異世界は鬼畜でした。〜クラス転移したが唯一スキルなしで見放された俺は最後の魔女と出会い最強に成り代わる〜

丸手音狐

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二章

82.アインスの情報

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「終わりだ終わりだ人生終わりだ終わり終わり終わり」
「いつまでそんな事してるんですかぁ? 流石にずっと言われてると怖いんですけど!」
「ハルト、壊れた」

 一階の椅子に座り窓を見つめながらハルトはずっとぶつぶつと同じ言葉を連呼していた。
 夢の中での反応を女子に見られていたというのは精神的に何か来るものがあるのだろう。
 さらに言えば最後の夢はもはや悪夢としか言いようがない。きっとそれがハルトの精神をダウンさせた最大の要因なのかもしれない。
 そんなハルトをそっとしといてあげようとシノとリルは考えていたのだが全く空気というものを読むことが出来なかったラムネは無邪気に話しかけた。

「ハルトさぁん!!! 早く私のお願いを解決してくださいよぉ!!」
「……お願いって。なんも情報ないってのに解決しようがないだろ」
「だから聞き込みとか見回りとかして怪しいやつを見つけるんですよぉ!!」

 ラムネがハルトと普通に会話しているのをシノとリルは羨ましそうに見つめている。
 どうやらハルトにとって気を使われて放置される方が嫌だったようでラムネが話題を持ってきた途端謎のぶつぶつは途絶えいつも通りになっていた。 
 そしてハルトとラムネの会話にリルが割って入る。

「お願いとか聞き込みとか見回りとか怪しいやつとかってどういうことなの? 何かあるとか?」
「あー、実はこいつが【レアルタ】の核を狙ってるやつが最近出始めててそれをどうにかして欲しいって頼んできたんだよ。でも実際はこんなに平和だし怪しいやつなんて誰も居ない。普通なら絶対話しが通じなさそうな人だってあんなに優しかったしな」
「怪しいやつはいるんですよぉ!! 何度か私も見てやっつけましたし!!」
「ラムネでも倒せたなら俺達は必要なのかぁ~?」
「もしかしたら悪の親玉的存在が現れて無茶苦茶にしてくるかもしれないじゃないですかぁ!」
「てか夢の都を警備してる兵とかいないのかよ」
「いませんよぉ! 夢の都に生きる者達は夢の中で生きる代わりに自分達で【レアルタ】を守っていく義務があるんですぅ!」
「んなら義務果たせよ」
「だからぁ!!! 弱い人達が集まってもどうにもならないんですよぉ!!!」
「ついにあかん事言ったぞこいつ」

 ハルトとラムネの会話の方向性が少しずつ違うものになっていくのを阻止する為にリルがまた会話に参加しとある事を提案する。
 それは今日から少しの間皆で手分けをして聞き込みをしようというものだった。
 しかしハルトやラムネ、リルは大丈夫かもしれないが既に一度迷子になっているシノの事を考えるとバラバラで聞き込みをするというのは少しリスクがあるように思える。
 そこでラムネはハルトとリル、自身とシノの二ペアで聞き込みをすれば迷子になることがないのではと提案した。
 皆がいながらシノは迷子になっているので二人一組にしたところで意味がないのではと思ったハルトだがそんな事を言っていては先に進まないと考えラムネの案で妥協することにした。  
 そして【レアルタ】での聞き込み調査が始まった。


@@


「これは無理だな」
「無理ですね」
「無理」
「どうしようもないね」

 聞き込み調査を開始して四日が経過した。
 何十時間もかけて何十人と聞き込みを行ったのだが得られた情報と言えば近くのパン屋が美味しいということだけだった。
 これほど調査を行ってパン屋の情報しか得られないのは異常すぎてハルトは何者かによる情報操作を疑ったがそんな事を出来る人も技術もあるわけないのでただの妄想で終わった。
 本格的にどうすることもできなくなりハルト達はひたすら机にグテっと倒れ込むことしか出来なかった。

