異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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二章

78.絆の導き

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「そう言えば自己紹介でもしておくか。俺はハルトだ。よろしくな」
「あ、はい。私はリルです。よろしくお願いします」
「よろしく、リル。それとかしこまった感じだとこっちも疲れるから普通でいいよ」

 リルはハルトの顔を見ながらと顔傾けて「わかった。これからよろしくね?」と言った。
 ハルトは思わず心臓がドクッとしてしまう。
 そのあとハルトはチラッとリルの姿を見る。
 そしてハルトはリルと横並びになった時ある事に気づく。
(リルって結構身長が高いんだな。俺とそこまで変わらないしそのうち負けるかも)と。

「……ハルト」
「ん?」
「……ずっと見つめられていると恥ずかしいから程々にして欲しい……」
「あ、いや、見つめていたというかぼーっとしていたというか。とりあえずごめん。特に他意はないから」
「そ、そうだよね。あ、あそこ知ってる? あれは鉄の塊で出来てて凄く頑丈なの」
「核? だろ」
「なんだもう知ってたんだ。ん~じゃあちょっと近くまで行ってみる?」
「行けるのか?」
「流石に中に入ったりするってことは出来たりしないけど近くまでなら行けるの」
「んじゃあ、案内頼む」

 ハルト達は夢の核が保管されている大きな鉄の建物に向けて歩き出した。
 向かっている間にも色々とあそこの店は服屋だとか酒場だとか人気のデートスポットなどをリルから教えてもらった。
 そんな事をしていると時間はあっという間に過ぎもう鉄の建物の近くまでやってきていた。
 鉄の建物にもっと近づこうと歩いたハルトだが何かに阻まれているような感覚になり進む事ができない。
 その様子を見ていたリルが通れない理由を話し始めた。

「核保管庫は頑丈な鉄で作られていてさらには外部に侵入を遮断する結界が張られていて……だから私達だと通れないの。まぁ、ここをどうにか通ろうとする人なんて大体が悪い人なんだけどね」
「そうなのか。ちょっとだけでもあれを触ってみたかったんだけどな。こればかりは仕方ないか」
「お鍋を触れば核保管庫を触ってるみたいなものだから試してみて」
「家帰ったらやってみるよ。あるかはわからんけど。それじゃあ次はどうするか」
「ちょっと先に屋台とかが並んでる箇所があるんだけどそこに行ってみる?」
「行こう!」

 ハルト達は核保管庫から離れ屋台が沢山並ぶ場所へと歩き出した。
 歩いている最中にハルトはリルの頭を見ていた。
 ハルトの視線に気づいたリルがハルトの顔を見て「また何かあるの?」と聞いてきたのでまたもやハルトは慌ててとりあえずやましいことを考えているわけではないと伝える。
 端からそんな事を思われているのかもしれないと考えてはいなかったリルにとってハルトの返答はあまりにも突発的すぎて逆に怪しく思われてしまった。
 
 一度声をかけられて目を反らしていたハルトだが会話が途絶えるとまたリルの頭を見つめだした。
 今度はすぐに視線に気づいたリルが「やっぱり何かあるの?」と聞く。
 それに対してハルトはリルの頭についている黒いリボンカチューシャを指さした。

「それずっと歩く度にちょっとだけ揺れてるから気になっただけだよ」
「あ! これは昔お母さんに買ってもらったやつでもう私のトレンドマークみたいな感じなの」
「そうなのか。リルによく似合ってるリボンだな」
「……えへへ。そう言ってもらえると嬉しい。あ、ほらあそこが屋台が沢山あるところだよ」
「へぇ~、結構賑わってるんだな」

 奥までずらーっと様々な屋台が立ち並ぶところには沢山の人が集まっていた。
 ハルト達はその人混み中に入っていく。
 入っていったのは良いのだがあまりにも人が多いせいでリルとハルトは気づけば少し離れていた。
 それに気づいたハルトがとっさにリルの手を掴み引っ張る。
 そしてそのまま人が少ない端の方へと歩いて人混みを抜けると立ち止まり休憩をすることにした。

「人が多すぎるな。まぁ、こんだけ屋台があれば仕方ないのかも知れないけど」
「どうしましょう……」

 どうやら屋台を見るのを楽しみにしていたリルは少ししょんぼりしたような表情をしていた。
 その表情を見てしまったハルトはここから抜け出すことなど出来ず仕方なくリルの手を握った。
 急に手を握られた事で驚いていたリルだったがハルトが何をしようとしているとのかを理解し手を握り返した。
 そしてハルトはリルの持っている男の人から貰った袋を持つと言ってもう片方の手で合図をする。
 リルはパンパンに詰まっていた袋をハルトに渡した。

