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一章
8.早着替え
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「ハルト、買ってきた」
戻ってきたシノの手には明らかにコート以外のものがあったがハルトは買ってくれているのにあれやこれやと文句を言うのは野暮だと思い触れないでおいた。
「着させてあげる」
そう言ってシノはハルトの後ろに行きコートを広げる。右腕左腕と順番に袖を通し羽織らせてくれるのかと思いきやハルトの着ていた服とズボンを脱がせ買ってきたコートに似合う服をハルトに着させる。その時間わずか一秒ほど。
「はやッ!?」
脱がせたハルトの服をコートの中にしまったシノは汗を拭うフリをした。そして新調された服の上からようやくハルトにコートを羽織らせる。
「かっこいい」
「そ、そうか? ありがとな」
「うん」
シノは再びハルトの前に戻ってきて「んっんっ」と言い自分の着ているコートを引っ張って何かをアピールしていた。ハルトはそれに気づき何をしているのかとしばらく考えたあとにひらめいたのか自信満々に
「もしかしてシノのコートは結構高いやつなのか!」
と言った。
「………」
まるで鈍感主人公の様な回答をしたハルトにシノは呆れて喋らなかった。本来なら呆れてどこかに行ってしまうかもしれないが何故かハルト一途のシノは最後にほぼ答えのようなヒントを与える。「これとそれ」と言ってシノは自身のコートを指で指したあとにハルトの白いコートを指した。ようやく答えに気づいたハルトははっとなる。
「もしかしてシノと同じコートってことか?」
「そう。ハルトとお揃い」
シノはハルトが正解してくれたことで満足したのか少しばかり微笑んだ。その頃のハルトはヤベェー間違いをしてしまったと内心焦りながらシノと一緒に店を出た。
「それで次はどうするんだ?」
「ハルトは何か武器を使ってた?」
「まぁ一応、剣は使ってたな。投げて」
それを聞いたシノはハルトの手を握ってどこかへと向かい始めた。一方ハルトは外に出てからも再びクラスメイト警戒モードを発動していた。異様にクラスメイトを警戒しているハルトだが実際のところ実は誰かが探していて見つけてくれる事を期待しているのだ。だがその期待通りになるはずもなく未だにクラスメイトを見かけた回数はゼロである。
「ハルト、ここ」
ハルトを引っ張って連れてきた場所はどうやら武器や収納バッグなどこれから異世界で生きていくハルトにとってうってつけの店だった。だがそろそろハルトは出会って間もないシノに何かを買ってもらう事に申し訳なくなっていた。
「好きなの選んで。私も探す」
シノはそう言って剣が束になってしまわれている樽を漁り始める。ハルトは見慣れないものがたくさんあり少しばかりワクワクしながら店内を見回る。するとハルトはひとつの日記帳の様な物が気になりそれを手に取る。
(手記か。この世界の事を記録するのも暇つぶしになって良いかもしれないな)
ハルトはひたすらペラペラの繰り返しめくっているとシノが一つの剣を持ってやってきた。
「この剣はどう?」
ハルトはその剣を受け取り手記を持ったまま鞘から取り出す。一見普通の剣の様に見えるがハルトには何かを感じたようでこれにしよう! と鞘に戻して即決した。
「買ってくる。それも」
シノはハルトの持っていた手記を見ていった。どうやら先程からハルトが手記ばかりを見ているのに気づいていたようだ。
「いいのか?」
「うん。私とハルトの思い出を書こ」
「そうだな」
ハルトはシノに手記を渡す。そして剣と手記を持ったシノは店の人の元へ向かった。
しばらくしてシノは戻ってきた。
「はい、これ」
「何から何までありがとな」
「お安い御用。困ったら私に言って」
「そうするよ」
「次は宿探しに行こ」
そう言って宿を探しに行くために剣をしまい店を出た。外は少しずつ日が落ち暗くなり始めていた。その頃には見捨てた者達の存在を少しだけ気にしなくなっていた。
