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二章

83.ルーシア&クロード

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 家の中はシーンっとしている。
 そしてアインスは持っている情報を話しだした。

「今から四日前のことだ。核保管庫周辺に張られている結界付近に見たこともない二人の人物の姿があった。その二人の動向を伺っていると一人が結界に触れ何かをしようとしていた。恐らくだがあれは結界を破ろうとでも考えていたのだろう。その後、二人はどこかへと姿を消していった。そしてもうひとつ情報があるのだがそれは現実世界で起こっていることだ。どうやら現実世界の方で森に張られている結界が何者かに破られたそうだ」
「結界を破られてから見たこともない人物が現れた……その二人は相当怪しいな」
「そうだ。だからもう一度二人を探し跡をつけようと思ったのだが全く見つからないんだ」
「どこかに身を隠しているってことか」
「そう考えて間違いないはずだ」
「行方が分からないとどうしようもないね……。でも随分長い事【レアルタ】にいるからわかるけどそこまで長い間隠れられる様な場所はないよ。それに食料とかは現実世界から持ち込む事ができないし……」
「となるとどっかのタイミングで食料を手に入れる為に姿を現す可能性があるな」
「だからと言ってこの広い【レアルタ】からたった二人を見つけるのは至難の業だ。単なる運に任せて核保管庫周辺で待機しておくというのもありだがな」

 ここからどうしていくべきなのかと考えるハルトだがここである事が気になりアインスに問いかけてみた。
 するとアインスは詳しくは覚えていないが特徴的な事は覚えていると言って話してくれた。
 アインスが覚えていた二人の特徴はこんな感じだ。

 まず二人の性別は男と女。
 男の方は金髪で薄いメガネをかけており高身長でスラッとしていたそうだ。
 女の方は黒髪ツインテールで頭に赤いリボンを二つ付けていたそうだ。身長は男に比べて小さく子供の様にも見えたらしい。

 ざっくりとした情報だがこれだけでも中々に良い手がかりになる。
 全ての情報を話し終えるとアインスは立ち上がって「それじゃあ私はこれで失礼する。もしまた何か情報があったら共有しに来る」と言い扉の方に向かった。
 ハルトは見送るために一緒に向かった。
 そしてアインスが扉を開けた時ハルトが「一応こっちでも情報をもとに探してみるよ」と言った。
 アインスは礼だけ言って外に出ていった。
 完全にアインスが去っていったのを確認したハルトは皆がいるところに戻った。

「ではハルトさん、早速探しに行きましょう!!!」
「おー」
「お、おー?」
「なんで全員乗り気なんだよ。別に言いけどそんな簡単に見つからないと思うぞ?」
「ハルト、【レアルタ】の危機を救うために一緒に頑張ろ! 私この都が大好きなの」
「そうだな。よし行くか!!!!」
「なんでハルトさんはリルさんに言われるとそう素直なのに私が言うと渋るんですかぁ!! この不遇制度撤廃を要求します!!!」
「ほら、行くぞ」
「む、無視ですかぁ!?」

 ハルトはそれすら無視をして家の扉に向かい外に出た。あとに続いてシノ、ラムネ、リルも外に出てきた。
 核保管庫の場所はどこかとハルトが困っていると後ろからリルがコートを引っ張って「あっちだよ」と指をさした。
 礼を言ったハルトは歩き出して他の三人もついていく。

「てかもし戦うってなったらラムネとかはどうするんだ?」
「そしたら能力スキルでも剣でも使いますよ!」
「でも剣は現実にあってこっちには持ってこれてないし本当に大丈夫なのか?」
「全くハルトさんは心配性ですねぇ! そもそも【レアルタ】に住んでる人間がそう簡単に外部の知らない人に負けたりしませんから!」
「一体どこからその強気は出てくるんだ……。んでリルはそこら辺大丈夫か?」
「私は戦闘系能力スキルじゃないの。あ、でも多少は戦えるから安心してね」
「それは心強いな」

 終始無言なシノはハルトにさり気なく近づき手を握ろうとしていた。
 あと少しで手を握れそうなところでハルトが手を動かしてどこかを指さしたので失敗に終わってしまった。
 拗ねた表情を見せていたシノだったがハルトが指さしている方向をみる。
 ハルトが指をさした方向には建物と建物のひと目につかない路地へと入っていく二人の男女の姿だった。
 ハルトはまさか歩きだして数十分でそれっぽい人達を見つける事ができ驚きと喜びが溢れていた。

 そしてハルト達は二人の男女が入っていた路地へと急いで向かう。
 しかし路地には姿がなかった。
 急いで少し長い路地を通り抜けるとそこはさっきまでとは少し雰囲気が違うように感じれる。
 元居た道には沢山の人が行き交い、店や屋台が立ち並んでいたが路地を抜けた先は人が全くおらず異常なまでに静かだった。
 新たな道に出たハルトはあの二人がどこに行ったのかを探すため左右を確認すると核保管庫方面へと歩いていく一人の男の姿があった。
 ただ女の姿がなく不自然に思ったが今はあいつを捕まえる方を優先しなければと思いハルト達は慎重にあとをつけていく。

「ハルト、ハルト」

 シノがハルトのコートを軽く引っ張り何度小さな声で名前を連呼していた。
 何度か呼ばれハルトはようやく反応したがシノに「今は静かにしてくれ」とだけ言って男のあとを再びつけはじめた。
 しかしそれでもシノはハルトの名前を呼ぶ事をやめなかった。
 呆れたハルトがどうしたんだ? と聞くとシノが「誰か居る」と言った。
 そりゃあ男を尾行してるんだから誰かいるのは当たり前だろとハルトが思っているとシノが続けて喋る。

「私達の近くに変な女の人がいる」
「……!?」

 ハルトはシノの言葉を聞いてハッとなる。
 人がいない道に出たからといってあまりにも堂々と歩いている男。もはや見つけてくれと言わんばかりの行動。
 さらに突如消えた女。
 その不可解さには全て意味があったのだと。

 とっさにハルトが振り返ると後ろにはアインスの言っていた特徴と全く同じ人物がハルト達を見ていた。

「なになに~私達を尾行してどうする気だったの? もしかして~楽しいこと?」
「ルーシア、理解出来ないのか。そいつらは楽しみを壊そうとしていたんだ」
「はぁ、クロードみたいに馬鹿じゃないからそれくらいわかってるよー。私の楽しみを奪うのは最も重い罪だからね!」
「僕はそこまで彼らに興味はない。楽しむにしても早くしてくれ」
「ふふっ! 君達は私がいっぱぁい楽しませてあげる!!」
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