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一章
56.アッシュ
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「どういう事か説明しろ!!!」
「隠してんじゃねぇーぞ!!」
「私達を支配する気なんでしょ!!」
ハルト達が馬小屋からしばらく走っていると王城に向けて沢山の人が何かに対して罵声を浴びせていた。彼らの言っている事を聞いているとどうやら神託官に関する内容であるという事がわかった。そんな彼らはどんどん王城へと進んでいくがそこを国の兵らしき者達が阻止していた。だが国民は兵に対して樽や槍、斧、酒瓶などありとあらゆる物を投げつけていた。身の危険を感じた兵はジリジリと後退していきそれに合わせて国民は前進していく。
ハルト達はこの混乱に乗じて王城に潜入しようということになったのだがあまりの人の多さで前に進んでいくことが出来ない。どうやって王城まで行けば良いのかと悩んでいると別の場所で大きな音が聞こえ砂埃の様なものが少しばかり見えた。ハルト達はその方へ行きたくてどこかに抜け道の様なものがないかと辺りをキョロキョロしていると聞き覚えのある声がどこからか聞こえてくる。
気になったハルトは声の聞こえた方を見ると一つの建物の上にヴィーネが座っていた。ヴィーネもハルトに気づいたようで軽く手を振っていた。
「本当はこんな事したくはないのだけれど仕方ないのよ。許してね?」
「……!?」
ヴィーネは小さな声で「テンプル」と呟いたあと指パッチンをした瞬間それまでそこにいた国民、それを抑えていた兵が一斉に消え去ってしまった。一体何が起こったのかと戸惑ったハルトだが通れるようになったのでシノとラムネを引き連れて先を進んでいく。その間でも至るところで大きな爆発音と建物が崩れ落ちる様な音が聞こえてくる。
「このまま王城に行くべきか? それともあっちを一旦見に行ったほうが良いと思うか?」
「……わからない」
「もしかしたらあの時の筋肉の可能性もあると思いますけどぉ~」
「なら片付けておいた方が良さそうだな」
「わかった。行こ」
「わったしの剣が異端な技を炸裂しますよぉ~~!!!!」
三人は王城に向かって走っていたが途中で先程から爆発が起こっている方に向かい出した。走っているとハルトは人が全然居ないということに気づく。皆どこかに行っているのかそれとも隠れているのだろうか。色々と憶測を立てるがすぐに結果は明らかとなった。
「こ、これは一体……!?」
しばらく走ったハルト達の目に映ったのはざっと二十人ほどの人の死体と崩壊した家々だった。そして死体の先に立っていたのはラムネの言った通りアッシュだった。あまりの衝撃的な光景にハルトが固まっていると存在に気づいたアッシュがその場に立ったまま声をかけてくる。
「ったくまんまとヘレボルスにやられたぜ。これじゃあ愛国心強めのここの国民は暴れだすに決まってるのによ。おかげで俺達の支配が揺らいじまってる。やっぱりあれか、お前らが今回の件に一枚噛んでるだろ。面倒な事してくれるなぁ」
「な、なんでその人達を殺した!! 殺す必要があったのか!!!」
「面白い事言ってくれるなぁ。殺されそうになったから殺したんだよ。それの何が悪い? 正当防衛ってやつだ」
「正当防衛? 限度ってものがあるだろ!」
「お硬い考えだな。そもそもこいつらが暴動なんて起こさなきゃこんな事にはなってないだろ? 自業自得だ自業自得」
その時物陰に隠れていた小さな男の子が死体の方に走っていく。
「ママ? ねぇ? 起きて! もう逃げようよ!! ねぇ、ねぇ!!」
男の子は涙を流しながら女性の体を揺さぶる。しかし起き上がることもなくただ揺さぶられる度に血が体から流れ出ているだけだった。それを見ていたハルトの脳内にどこかのある日の出来事が浮かび上がる。雨が降る道路の真ん中。信号は月と一緒に水たまりに赤色を照らしている。倒れる女性の体を一人の男の子が泣きながら体を揺さぶっている。その後ろで背の高い男性が荷物を地面にボトッと落とし立ち尽くしている。そんな光景が一瞬でハルトの脳内に流れた。
「…………」
「……ハルト?」
「ハルトさん……」
「フンッ。どけくそガキがァァァ!!!!!!」
アッシュは片腕がないため左手を拳にして思いっきり地面を叩いた。すると衝撃で地面が隆起しだしそれは女性の体を泣きながら揺さぶる男の子の方へと向かっていく。ハルトは手を強く握りしめる。