そしてハルトはシノに腕に抱きつかれながら夕暮れの道を歩いていったのだった。
戻ってきたシノの手には明らかにコート以外のものがあったがハルトは買ってくれているのにあれやこれやと文句を言うのは野暮だと思い触れないでおいた。
「着させてあげる」
そう言ってシノはハルトの後ろに行きコートを広げる。右腕左腕と順番に袖を通し羽織らせてくれるのかと思いきやハルトの着ていた服とズボンを脱がせ買ってきたコートに似合う服をハルトに着させる。その時間わずか一秒ほど。
「はやッ!?」
脱がせたハルトの服をコートの中にしまったシノは汗を拭うフリをした。そして新調された服の上からようやくハルトにコートを羽織らせる。
「かっこいい」
「そ、そうか? ありがとな」
「うん」
シノは再びハルトの前に戻ってきて「んっんっ」と言い自分の着ているコートを引っ張って何かをアピールしていた。ハルトはそれに気づき何をしているのかとしばらく考えたあとにひらめいたのか自信満々に
「もしかしてシノのコートは結構高いやつなのか!」
と言った。
「………」
まるで鈍感主人公の様な回答をしたハルトにシノは呆れて喋らなかった。本来なら呆れてどこかに行ってしまうかもしれないが何故かハルト一途のシノは最後にほぼ答えのようなヒントを与える。「これとそれ」と言ってシノは自身のコートを指で指したあとにハルトの白いコートを指した。ようやく答えに気づいたハルトははっとなる。
「もしかしてシノと同じコートってことか?」
「そう。ハルトとお揃い」
シノはハルトが正解してくれたことで満足したのか少しばかり微笑んだ。その頃のハルトはヤベェー間違いをしてしまったと内心焦りながらシノと一緒に店を出た。
「それで次はどうするんだ?」
「ハルトは何か武器を使ってた?」
「まぁ一応、剣は使ってたな。投げて」
それを聞いたシノはハルトの手を握ってどこかへと向かい始めた。一方ハルトは外に出てからも再びクラスメイト警戒モードを発動していた。異様にクラスメイトを警戒しているハルトだが実際のところ実は誰かが探していて見つけてくれる事を期待しているのだ。だがその期待通りになるはずもなく未だにクラスメイトを見かけた回数はゼロである。
「ハルト、ここ」
ハルトを引っ張って連れてきた場所はどうやら武器や収納バッグなどこれから異世界で生きていくハルトにとってうってつけの店だった。だがそろそろハルトは出会って間もないシノに何かを買ってもらう事に申し訳なくなっていた。
「好きなの選んで。私も探す」
シノはそう言って剣が束になってしまわれている樽を漁り始める。ハルトは見慣れないものがたくさんあり少しばかりワクワクしながら店内を見回る。するとハルトはひとつの日記帳の様な物が気になりそれを手に取る。
(手記か。この世界の事を記録するのも暇つぶしになって良いかもしれないな)
ハルトはひたすらペラペラの繰り返しめくっているとシノが一つの剣を持ってやってきた。
「この剣はどう?」
ハルトはその剣を受け取り手記を持ったまま鞘から取り出す。一見普通の剣の様に見えるがハルトには何かを感じたようでこれにしよう! と鞘に戻して即決した。
「買ってくる。それも」
シノはハルトの持っていた手記を見ていった。どうやら先程からハルトが手記ばかりを見ているのに気づいていたようだ。
「いいのか?」
「うん。私とハルトの思い出を書こ」
「そうだな」
ハルトはシノに手記を渡す。そして剣と手記を持ったシノは店の人の元へ向かった。
しばらくしてシノは戻ってきた。
「はい、これ」
「何から何までありがとな」
「お安い御用。困ったら私に言って」
「そうするよ」
「次は宿探しに行こ」
そう言って宿を探しに行くために剣をしまい店を出た。外は少しずつ日が落ち暗くなり始めていた。その頃には見捨てた者達の存在を少しだけ気にしなくなっていた。
そしてハルトはシノに腕に抱きつかれながら夕暮れの道を歩いていったのだった。
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