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2人きりの部屋で side真乃
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しおりを挟むタクシーの料金メーターに表示された高額な料金に声を失う。
「カードで。」
充希さんが支払おうとする横で、鞄の中の財布をもたもたと探す私。
「私、払います」
ようやく財布を引き出したときには、彼がすでに支払いを済ませていた。
「ごめんなさい……返しますから。」
「いらないから。それより一人で階段上がれんの?」
「だ……だいじょうぶです」
言った傍から足元がふらついて転びそうになる。
「……部屋の前まで送ってく。」
「本当に……すみません。」
玄関ドアを開け、部屋の電気をつけると、六畳のワンルームが明るく照らされる。
「じゃ、オレはこれで」
佐野充希がそう言って、玄関のドアの前で立ち止まった。
「え?」
「何かあったらすぐ病院行けよ」
踵を返そうとする彼の腕を――
私は、咄嗟に掴んでいた。
「待って!」
「……ん?」
彼が振り返る。
「ここまで送ってもらって、ただで帰すわけには!それに……そのシャツも……」
「いや、別にいいから」
「よくないです!」
そう言って、私は彼の腕を引っ張った。
「ちょっ……」
「上がってください。今お茶準備しますから。」
戸惑う彼を半ば強引に部屋の中に引き入れる。
「寒いですよね。今、エアコンのスイッチ入れましたから。」
慌てて冷蔵庫に向かう。
中を覗くと――お茶もジュースもない。
あるのは、美春さんからもらったビールだけ。
「ごめんなさい。いま冷蔵庫、お茶とかなくて……」
ビールの缶を取り出しながら、申し訳なさそうに言った。
「――いや、あのさ」
「あ、うちソファないのでベッドに座ってください。」
そう言って、ベッドを指差す私を見て、呆れたように彼は小さくため息をついた。
「あのさ……」
「遠慮しないでください。私、シャツ洗ってきます。適当にくつろいでいて下さいね。」
「……あ、ちょっと。なぁ!」
佐野充希が止めるのも聞かず、彼から強引に剥ぎ取ったシャツを持ってバスルームに入り、扉の鍵を閉めた。
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