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グスタフ王太子と婚約をすると、コーデリアの不安を余所に結婚へ向けトントン拍子で話が進んでいくことになった。
王太子との結婚ということで、結婚と同時にコーデリアは王太子妃となるため、宮中作法、礼儀作法、諸外国との関係の基本的知識、国内の貴族序列など覚えることが多数にのぼっている。
王立貴族学院時代に貴族の子女における礼儀作法や夜会での立ち振る舞い、ダンスなどは習ってきていたコーデリアであったが、王家ともなるとそれら貴族とはまた別の作法や立ち振る舞いなどがあることを思い知らされていたのだ。
そんな厳しい王太子妃教育が施されているコーデリアの居は、王都のレンフォード公爵家の邸宅から、王宮内に作られたグスタフ王太子府に移されていた。
ただ、肝心の婚約者は婚約のパレードにこそ馬車に同乗していたが、未だコーデリアと寝所を共にすることもなく、毎夜フラフラと遊び歩いていた。
「また、グスタフ様は外泊されておるのですか……」
「はい、お戻りになられておりません。どうやら、コーデリア様の兄上に当たるフェルディナンド様の邸宅でお過ごしのご様子とのことです」
王太子妃教育を終えて、部屋に戻ってきたコーデリアが、側付きの女官に婚約者の居場所を問うと、いつも通りの言葉が戻ってきていた。
婚約して半年が経ち、そろそろ結婚式の日取りも決まろうかというこの時期に、婚約者がフラフラと外泊しているのは外聞が悪い。
コーデリアとしても、もとより愛情のある婚約ではなかったが、せめて女遊びは結婚を終えてからにして欲しいと感じているのだ。
しかも、女遊びをしている場所がよりにもよって異母兄であるフェルディナンドの邸宅ときたら、コーデリアとしても面目を潰された格好である。
すでに心ない者たちからは、『お飾り王太子妃候補』というありがたい別名をもらい、王宮内でも冷たい視線に晒されているコーデリアであった。
婚約者のグスタフ王太子自身もコーデリアの容姿を気に入らなかったようで、王太子府の寝室に戻ることは非常に稀なことになっている。
だが、王と王妃は彼女のことをいたく気に入り、問題の多い王太子を御することを期待してくれているのだ。
そんな二人の期待と父が守った国の未来をより良い方向へ向かわせることだけが、辛く厳しい王太子妃教育を受けるコーデリアの支えになっていた。
「また、女性ですか?」
「はい、こたびは長く続いているようです。グスタフ様もいたく気に入っておられるとか……」
側付きの女官は雇い主であるコーデリアと同じようなため息を吐く。
彼女としても雇い主のコーデリアが王太子妃となれなければ、給料は滞り、最悪職を失い生活が成り立たなくなる。
そのため、婚約者であるグスタフ王太子の女性関係に関しては神経を尖らせており、なにかとコーデリアへ注進をしてくれている存在であった。
「いっそ、婚約を破棄して頂けるとありがたいのですが……。すでにグスタフ様のお気持ちはわたくしから離れているのは明白ですし……」
「コーデリア様、王様と王妃様がそのようなお言葉を聞かれたらお嘆きになりますぞ。あのお二人にはコーデリア様だけが頼りの存在なのですから……」
「そうでしたわね。あのお二人の期待を裏切るわけにいきませんでした。仕方ありません。これより、グスタフ様をお迎えに参ります。馬車の支度を」
「すでに用意を済ませております。コーデリア様のお出ましをお待ちしているだけでしたので、すぐに参りましょう」
女官はすでに馬車を待たせていたようで、コーデリアの手を引くと、大急ぎで馬車に乗り、レンフォード公爵家の邸宅に向かうことになった。
王太子との結婚ということで、結婚と同時にコーデリアは王太子妃となるため、宮中作法、礼儀作法、諸外国との関係の基本的知識、国内の貴族序列など覚えることが多数にのぼっている。
王立貴族学院時代に貴族の子女における礼儀作法や夜会での立ち振る舞い、ダンスなどは習ってきていたコーデリアであったが、王家ともなるとそれら貴族とはまた別の作法や立ち振る舞いなどがあることを思い知らされていたのだ。
そんな厳しい王太子妃教育が施されているコーデリアの居は、王都のレンフォード公爵家の邸宅から、王宮内に作られたグスタフ王太子府に移されていた。
ただ、肝心の婚約者は婚約のパレードにこそ馬車に同乗していたが、未だコーデリアと寝所を共にすることもなく、毎夜フラフラと遊び歩いていた。
「また、グスタフ様は外泊されておるのですか……」
「はい、お戻りになられておりません。どうやら、コーデリア様の兄上に当たるフェルディナンド様の邸宅でお過ごしのご様子とのことです」
王太子妃教育を終えて、部屋に戻ってきたコーデリアが、側付きの女官に婚約者の居場所を問うと、いつも通りの言葉が戻ってきていた。
婚約して半年が経ち、そろそろ結婚式の日取りも決まろうかというこの時期に、婚約者がフラフラと外泊しているのは外聞が悪い。
コーデリアとしても、もとより愛情のある婚約ではなかったが、せめて女遊びは結婚を終えてからにして欲しいと感じているのだ。
しかも、女遊びをしている場所がよりにもよって異母兄であるフェルディナンドの邸宅ときたら、コーデリアとしても面目を潰された格好である。
すでに心ない者たちからは、『お飾り王太子妃候補』というありがたい別名をもらい、王宮内でも冷たい視線に晒されているコーデリアであった。
婚約者のグスタフ王太子自身もコーデリアの容姿を気に入らなかったようで、王太子府の寝室に戻ることは非常に稀なことになっている。
だが、王と王妃は彼女のことをいたく気に入り、問題の多い王太子を御することを期待してくれているのだ。
そんな二人の期待と父が守った国の未来をより良い方向へ向かわせることだけが、辛く厳しい王太子妃教育を受けるコーデリアの支えになっていた。
「また、女性ですか?」
「はい、こたびは長く続いているようです。グスタフ様もいたく気に入っておられるとか……」
側付きの女官は雇い主であるコーデリアと同じようなため息を吐く。
彼女としても雇い主のコーデリアが王太子妃となれなければ、給料は滞り、最悪職を失い生活が成り立たなくなる。
そのため、婚約者であるグスタフ王太子の女性関係に関しては神経を尖らせており、なにかとコーデリアへ注進をしてくれている存在であった。
「いっそ、婚約を破棄して頂けるとありがたいのですが……。すでにグスタフ様のお気持ちはわたくしから離れているのは明白ですし……」
「コーデリア様、王様と王妃様がそのようなお言葉を聞かれたらお嘆きになりますぞ。あのお二人にはコーデリア様だけが頼りの存在なのですから……」
「そうでしたわね。あのお二人の期待を裏切るわけにいきませんでした。仕方ありません。これより、グスタフ様をお迎えに参ります。馬車の支度を」
「すでに用意を済ませております。コーデリア様のお出ましをお待ちしているだけでしたので、すぐに参りましょう」
女官はすでに馬車を待たせていたようで、コーデリアの手を引くと、大急ぎで馬車に乗り、レンフォード公爵家の邸宅に向かうことになった。
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