため規制を解除しようと思う」

「え……。今なんと言われましたか……?」

 呆けた顔でわたしの言葉を聞き逃したアルマに対し、強く机を叩いて大きな音を出し、事実を突きつける。

「何を呆けておる!! グレイズは死んだと申したのだ!! アルマ!」

「ひぃ! そ、そんなぁ! グレイズさんやみんなが死んだなんて嘘です!」

 大きな音に怯えたアルマであったが、グレイズが死んだことを受け入れられないのか、反抗する気配を見せてきていた。

 わたしは最後の抵抗をするアルマに引導を渡すべく、指をパチンと鳴らして外に控えているマリアンに例の物を持ってこさせる。

 外に控えていたマリアンがグレイズたちの遺品を抱えて入室してきたかと思うと、アルマの前にそれらを放り投げていった。

「これが、貴方が待ち望んでいた人の遺品よ」

「これは……。メリーさんやファーマちゃん、カーラさん、アウリースさんの装備まで……はっ!! グレイズさんの背負子があ……る……。うそぉおおお!! 嘘よ! うそぉお」

 マリアンが放り出した遺品の中にグレイズが愛用していた背負子を見つけたアルマが絶叫して泣き崩れていった。

「グレイズはノーライフキングによって死んだ。これは確定事項だ」

「イヤァあああ!! 嘘よ! グレイズさんが死ぬなんてうそぉおおお!!」

 背負子を抱いて泣き叫ぶアルマに対し、更に追い打ちをかける言葉を投げかけることにした。

「ということだから、アルマ。君が操作してくれている冒険者ギルドの帳簿の件だがアレは冒険者への配分減らしてわたしの口座に入る額を増やしておいてくれたまえ。もちろん、嫌だとは言わなせないぞ。なにせ、君はすでに『共犯者』であるしな。領主によって吊るされるのは嫌だろう?」

 背負子を抱いて泣き叫んでいたアルマが不意に泣き止んだかと思うとわたしを見ていた。

 その顔は青白くさながら幽鬼のようにも見える。

「そ、そんな……。アレはアルガド様が領主様から許可をもらってくれると言ったではないですか……」

「すまんな。父上はきっと誤魔化しは許されん。かといって、アルマを悪者にするのは忍びない。君が頼りにしていたグレイズも死んだことだし、君の身柄を守ってあげられるのは、わたししかいないという事実を受け入れたまえ。わたしは協力者には相応の対価を払う気前の良さは持っているつもりだ」

「そんな、そんなのって……。グレイズさん、グレイズさん……私はどうしたら……。なんで、こんなことに……嘘、悪い夢。最近寝てないから悪い夢を見ちゃったんだわ……。きっとそう。起きたら……」

 ブツブツと視点の合わない目で虚空を見ながら喋るアルマに対して、再び机を叩いて大きな音を出し強制的に覚醒させる。

「アルマっ!! 死にたいのか! 生きたいのか! 今すぐに選べ!!」

 大きな音で我を取り戻したアルマが、カタカタと身体を振るわせ涙を流す。

「ひぐぅ! そんなぁ、そんなぁ。誰か、助けて。お願い誰か……」

「もう、お前が縋るのはわたししかいないのだ! わたしの言う通りに帳簿を作れ! それが、君が生き残る道だ」

「いやぁああ!!!!」

 精神的に追い込んだアルマが絶叫を上げると、白目を剥いて床に倒れ込んでいってしまった。

 いろいろなことが発生して脳の情報処理が追い付かなくなったと思われる。

「アルガド様、アルマはこれで自ら協力するでしょう。ただ、しばらくは私の手元でメイドたちに監視させ自害しないように面倒を見ますがよろしいでしょうか」

「ああ、マリアンには手間をかけさせるが、アルマが使えるようにしておいてくれ。冒険者ギルドはアルマが仕切ってくれないとわたしに面倒事が圧しかかるからな。頼んだ」

「はい。承知いたしました。アルマには色々と言い含めておきますのでご安心を」

「任せた。わたしは規制解除の手続きを進めるので、マリアンは先に帰っておいてくれ」

 恭しく頭を下げたマリアンは、気絶したアルマを担ぐと執務室を後にしていった。

 こうしてブラックミルズのダンジョンの規制は解除され、通常の冒険者ギルドの営業が再開されることになった。
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