「隠してんじゃねぇーぞ!!」
「私達を支配する気なんでしょ!!」
ハルト達が馬小屋からしばらく走っていると王城に向けて沢山の人が何かに対して罵声を浴びせていた。彼らの言っている事を聞いているとどうやら神託官に関する内容であるという事がわかった。そんな彼らはどんどん王城へと進んでいくがそこを国の兵らしき者達が阻止していた。だが国民は兵に対して樽や槍、斧、酒瓶などありとあらゆる物を投げつけていた。身の危険を感じた兵はジリジリと後退していきそれに合わせて国民は前進していく。
ハルト達はこの混乱に乗じて王城に潜入しようということになったのだがあまりの人の多さで前に進んでいくことが出来ない。どうやって王城まで行けば良いのかと悩んでいると別の場所で大きな音が聞こえ砂埃の様なものが少しばかり見えた。ハルト達はその方へ行きたくてどこかに抜け道の様なものがないかと辺りをキョロキョロしていると聞き覚えのある声がどこからか聞こえてくる。
気になったハルトは声の聞こえた方を見ると一つの建物の上にヴィーネが座っていた。ヴィーネもハルトに気づいたようで軽く手を振っていた。
「本当はこんな事したくはないのだけれど仕方ないのよ。許してね?」
「……!?」
ヴィーネは小さな声で「テンプル」と呟いたあと指パッチンをした瞬間それまでそこにいた国民、それを抑えていた兵が一斉に消え去ってしまった。一体何が起こったのかと戸惑ったハルトだが通れるようになったのでシノとラムネを引き連れて先を進んでいく。その間でも至るところで大きな爆発音と建物が崩れ落ちる様な音が聞こえてくる。
「このまま王城に行くべきか? それともあっちを一旦見に行ったほうが良いと思うか?」
「……わからない」
「もしかしたらあの時の筋肉の可能性もあると思いますけどぉ~」
「なら片付けておいた方が良さそうだな」
「わかった。行こ」
「わったしの剣が異端な技を炸裂しますよぉ~~!!!!」
三人は王城に向かって走っていたが途中で先程から爆発が起こっている方に向かい出した。走っているとハルトは人が全然居ないということに気づく。皆どこかに行っているのかそれとも隠れているのだろうか。色々と憶測を立てるがすぐに結果は明らかとなった。
「こ、これは一体……!?」
しばらく走ったハルト達の目に映ったのはざっと二十人ほどの人の死体と崩壊した家々だった。そして死体の先に立っていたのはラムネの言った通りアッシュだった。あまりの衝撃的な光景にハルトが固まっていると存在に気づいたアッシュがその場に立ったまま声をかけてくる。
「ったくまんまとヘレボルスにやられたぜ。これじゃあ愛国心強めのここの国民は暴れだすに決まってるのによ。おかげで俺達の支配が揺らいじまってる。やっぱりあれか、お前らが今回の件に一枚噛んでるだろ。面倒な事してくれるなぁ」
「な、なんでその人達を殺した!! 殺す必要があったのか!!!」
「面白い事言ってくれるなぁ。殺されそうになったから殺したんだよ。それの何が悪い? 正当防衛ってやつだ」
「正当防衛? 限度ってものがあるだろ!」
「お硬い考えだな。そもそもこいつらが暴動なんて起こさなきゃこんな事にはなってないだろ? 自業自得だ自業自得」
その時物陰に隠れていた小さな男の子が死体の方に走っていく。
「ママ? ねぇ? 起きて! もう逃げようよ!! ねぇ、ねぇ!!」
男の子は涙を流しながら女性の体を揺さぶる。しかし起き上がることもなくただ揺さぶられる度に血が体から流れ出ているだけだった。それを見ていたハルトの脳内にどこかのある日の出来事が浮かび上がる。雨が降る道路の真ん中。信号は月と一緒に水たまりに赤色を照らしている。倒れる女性の体を一人の男の子が泣きながら体を揺さぶっている。その後ろで背の高い男性が荷物を地面にボトッと落とし立ち尽くしている。そんな光景が一瞬でハルトの脳内に流れた。
「…………」
「……ハルト?」
「ハルトさん……」
「フンッ。どけくそガキがァァァ!!!!!!」
アッシュは片腕がないため左手を拳にして思いっきり地面を叩いた。すると衝撃で地面が隆起しだしそれは女性の体を泣きながら揺さぶる男の子の方へと向かっていく。ハルトは手を強く握りしめる。
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