「よし、行くか」
「はい!!」

 二人はもう一度人混みの中に入る。
 今度はしっかりと手を握り合っているので引き離されるということはなかった。
 人々の進む流れに合わせながら良さそうな屋台を探すために辺りをキョロキョロしているとリルが一つの屋台を指さして「あれ行ってみよ!」と言う。
 その屋台は今進んでいる流れの反対側にあったが無理やり流れに逆らってようやく屋台にたどり着く。

「いらっしゃい。どんなのが欲しいの?」
「わぁ~! どれも凄く綺麗なのばかり!」

 リルが指をさしていた屋台はどうやら宝石のアクセサリーを売っているところだった。
 展示されている宝石達を見てリルは目を輝かせていた。

「これとか綺麗~。私に似合うかな?」
「似合うと思うぞ」

 リルが手に取ったのは小さい鮮やかな青い宝石だった。
 その宝石は周りが金色の金属の様なもので囲まれ上にはチェーンがついており首にかけられるようになっていた。
 リルがそれを持っていると屋台の人が声をかけてきた。

「それはって言ってね、親友や恋人、家族が持っていると夢の力でこの宝石が光るのよ。でもただ壊れたり持ってる人がいなくなると光らなくなるから注意してね」
「じゃあこれと同じのをもうひとつお願い出来る?」
「もちろん。お二人が末永く過ごしていける事を願って今回は大幅に安くしてあげる。頑張るのよ」
「はい!」

 リルは同じ物を二つ購入した。
 どこかよそを向いていたハルトにリルが声をかける。
 何かと思いハルトがリルの方を向くと先程買った宝石の片方を差し出していた。

「え、あ、これ俺にか?」
「貰ってくれる?」
「あぁ、ありがとう」
「えへへ。これで私達は友達になれたのかな?」
「リルはもう友達だ」
「ありがと。ハルトが私にとって初めての友達!」

 リルは嬉しそうにしていた。
 それを見てハルトもなんだか嬉しい気持ちに自然となっていった。

「次は……!」
「そろそろ暗くなってきたし帰るか?」
「……そうしよ」

 ハルトが帰る事を提案するとリルはどこか悲しそうな表情を浮かべていた。
 そんあリルに対してハルトは続けて提案をする。

「まぁ、勝手に連れてきても多分あいつなら大丈夫だしな……。よし、リル。俺達の家に来るか?」
「いいの!?」
「友達だしな。それに他二人もすぐリルの事可愛がってくれると思うぞ」
「なら早く行こ! 私今日初めてがいっぱいで楽しい!!」

 そしてハルト達は手を握って来た道を戻り始めたのだった。


@@


 家に帰ろうと言ったがそもそもラムネの家を教えてもらっていなかったという事に気づいたハルト。
 既に夢の都に入ってきた時にいた場所までリルと手を繋ぎながら戻ってきてしまっていた。
 どうしたものかと立ち止まっていると奥からよく耳にするうるさい声が聞こえてくる。
 ハルトはすぐにこの声の正体が誰なのかを理解した。

「あ、あの姿、シルエット、立ち姿、風貌、あの顔! あれはハルトさんですねぇ!! 間違いなく!!」

 そんな事を言いながらラムネはハルト達の元へ走ってくる。
 その隣には迷子中だったシノの姿もあった。
 走ってきたシノとラムネはハルトの顔を見たあとなぜかまだ手を繋いでいる未知の女性を見てポカンとしていた。

「誰です????」
「ハルト、私というものがありながら違う女と営みするのはムチ打ち刑。手を繋ぐは死刑」
「なんで手を繋ぐ方が重いんだよ。てか俺とシノは別にそんな関係じゃないから罰をくらう理由がわからないんだが!!」
「はぁ~。ハルトさんはすぐ私以外の女の人を見ますよねぇ! まったく困っちゃいますよぉ!
「そもそもラムネのことは見てないけどな」
「え? 酷、酷いですよぉ! それは流石に酷いです! 私れっきとした女の子なので一応そういう言葉傷つきますからねぇ!!」
「うそうそ。ずっと見てるよ」
「え、あ、いやぁ……いきなりそんな事言われると照れちゃいますってぇ~」
「フッ」
「あっ! 今、今笑いましたね! まさか私を騙したなんて許しませんよぉ!!!!!!!!!」

 リルは話しの展開についていけず立ち止まったままだった。
 
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