Melty romance 〜甘S彼氏の執着愛〜

yuzu

文字の大きさ
9 / 25
夜の公園 side真乃

2

しおりを挟む

  一瞬の沈黙が流れた。

 彼、佐野充希の白いシャツは、私が吐いたお酒の色に染まっている。

「本当に、すみません!」

 謝罪の言葉を震える声で伝えた。

 12月、皮膚を刺す冷たい風が、公園を吹き抜ける。
 厚手の上着を着ていても寒いのに、迷惑どころの話じゃない。
 慌てて自分のカーディガンを彼に差し出した。

「これ着てください!」
「いらない」

 素っ気なく断られて、手が止まる。

「でも……」
「いいから」
「すみません、本当にすみません……っ」

 また涙が込み上げてきて、視界が滲んだ。

「……はぁ、ちょっとここで待ってて」
「え?あ、あの……!」

 呼び止める声も届かず、佐野充希の背中が街灯の向こうに消えていく。
 取り残された私は、ベンチにポツンと座ったまま、呆然とその場に立ち尽くした。

(……行っちゃった)

  置いていかれても仕方がない。
 思えば第一声から感じ悪く言い返してたし、勝手にふて腐れてデートすっぽかした元カノ。
再開したと思えば嘔吐、最低だもん。

 胸の奥が、ぎゅっと締め付けられた。

(しかも……取引先である総合病院の先生なのに……取引解除されてもおかしくないよね)

 会社にクレームが入るかもしれない。
 取引解除されるかもしれない。
 みんなに迷惑をかけることになる。

 ネガティブな思考が、頭の中を駆け巡る。
 
膝を抱えて、小さくその場にしゃがみ込んだ。

 その時、遠くから、足音が聞こえてきた。

 顔を上げると、ドラッグストアのビニール袋を手に持った佐野充希が駆け足で戻ってきた。

「目の前のドラッグストア行ってきた。色々買ってきたから。」

 袋の中から薬とスポーツドリンク、それにホッカイロを取り出した。

「これ、飲んで」

 差し出されたのは、胃薬と吐き気止め。

「あ……ありがとうございます」

 震える手で受け取ると、彼がペットボトルの蓋を開けてくれた。

「水分も取って」
「……はい」

 薬を飲んで、スポーツドリンクを一口含む。
 冷たい液体が喉を通って、少しだけ気分が楽になった。
 
「……すみません」
「あとタクシー、呼んだから」
「え……」
「家まで送る」
「そんな……もう十分迷惑かけたのに」
「一人で帰れる状態じゃないだろ」

 申し訳なさと不甲斐なさに反論する気力も残っていなくて、私はただ頷いた。

「……ありがとうございます」

 小さく呟くと、彼が少しだけ表情を緩めた。

「いいって。」
 そう言って、また空を見上げる。
 その横顔を見ていると、胸の奥が締め付けられた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

お兄様「ねえ、イケナイ事をしよっか♡」

小野
恋愛
父が再婚して新しく出来たお兄様と『イケナイ事』をする義妹の話。

ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~

cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。 同棲はかれこれもう7年目。 お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。 合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。 焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。 何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。 美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。 私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな? そしてわたしの30歳の誕生日。 「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」 「なに言ってるの?」 優しかったはずの隼人が豹変。 「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」 彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。 「絶対に逃がさないよ?」

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ドSな彼からの溺愛は蜜の味

鳴宮鶉子
恋愛
ドSな彼からの溺愛は蜜の味

辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

鳴宮鶉子
恋愛
辣腕同期が終業後に淫獣になって襲ってきます

処理中です...