異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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一章

28.託し合う背中

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 先程と同じ様に魔法を放とうとしたハルトだがある事に気づく。それは武器の集合体がこれまで一斉に来ていたはずなのに今度は左右と直進に分かれだしたのだ。
 
(あちこちから来るこれをどうやって止めれば……!!)

 その時シノがハルトに「任せて」と呟いた。えっ? となったハルトだったがシノの言葉に謎の安心感を抱いていた。

「爆ぜろ」

「また爆発ですか?! そうはさせません」

 ハルトと同じ言葉を唱えた事で先程の爆発をもう一度やってくると考えたロイエルはさらに武器の集団を分裂させしまいにはハルト達の全方位を囲んだ。

(どうすんだこれ!?)

 その時シノが何やら怖い笑みを浮かべる。ハルトとロイエルが一体何の笑みなのかと思っているとシノの頭上に無数の氷の塊が現れた。

「だからそれは一体何なのですか! アーティファクトには氷の力などないはずなのに!」

「知らない」

 氷の塊は一斉に囲んでいる武器に激突していく。ぶつかった氷は砕け散っていくが武器も地面に次々と落ちていった。

「私の攻撃を!! 当たれ、当たりなさい!!」

 必死に攻撃を当てようとするがハルト達の元に武器が到達することはなかった。すべての武器を撃ち落とすと落ちていた武器は自然消滅した。

「私は神託官なんですよ! そう私は私は神託官だ! 負けるわけがない絶対に負けない!!」

 何かに怒り狂ったロイエルはかけていたメガネを草原に投げ捨てた。

(それ伊達だったのかよ)

「今までの犠牲者と同様に大人しくしていればよかったというのに。本当に愚かだ……。これでおしまいにしましょう」

 するとロイエルの頭上にこれまでの武器とは輝きの違うものが七本現れた。現れた武器はまるで和希の持っていた聖剣のようだった。

「ハルトあれはまずい」

「え?」

「あれはきっと擬似的ではあるけど聖剣に違いない」

「せ、聖剣!!?」

「だからあれをやる」

「あれ?」

「今から言う事を一緒にやって」

 シノはハルトに耳を近づけてといい小声で何かを伝えた。それを聞いたハルトは顔を赤らめていた。

「そ、そんな恥ずかしい事出来るかァァ!!!!」

「でもやらないと私達死ぬ」

「ぐぬぬ……やるしかないというのか」

「ハルト、腹を括りな」

「ちょっと黙ってろ!!」

(確かにシノの言う通りやらないと死ぬんだけどこれをやったら俺の精神までやられそうなんだが。さすがの俺でもそんな羞恥耐えれないぞ。いやでも待て、今はこの神託官しかいないなら……別に良いか!)

 案外軽い決断をしたハルトはシノに「やろう」と言った。そしてハルトとシノは互いの背中を合わせロイエルに指を向ける。

「な、何をする気ですか。私のこの究極の力を前に何もかもが無意味だというのに!!!」

 ハルトとシノはロイエルを嘲笑うように笑った。それを見たロイエルは徐々に冷静さを失っていく。

「神託官、俺達の世界最強の力を見せてやろう」

 これから何かをされると気づいたロイエルは急いで聖剣をハルト達に放つ。だがもう手遅れだった。二人は背中を合わせながらコクリと頷いたあとロイエルの方を見つめる。そして二人は同時に大きな声で叫びだす。

「「これで消えろォォォォォォオオオ!!!」」

 その瞬間まるで太陽の様な炎を纏った大きな球体が現れとてつもない速さでロイエルに接近していく。
 
「嘘だ、嘘だ。こんなばかげた力がこんな者達にィィィィィ!!!!!」

 その場から逃げようとしていたロイエルだがどうやら目の前のそれを見て足が動かなくなっていたようだった。ロイエルは最後の足掻きとして聖剣をその球体に向かわせる。だが球体に触れる前に聖剣は溶けてなくなってしまった。

「来るな来るなァァァァァ!!!!」

 炎の球体はロイエルの目の前で大爆発を起こす。爆発はロイエルも勿論だが馬車にハルト達までも飲み込んだ。そして爆発の衝撃で空に浮かぶ雲は消えロイエルのいた周辺の大部分の地面が深くえぐれていた。それと同時に地面も少しばかり揺れていた。

「はぁーーーー」

 一方ハルトとシノは立っていられなくなり地面に並んで倒れ込んだ。そして二人は草原の中で笑顔で笑いあったのだった。
 
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