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混乱 side真乃
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しおりを挟むドアが開く気配がして、彼が部屋に入ってきたのが分かった。シャンプーの香りと、彼特有の体温が空気を変える。
静かに、でも確実に近づいてくる足音。
――最悪の事態。
パジャマのシャツの裾が、背中の途中まで捲れ上がっている。
ベッドに飛び込んだ拍子にそうなったのか、今の私の背中はほとんど露出している状態だった。
下着をつけていない、素肌の背中。
熱が全身に駆け巡る。
今直せば寝たふりだとバレる。でもこのままでは――
心の中で必死に祈った。
気づかないで。
何も見なかったことにして、そのまま出ていって。お願い。
けれど。その願いは、深い溜息とともに砕け散った。
「……それ、計算?」
低く、呆れたような声。
羞恥心が爆発しそうになる。
このままじっとしていることなんて、できるはずがなかった。
反射的に寝返りを打ち、背中を隠すようにベッドに身を沈めた。
けれど――視界の端に、それが見えた。
ベッドの足元、彼が今まさに通り過ぎようとしている床に、脱ぎ捨てたブラが転がっている。
(なんでそんなところに!?)
彼の足が、あと一歩進めば確実にそれを踏む位置だ。
頭が真っ白になった。考えるより先に、身体が動いていた。
気づけば手を伸ばし、彼のパーカーの裾を掴んでいた。
「うわっ……バカッ」
予想外に強く引っ張られた彼が、バランスを崩す。
世界が傾いて――
どさっ、と鈍い音とともに、彼の顔がすぐそこに落ちてきた。
熱が、耳から首筋まで駆け上がっていくのが分かる。
彼の手が、私の肩にそっと触れた。
「……ねぇ、誘ってる?」
低い声が、耳元で囁く。
ほんのり甘い香りと、首筋にかかる吐息。
胸に当たる、彼の身体の重み。
「そうじゃ……なくて」
引き留めた理由なんて言えるはずがない。床に転がっている下着を見られたくなくて――なんて、口が裂けても言えない。
「じゃあ、何?」
問い詰めるような声。
「昨日のキスの意味……教えて欲しくて」
咄嗟に口をついて出たのは、最悪の言い訳だった。
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