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一章
29.じゅるり
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「やりすぎたな」
「うん」
先程までそこには風に揺られた草がぎっしりと生えていたがもうその姿はなかった。ひとまずハルトは体を起こそうとするがなぜか体が動かない。何度も腕をあげようとしたり足を動かそうとしたりするがそれでもダメだった。だが顔は左右に動かすことが可能でハルトはシノの方を向く。どうやらシノも同様に体が動かないようだ。
(これはもしや金縛り!!?)
「動けないのはハルトのせい」
「な、なんでそうなるんだよ!!」
「さっきのはハルトの魔力で放出した魔法。あの魔法をすると私の魔力量はハルトと同じになるから一気に魔力を使い果たしちゃう」
「つまり今は俺の魔力が完全になくなっているせいで体が動かなくなってるのか」
「そゆこと」
互いに顔を向けながら話しを続ける。
「てか俺達って完全に魔法に巻き込まれてたよな。なんで生きてんだ?」
「それはキスしたから」
「キス、万能すぎない!?」
「愛は癒やす力を持ってるみたい。愛こそ究極の魔法ってリーシアが言ってた」
「リーシアって誰なんだ?」
「昔一緒にいた魔女。でも消えた」
(リーシアがいなくなったからシノは最後の魔女になったのか)
「ハルト、そろそろ」
シノは首を動かし雲一つない青空を見上げる。何がもうそろそろなのかわからないハルトはとりあえずシノと同じ行動を取ることにした。
「なんだこの感じは!?」
それまで体はガチガチに固まっており身動きが取れなかったが時間が経過するにつれじんわりと暖かみを感じると同時に体がほぐれていく感覚がした。試しに腕を動かしてみると最初よりかは動かせるようになっていた。
「ハルト、早く」
ハルトはまだ完全に体が硬直から開放されていなかったがシノは既に硬直から開放されており地面に手をついて上体を起こしていた。
「早くって言われてもなぁ」
「仕方ない。お姉さんに任せなさい」
「どう見ても子供だろ」
ハルトがボケに対してツッコミを入れるが何故かシノは頬をぷくっと膨らませてハルトを見つめていた。そしてハルトに近寄るとシノはハルトに顔を近づけ始める。このタイミングでハルトは何やら嫌な予感を感じた。
「まさかお前……。やめろよ、俺動けないんだから」
「……じゅるり」
「おい、じゅるりってなんだじゅるりって!!」
互いの唇が優しく触れ合う。
「……んっ」
「!?」
シノはハルトの顔に垂れる美しき銀の髪を指で持ち上げ耳にかける。するといきなりハルトは手でシノの肩を掴み突き放した。
「……んんっ」
「おい、今舌入れようとしてただろ」
「そっちの方が早く回復する」
「いや絶対嘘だな、それ。嘘に違いない」
「ひどい」
「酷いのそっちだろ。回復する為にしてきたと思ったら下心全開で来るとか!!」
「行こ」
「無視かよ」
シノは大破した馬車に向かって歩き出した。ハルトも手を地面につき立ち上がりシノの元へ走る。
「それでこれからどうするんだ?」
「全員ぶっ潰すしかない」
「でもそもそも神託官に出くわすことなんてそうそうないんじゃないか?」
「そこは大丈夫」
シノはロイエルが立っていた深くえぐれた地面を見つめる。一体どうしたのかと気になりハルトも見るが何ひとつわからない様子だった。
「うん」
先程までそこには風に揺られた草がぎっしりと生えていたがもうその姿はなかった。ひとまずハルトは体を起こそうとするがなぜか体が動かない。何度も腕をあげようとしたり足を動かそうとしたりするがそれでもダメだった。だが顔は左右に動かすことが可能でハルトはシノの方を向く。どうやらシノも同様に体が動かないようだ。
(これはもしや金縛り!!?)
「動けないのはハルトのせい」
「な、なんでそうなるんだよ!!」
「さっきのはハルトの魔力で放出した魔法。あの魔法をすると私の魔力量はハルトと同じになるから一気に魔力を使い果たしちゃう」
「つまり今は俺の魔力が完全になくなっているせいで体が動かなくなってるのか」
「そゆこと」
互いに顔を向けながら話しを続ける。
「てか俺達って完全に魔法に巻き込まれてたよな。なんで生きてんだ?」
「それはキスしたから」
「キス、万能すぎない!?」
「愛は癒やす力を持ってるみたい。愛こそ究極の魔法ってリーシアが言ってた」
「リーシアって誰なんだ?」
「昔一緒にいた魔女。でも消えた」
(リーシアがいなくなったからシノは最後の魔女になったのか)
「ハルト、そろそろ」
シノは首を動かし雲一つない青空を見上げる。何がもうそろそろなのかわからないハルトはとりあえずシノと同じ行動を取ることにした。
「なんだこの感じは!?」
それまで体はガチガチに固まっており身動きが取れなかったが時間が経過するにつれじんわりと暖かみを感じると同時に体がほぐれていく感覚がした。試しに腕を動かしてみると最初よりかは動かせるようになっていた。
「ハルト、早く」
ハルトはまだ完全に体が硬直から開放されていなかったがシノは既に硬直から開放されており地面に手をついて上体を起こしていた。
「早くって言われてもなぁ」
「仕方ない。お姉さんに任せなさい」
「どう見ても子供だろ」
ハルトがボケに対してツッコミを入れるが何故かシノは頬をぷくっと膨らませてハルトを見つめていた。そしてハルトに近寄るとシノはハルトに顔を近づけ始める。このタイミングでハルトは何やら嫌な予感を感じた。
「まさかお前……。やめろよ、俺動けないんだから」
「……じゅるり」
「おい、じゅるりってなんだじゅるりって!!」
互いの唇が優しく触れ合う。
「……んっ」
「!?」
シノはハルトの顔に垂れる美しき銀の髪を指で持ち上げ耳にかける。するといきなりハルトは手でシノの肩を掴み突き放した。
「……んんっ」
「おい、今舌入れようとしてただろ」
「そっちの方が早く回復する」
「いや絶対嘘だな、それ。嘘に違いない」
「ひどい」
「酷いのそっちだろ。回復する為にしてきたと思ったら下心全開で来るとか!!」
「行こ」
「無視かよ」
シノは大破した馬車に向かって歩き出した。ハルトも手を地面につき立ち上がりシノの元へ走る。
「それでこれからどうするんだ?」
「全員ぶっ潰すしかない」
「でもそもそも神託官に出くわすことなんてそうそうないんじゃないか?」
「そこは大丈夫」
シノはロイエルが立っていた深くえぐれた地面を見つめる。一体どうしたのかと気になりハルトも見るが何ひとつわからない様子だった。
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