最後のお弁当 (短編集)

yuzu

文字の大きさ
2 / 3

娘からの贈り物

しおりを挟む
 「ママ。パパにはナイショね?」

 キッチンから聞こえる可愛い天使の様な声。
 僕は聞こえぬふりをして、見てもいない無料漫画が表示されたスマホ画面をスクロールする。

 いつもより慌しい調理音なのに、僕の耳には心地いい音楽の様に聞こえてしまうのは親バカだからだろうか。

 まだ5歳になったばかりの娘は、保育園で"バレンタイン"とはどうゆうものかを、おませな友人に教わったのだろう。

「だいすきなひとにちょこをあげるひ」

なんだと、ひそひそではない声で耳打ちをしているのが聞こえた。

"ぜんぶ自分で"やりたい。
そんな一生懸命な娘が愛しいし、それに応えて笑顔でサポートに回る妻は神々しくも見える。

"パパには秘密"らしいから、覗きに行けなくてソワソワしながら検索エンジンに(5歳 女の子 おもちゃ)と入力してみた。

ホワイトデーまではまだ1月もあるのに、
娘が好きそうなおもちゃを見つけると、悩む事なくカートに入れてしまった。

娘は喜んでくれるだろうか。

程なくして妻と娘はよれよれの格好でキッチンから出てくると、小さなカップに入ったチョコレートが乱雑に置かれたトレーをぼくの目の前に置いた。

「これ、ぱぱのぶんね!」

ぼくは娘に抱きついて「…うん。ありがとう!うれしい!」と大袈裟に喜んで見せたけれど、

妻はそんな僕を見て苦笑いしていた。
僕の顔が哀しみに歪んでいたからだろう。


僕は娘がキッチンから出てくる音に堪らず振り向いた瞬間、見てしまったんだ。

娘が可愛くラッピングしたチョコレートを通園バックに入れるのをね。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

麗しき未亡人

石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。 そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。 他サイトにも掲載しております。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

ドS王子の意外な真相!?

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……その日私は。 見てしまったんです。 あの、ドS王子の課長の、意外な姿を……。

6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。 まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。 今日は同期飲み会だった。 後輩のミスで行けたのは本当に最後。 飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。 彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。 きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。 けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。 でも、あれから変わった私なら……。 ****** 2021/05/29 公開 ****** 表紙 いもこは妹pixivID:11163077

(ほぼ)5分で読める怖い話

涼宮さん
ホラー
ほぼ5分で読める怖い話。 フィクションから実話まで。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

処理中です...