異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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一章

73.犠牲者

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「ここはぜってぇに通さねぇぞ!!!!」

 王城の敷地内に入り多種多様な花が咲き誇る一本道を歩いた先に城への入口の大きな扉が存在する。ハルト達はその扉に向かうため数段の階段を上がろうとしている時に扉の前に立っているドートが仁王立ちをして行く手を阻んでいた。

「生きてたのか」

「俺があれごときで死ぬかよ。ちなみに馬車のおっちゃんも無事だ。それよりよくも……よくもやってくれたな」

「何がだ」

「ロイエル様を殺したうえにメルリル様までも……」

「仕方ない事だろ。早くそこをどいてくれ。俺達は犠牲者に用がある」

「俺達はお前達は全力で阻止するッ!!!!!」

 すると扉が開き中から十人ほどの兵士が出てきた。兵士は各々剣を構えると同時に自身に強化能力スキルを付与し始める。

「いいか。このスイッチを押せば城は爆発する。今降伏すれば許してやってもいいぞ」

 ドートはポケットの中からスイッチのついた物を取り出すとそれをハルト達に見せつける。さすがのハルトでもこの状況になってしまっては行動を起こすことが出来ない。そんな時ハルト達の横を速く駆け抜ける何者かがいた。

 ハルト達が気づいた時にはドートの手にはもうスイッチがなくなっていた。ドートはスイッチを押すフリをして初めてなくなっている事に気付き焦る。その時ハルト達の後ろから声が聞こえてきた。

「これは処分するからな! 頼む、落合」

「あぁ」

 声の正体は海斗だった。海斗は落合にスイッチを渡すとそれを上に投げ落ちてきた所を剣で斬り裂いた。

「お、お前!! スイッチを壊すなんて!!」

「なんだここにも問題児がいたのか」

 後ろからは馬車に乗った生徒達が続々と城にやってきていた。ドートは焦りついに兵士達に向かう様に命令を出す。しかしその時城の扉がまたも開く。

「ダメよ? お客様を突き返すなんて」

「ヴィ、ヴィーネ様!!! なぜこんな所に!」

「私はやるべき事を終えたからここにいるのよ。それにもう負けよ」

「ですが犠牲者を!!」

「所詮犠牲者は献上品でしかないのだから」

「……それでも!」

「もう見つけたからその必要はないのよ。この事は内緒よ?」

「……わかりました」

 するとドートや兵士達は扉の前から退き道を開ける。

「こっちよ」

 ヴィーネは扉を開けハルト達をどこかへと案内し始めた。少し警戒しつつハルト達はヴィーネのあとをついていく。中はさすが王城と言うべきだろう。入口すぐから規模感が違う。さらにはメイドが整列しヴィーネに対してお辞儀をしている。少し先には見たことのない人物が立っていた。

「君達がこの国を解き放ってくれた者か!」

「えーあの、誰ですか?」

「私はこの【ロイゼン王国】国王のアーレンだ!」

「あ、あの無能国王……」

「そ、それには色々と事情というものがあったんだ。でももうこれからは大丈夫だ。ここから良い国にすると誓おう」

「そ、そうですか」

「行くわよ」

 そしてアーレン国王との会話の途中でヴィーネは歩き出す。しかしアーレン国王はまだ何かを言いたいようで声をかける。

「ヴィーネ様、ありがとうございました。なんとかこの国を復興してみせます。貴方様と交わした約束を守るために!!」

「期待してるわ」

 ヴィーネは振り向く事なく歩きながら返事をする。歩いた先にはただの壁しかなくハルト達はどういうことだ? と思っているとヴィーネが何もない壁を叩き始める。すると壁が奥に開き扉のようになった。その先には下へと繋がる狭い階段があった。ハルト達はヴィーネに続いて降りていくがそれまでついてきた結華達は狭いと判断したのかついてくることはなく止まっていた。

 階段を降り終えるとそこにはまた扉があった。ヴィーネは鍵を使って扉を開ける。中に入ったハルト達は驚いた。中は牢がいくつもありその中には人がひとりずつ入っていた。どうやらベッドなどの必要最低限な物は揃っているように見える。

 ハルト達は静かに歩く。牢の中に入っている人達はハルト達の存在に気付き声をかけてくる。

「ヴィーネ様!」
「外で大きな音がしていた気がするのですけれども大丈夫なのですか……」
「いつになったら夫との面会が出来るのですか!」

 牢の中にいる十人ほどのうちほぼ全員が女性で男性は一人しかいなかった。ただ一番奥の牢にベッドの上で座っている男がいることにハルトは気づく。そしてその者の元へ歩き出す。

 牢の前についたハルト。中にいる男も気付きハルトの事を見る。

「君達は一体……。あぁ新しい兵士か何かか」

「貴方がラットさんですか」

「あぁ、そうだ。それが何か?」

「アリアさん」

「!? なぜ妻の名を!」

 ハルトは少し微笑んで答える。

「ラットさん、貴方を迎えに来ました。さぁ、アリアさんの元へ、貴方を待つ人達の元へ帰りましょう」

「……あぁ……ぁ……ありがとう……ありがとう」

 村民が傷つかないように自身を犠牲にしたラットさんだけれどやはり最愛の人から離れているのは辛かったんだろうなと思いながらハルトは泣いているラットを見ていた。そこにヴィーネがやってきてラットの牢の鍵を開ける。

「この鍵を使えば全部開くわ。それじゃあ私は行くわね」

 ヴィーネは地下を出る扉へと歩き出す。ハルトはそれを止めるように声をかけるとヴィーネは立ち止まった。

「色々とありがとうございます」

「感謝されるような事は何一つとしてしていないわ」

「助けてくれてたのは貴方ですよね。でもどうして神託官なのに……!」

「ふふ、ただのきまぐれよ」

 ヴィーネは扉に向かって歩き始める。そして扉のところでもう一度止まりハルトの方を向く。

「次会う時は貴方が変わった時ね。楽しみにしてるわ」

 ヴィーネは地下室を出ていった。ラットは牢から出てくるとハルトの手を強く握って感謝を何度も伝えたのだった。


@@


 それからというもの色々な事をハルト達は行った。牢の鍵を全て開け全員を解放し地下室を出てはそれぞれの人々を各村に帰らせるという作業が始まった。ここでアーレン国王が手伝わさせて欲しいと名乗り出て何台もの馬車を出してくれたおかげでなんとか全員が村に帰る準備が完了した。

 そしてさらにアーレン国王は何かハルト達に感謝がしたいと言い余っていた馬車をくれると言い出した。最初こそは拒んでいたハルトだったがあまりの押しの強さに負けありがたく貰うことに。その馬車を使いハルト達はラットを乗せ【カーシス村】へと進みだしていた。

 ちなみに結華達なのだがハルト達と会話することもなくそのまま離れ離れになってしまった。ハルトが避けていたというのもあるが結華達がそれでも話しかけてこないのは不思議なことだ。

 何はともあれこうして無事神託官との戦いに幕が降ろされた。

「ハルトさぁぁん!!! さすがにお腹が空きました!!」

「うるさい。ちょっとは黙れ」

「あはは、仲が良いんですね!」

「それはちょっと誤解がありますよ」

「っんちょっと! ちゃんと仲が良いじゃないですか! 一緒に戦っていうのに!」

「ハルトと仲が良いのは私だけ」

 ラットが操縦する馬車は騒がしくもどこか楽しげな空気感で日が沈む崩壊した街を走っていくのだった。
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