「【レアルタ】は平和って事で終わらせていいんじゃないか」
「いいや! 絶対に悪いやつがいるんですよぉ! そいつらをどうにかしないといつかここは壊されてしまいますぅ!」
「そんな事言われてもなぁ」

 ハルト達が会話していると家の扉をドンドンと叩く音が聞こえてきた。
 リルが扉の方へ向かい恐る恐る扉を開けるとそこにはポニーテールの女性が立っていた。
 女性は扉を開けたリルを見たあと家の中を見渡す。そして女性は喋りだした。

「君達が怪しい者の聞き込み調査をしてる者達か?」
「そうですけど……」

 リルが対応している間にハルト達は椅子から立ち上がり扉の方へ向かった。
 ハルト達の存在に気づいた女性は視線をそちらへと送る。

「実は私もここ最近怪しい者達を追っているのだが全くもって情報が得られないのだ」
「やっぱりですか? 俺達も調査したんですけど何の情報も得ることが出来なくて。何かあるんですかね」
「そうか。私と同様の状況に陥っていたとはな。そんな君達にひとつ提案をしたいのだがいいか?」
「なんですか?」
「私はどうにかしてこの【レアルタ】を守りたいのだがやはりこのままでは戦力的に良い結果を残すことは難しいだろう。そこでだ、同じ目的を持つ者同士協力をしてみないか」
「協力ですか……」

 今回の夢の都【レアルタ】で起きているとされる核の強奪。
 この問題が完全に迷宮入りし解決しなかったとしてもハルトにとっては何ら影響のないことである。
 つまりは何日も調査をしてもわからない事を協力してまでズルズルやっていく必要性がハルト達には全くもってないのだ。むしろ時間の無駄とさえ言えるだろう。
 だがしかしハルトにはこの問題を解決せざるおえない理由がある。
 それはラムネという存在だ。
 
 先の【ロイゼン王国】での戦いはラムネが居なければ危ういと思える展開も多々存在した。
 そう、ハルトはラムネに恩があるのだ。
 そんなラムネの願いをハルトはフル無視する事が出来ない。

 この問題については解決していかなければならないというのは決定事項だが果たして協力するのには意味があるのかとハルトは思う。
 人数が増えれば増えるほど仲間の安全を考えながら立ち回らないといけなくなり目先に集中することができなくなってしまう。
 
 ハルトが返事をするのを渋っていると女性が続けて話しだした。

「まずは騙した事を詫びよう。先程何の情報も得る事ができなかったと言ったがあれは嘘だ。すまない。もし協力してくれると言うなら得ている情報を共有しよう。だからもう一度考えてみてくれ」

 ハルトは思う。
 なんで一回嘘ついたんだよ、と。
 しかしそれにも理由があってしたことなのだろうという結論を出し協力するかしないかについて集中して考え出した。
 結論はすぐに出た。
 勿論返事は「わかりました。協力するということで構いません」だ。
 やはり決めては何と言っても情報だろう。
 ハルトが一番欲しているのは戦力でも仲間でもなくラムネの願いを解決するための情報だ。

「交渉成立ということで。それじゃあ情報を話すけども大丈夫か?」

 女性が情報を共有しようとした時ハルトが「立ち話もあれなので中に入ってください」と言って家の中へ案内する。
 女性を椅子に座らせたあとハルトとシノはその反対側の椅子に座りリルとラムネはハルト達の後ろで立っていた。

「情報を話す前に自己紹介をしておいた方がいいかもしれない」
「ですね。俺はハルトでこっちがシノ、それでこっちがリルでこいつがラムネです」
「なんで私だけこいつなんですかぁ!?」
「ふふふ、仲が良いんだな。私はアインス・オリオールだ。よろしく頼む」
「アインスさん、よろしくお願いします」
「ハルト、もう協力した仲なんだ、いつも通りの話し方で構わない」
「わかった。これからはこういう感じでいかせてもらうよ」
「それじゃあ私が持っている情報を話そう」
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